紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

「ジョージ・ラッセル」フィーチャリング「エリック・ドルフィー」~エズセティックス

2008-05-04 11:23:41 | エリック・ドルフィー
私のブログに遊びに来られている方達が、マイ・ブーム(アワー・ブーム)で最近「エリック・ドルフィー」を聴く機会が多いらしいんですよ。
そこで、今日は「ドルフィー」作品の中でも異色アルバムを紹介しましょう。

まず、アルバム・リーダー:名義人ですが、「ジョージ・ラッセル」が主役なんですが、実際は「エリック・ドルフィー」をフューチャーしているので、「ドルフィー」が(演奏)リーダーと言っても良いと思います。
勿論、演奏の主導権は、バッチリ「ドルフィー」が握っています。
但し、「ラッセル」のアレンジが有るので、自由気ままに?「ドルフィー」が音楽的な飛翔をしている訳では有りません。
ちょこっとビッグ・バンド風なテイストが有って、その枠の中で「ドルフィー」が演るべき事を、思い切り演っているんです。
「ドルフィー」のとってアレンジと言う鎖が、邪魔なのか?それともそれも踏まえた上で、果敢に挑戦しているのか?は聴いてからのお楽しみ…です。

奇才「ジョージ・ラッセル」アレンジの元、絶好調「エリック・ドルフィー」のバス・クラリネットとアルト・サックスの叫びを聴いて下さい。


アルバムタイトル…エズセティックス

パーソネル…エリック・ドルフィー(b-cl、as)
      リーダー;ジョージ・ラッセル(p、arr)
      デイヴ・ベイカー(tb)
      ドン・エリス(tp)
      スティーヴ・スワロー(b)
      ジョージ・ハント(ds)

曲目…1.エズセティックス、2.ナーディス、3.リディオット、4.ソウツ、5.オネスティ、6.ラウンド・ミッドナイト

1961年5月8日 NYにて録音

原盤…RIVERSIDE 9375  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23798

演奏について…最も興味を惹く演奏…ラスト収録の6曲目、かなり俗的だが、「セロニアス・モンク」の書いた永遠のジャズ名曲「ラウンド・ミッドナイト」…これすこぶる良いです。
序奏のアレンジメントは、何か邦楽の様で…ちょっとおどろおどろしくて、一発で興味津々になりますね。
この入り方、非常に個性的で有りながら、「ドルフィー」のアルト・サックスは最初に有名なテーマを吹きます。
「ラッセル」はとても知的にさりげなくピアノでサポートし、「スワロー」の重量級ベースと「ハント」のブラッシュ・ワークも大地に根を生やして、しっかりサポート。
残る二人のホーン奏者「エリス」と「ベイカー」は、間奏でチョイ・サポを演るのみで、「ドルフィー」に全面的にソロを託します。
※実はこれが最高のアシスト・パスになっているんだぁ!
最後はエースに託して、自分たちはチョロチョロ邪魔しない…これが点をとる最高の秘訣?
しかし「エリス」も「ベイカー」のgoodなミュージシャンだけど、やはり、それでも「ドルフィー」とは格が全く違うですよ。
それから「ドルフィー」のアドリブが始まると、スタンダード曲と「ラッセル」のアレンジメントの枠内で、しっかりと縦横無尽に駆け回って、見事なインプロヴァイザーを見せ付けてくれて、流石「ドルフィー」の一言です。
調整や編曲の枠なんて、何の足枷にもなっていませんし、フリー系でいながらも、とても聴き易くて、おまけにスピリットも出し捲くって、このアルバムの価値と地位を何倍も押し上げてくれます。

オープニング曲&表題曲の「エズセティックス」…「ジョージ・ラッセル」オリジナル曲でも、最も有名な曲で、ここでも当然十八番です。
とても乾いた都会的なテーマと疾走するテンポに合わせて各人がソロを演ります。
まず、ソロを執るのがトロンボーンの「デイヴ・ベイカー」で、早いリズムに負けない、すごテクでエキサイティングなアドリブを演ります。
続いてトランペットの「ドン・エリス」…やや抑制した音色で、このセクステットのグループ・サウンド?として調整の一翼を担う。
敢えて抑える…控え目に…男の美学です。
その後の「ドルフィー」のバス・クラリネット…相変わらず、すげぇなぁ!
それから「ドルフィー」が演奏している時、「ラッセル」「スワロー」「ハント」のリズム・セクション3人が、必要以上にファイトするのは?どうして?
やはり、相当「ドルフィー」に触発されてるみたい。
特に「ハント」はおかずビンビンに奥儀を繰り出して、熱演してくれます。
圧倒される1曲です。

2曲目「ナーディス」…ご存知「マイルス」が書いた名曲ですが、この曲でも「ラッセル」の奇才ぶりが堪能できます。
「マイルス」以上に抑えて、知的で乾いた雰囲気で曲を進行させます。
ミュートで「マイルス」風?に「ドン・エリス」が、都会的に仕上げて行き、「ベイカー」もとても抑制した表現で繋ぎます。
それから「ドルフィー」のソロですが、バス・クラでテーマを吹くだけ?で、余り過激には演りません。
思えば、「ドルフィー」も昔は楽団に在籍していたので、こう言う事もできるんですよね。
編曲の妙が生きた作品ですね。

