金木犀の香る夜。
こつこつと踵に水を跳ね上げながら、暗い道を歩く。
街灯を照らす水溜りはいくつもいくつもあって
それぞれの鏡に橙色のあかりが灯って
降り続く水しぶきによってバラバラに砕け揺らぐ。
原型を持たないあかりの真ん中に
ぴしゃ!
と靴底を突っ込んで、最期を与えるように粉々に砕く。
1分もしないうちに、あかりは粘りを持って寄り添い合って
また不定形なぼやっとした発光体に戻る。
そうしていくつものあかりを踵で砕きながら
家へと帰る道すがら。
空から沢山の水が降ってくる日には
だいすきなはずの金木犀の香りは
どうしてこんなにもじっとりと厭らしく凝縮するのだろう。
踵を踏み下ろそうとした橙色の水溜りの中に
雨で散り急いだ金木犀が金平糖のように置いてあって
思わずわたしは、足をよけた。
*音読することを仮想して制作。
こつこつと踵に水を跳ね上げながら、暗い道を歩く。
街灯を照らす水溜りはいくつもいくつもあって
それぞれの鏡に橙色のあかりが灯って
降り続く水しぶきによってバラバラに砕け揺らぐ。
原型を持たないあかりの真ん中に
ぴしゃ!
と靴底を突っ込んで、最期を与えるように粉々に砕く。
1分もしないうちに、あかりは粘りを持って寄り添い合って
また不定形なぼやっとした発光体に戻る。
そうしていくつものあかりを踵で砕きながら
家へと帰る道すがら。
空から沢山の水が降ってくる日には
だいすきなはずの金木犀の香りは
どうしてこんなにもじっとりと厭らしく凝縮するのだろう。
踵を踏み下ろそうとした橙色の水溜りの中に
雨で散り急いだ金木犀が金平糖のように置いてあって
思わずわたしは、足をよけた。
*音読することを仮想して制作。