3曲目「リディオット」…「ラッセル」が「モンク」的なコードを多用して仕上げたバップ曲で、知的な「ラッセル」が素敵ですね。
それから「スワロー」のパワフル・ベース…裏聴き所ナンバー1の名演ですね。
これだけ太くて、重戦車の様なベース演奏…ちょっとやそっとでは聴けません。
終盤の「スワロー」のアドリブ・ソロ演奏もgoodです。
この曲は「ラッセル」が全面的に主導権を握って、そして「スワロー」を表に出して、ホーン3人は短い小節でソロを演ったり、ユニゾンで間奏を演るのみです。
最後も「ラッセル」が知的なソロ演奏で〆ます。

4曲目「ソウツ」…序盤はホーン3人が、ユニゾン&ハーモニーで異色のテーマ演奏をする。
まるでニュー・ヨークの街を歩く、探偵が調査をしているかの様で、そうですね、「ピンク・パンサー」の「クルーゾー警部」が、3枚目でなく、完全な2枚目で聴き込みをしている感じです。???
例えが良く解んねぇや!
中盤からは、曲のテンポを色々変えて、3人のホーン奏者が掛け合いを演って行き、「ラッセル」の編曲の冴えと、都会的なジャズ演奏が、微妙な空間(谷間)で交じり合う。

5曲目「オネスティ」…「デイヴ・ベイカー」オリジナルのブルースで、短いながらも「ドルフィー」のバス・クラのソロ演奏は聴き所です。
アヴァンギャルドさとブルージィさのブレンド加減が良い味を出してます。
勿論、馬の嘶きも演ってくれます。
「エリス」もミュートとオープンの両方で、トランペット・ソロを執り、このブレンドに更にスパイスを効かせます。
作曲者「ベイカー」のソロは、かなりオーソドックスなアドリブで、ブルース魂を見せ付ける。
過激なブレンドに、とてもベーシックな(食材)を合わせて、皆を上手く中和させてくれるんです。
「スワロー」も渋くソロを決めて、ラストはユニゾンで楽しく、上げ上げでエンディングです。

「ドルフィー」は、フリーだけでなく、アレンジの元で、ユニゾンやハーモニー演奏もOKな、引き出しの多い、偉大なミュージシャンってことですね。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
またまた食指をそそられます。 (garjyu)
2008-05-05 03:56:37
こんにちは。
エリック・ドルフィー、マイ・ブームのgarjyuです。
これもウィッシュ・リストですねえ。
チコ・ハミルトンやミンガスの楽団でも、それなりに嵌っていた(ドルフィーがチコ・ハミルトンで吹いているときのアルバムというのは聴いたことがないのですが。)ドルフィーですから、あわせるのも上手かったのでしょうね。ひとつの枠内で、きちんと自分の個性も聴かせる。
これもウィッシュ・リストですねえ。
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早朝より(深夜?)コメント…ど、どうもです。 (えりっく$Φ)
2008-05-05 09:09:21
garjyuさん、お早うございます。
今日は、私は仕事でして…デスクからコメントしています。や、やばい!!
今、「ドルフィー」に嵌ってらっしゃる様で、心中お察し申し上げます。(微笑)
しかし、garjyuさん…私が決めることでは無いですが、貴殿はもはやジャズ初心者でも何でも有りませんよ。
一人前…いや、優れた「ジャズ通」のお一人です。
クラシックに非常に造詣が深い方なので、演奏の技術や精神を感じるのは、お手の物と思いますので、後はジャズの色々な(裏名盤)や、(色物?)二流(三流)アーティストを聴いていけば良いだけだと思います。
最近の貴殿のブログコメント…特にこの「ドルフィー」について等を閲覧させて頂くと、私も感心する事が非常に多く、ありがたいと思っています。
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Unknown (garjyu)
2008-05-06 04:33:44
こんにちは。

>しかし、garjyuさん…私が決めることでは無いですが、貴殿はもはやジャズ初心者でも何でも有りませんよ。

暖かいお言葉ありがとうございます。まだ、ジャズでは、自分が自身をもって名盤の真贋を問えるほどの“腕前”はないと思っているので“初心者”を名乗っておりました。
えりっく$φさんのお言葉に気を良くして、自らの名乗りを“ジャズ初心者”から“遅れてきた中年ジャズ・ファン”に昇格(?)しようかなと思っています。

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じゃ私も中年ジャズ・ファンと言うことで。 (えりっく$Φ)
2008-05-08 00:14:32
garjyuさんが中年ジャズ・ファンだとしたら、多分小生も例に漏れずと言った所です(爆笑)

まぁ、音楽には、全く年齢は関係無いですから…若かろうと年寄りだろうと、お互い気の合う?いや正反対の意見でも良いので、音楽好きな方達で、意見交換していけば良いんですよね。
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