紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

とても高尚な軟派ジャズだ!…パリジャン・ブルー~ミシェル・ルグラン・トリオ

2007-07-30 00:19:24 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日は表題にある通り、「軟派に属するジャズ」と評価する人もいるとは思いますが、一聴したその中に技術的にも、精神的にも高尚なジャズを実は演奏しているのが、このアルバムです。

アルバムタイトル…パリジャン・ブルー

パーソネル…リーダー;ミシェル・ルグラン(p)
      マルク・ミッシェル・ル・ベヴィヨン(b)
      アンドレ・チェッカレッリ(ds)

曲目…1.これからの人生、2.おもいでの夏、3.ユー・マスト・ビリーブ・イン・スプリング、4.ワンス・アポン・ア・サマータイム、5.ゴールデン・サン、6.アスク・ユア・セルフ・ホワイ、7.ブライアンズ・ソング、8.ヒズ・アイズ・ハー・アイズ、9.アイ・ウォズ・ボーン・イン・ラブ・ウィズ・ユー、10.シェルブールの雨傘、11.アフター・ザ・レイン、12.パリジャン・ブルー、13.アイル・セイ・グッバイ

演奏について…超名演はずばり「ルグラン」自身の代表的な映画音楽、10曲目「シェルブールの雨傘」である。
ここには、「ルグラン」と言う人物の、ジャズピアノエッセンス、演奏テクニック、編曲センスの全てが凝縮された「究極の1曲」に仕上がっている。
美しい原曲のメロディを充分に堪能できる序盤から、メロディを活かしつつ、リズムだけを大胆に崩して、アドリブの妙を聴衆に知らしめる。
「ベヴィヨン」のハードドライヴィングベースと「チェッカレッリ」のブラシ中心のタイムキーピングも言うこと無し。
とにかく、やや早めの4ビートジャズから、終盤には、ワルツ→ボサノヴァ→8ビート→ラテン→不協和音→タンゴ→サーカス→爆発・(ジ・エンド)と言う風に目まぐるしくテンポを変えて、アドリブの遊び心が充分な演奏だ!!

13曲目「アイル・セイ~」は、静寂のバラッド演奏。
非常に短い曲だが、非常に哀愁を感ずる美旋律に、「ルグラン」のスーパーテクニック、ピアノアドリブソロが演奏される。

冒頭の「ルグラン」の代表作、「これからの人生」では、序盤は「ルグラン」の流麗で小技が効いた哀愁一杯のピアノソロが続く。
とても女性的な繊細なピアノソロに思わず唾を飲み込む。
それから、終盤に入ってからはハイセンスなピアノトリオ演奏へと転ずる。

2曲目「おもいでの夏」も「ルグラン」がアカデミー賞を受賞した超名曲だが、冒頭曲以上に、テクニックを用いた美しいピアノアドリブソロが秀逸。
バック二人のあえて音量を抑えた、ベースとドラムスにも高尚なセンスを感じる。

3曲目「ユー・マスト~」では、「ルグラン」は非常に知的で熟考されたソロを弾く。
そう、まるで「ビル・エヴァンス」の様なプレイ振りが非常に素敵である。
サイドでは、ベースの「ベヴィヨン」が、序盤と終盤に超絶的なベースソロを奏でて、曲を盛り上げる。

11曲目「アフター~」は、決して著名な曲ではないが、ここでのバラッド演奏は、とても渋くて美しい。

4曲目「ワンス・アポン~」も「ルグラン」作曲の名作で、「ルグラン」のピアノの素晴らしさもさることながら、ここではドラムスの「チェッカレッリ」のバッキングがgood。

7曲目「ブライアンズ・ソング」は、ハイテンポの明るめの曲調で、とてもきらびやかな「ルグラン」のソロが際立っている。
ベース「ベヴィヨン」も骨太なサウンドでアシストし、ドラムス「チェッカレッリ」は、華やかなシンバルワークが、曲のスパイスとして効いている。

8曲目「ヒズ・アイズ~」では、ラフマニノフの曲の様に非常にテクニックを駆使し、装飾音符の多い、そして重厚なピアノアドリブがしばらく続き、曲の中盤からは、テンポが上がってピアノトリオ演奏で締めくくられる。

9曲目「アイ・ウォズ~」は、ショパン的な印象を持たせるピアノアドリブで、一寸憂いを帯びた曲調と、逆に音を演奏していないセンス良い「間」が、モノクローム映画の挿入歌的な効果を上げている。

12曲目「パリジャン~」は、ピアノトリオのブルース演奏。
録音が良いアルバムなので、3人の絡みの具合が良く分かる演奏です。

ジャンル違えど…昨日のピアノとは対極の演奏。レイ・ブライアント~アローン・アット・モントルー

2007-07-21 23:57:36 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
このアルバムは、ジャズ・ピアニストの中でも、特にブルージーで、且つロマンティックな演奏を得意にしている、「レイ・ブライアント」が、スイス、ジュネーブで行ったソロピアノ演奏を収めたライブ盤です。

クラシックでありながら、非常にエキサイティングでパワフルな演奏だった昨日の「リヒテル」とは対極に位置する様な演奏で、寛ぎと平穏、慈愛に満ち溢れていて、少しアクセントとして、ブルース・フィーリングを纏わせた美しい(ジャズ)ソロピアノ演奏です。

アルバムタイトル…アローン・アット・モントルー

         レイ・ブライアント(p)

曲目…1.ガッタ・トラヴェル・オン、2.a.ブルース#3、b.柳よ泣いておくれ、3.クバノ・チャント、4.ロッキン・チェア、5.アフター・アワーズ、6.スロー・フレイト、7.グリーンスリーヴス、8.リトル・スージー、9.別れのときまで、10.ブルース#2、11.“愛の夢”ブギー

1972年 スイス モントルー・ジャズ・フェスティバルにてライブ録音

演奏について…オープニング曲「ガッタ~」で、ブギウギ調のリズムでライトなブルースから、演奏を始めるところなんざぁ、「ブライアント」憎いね~この男。
聴衆もこの1曲で、「ブライアント・ワールド」へ即座にトリップさせられる。

2曲目「ブルース#3と柳よ~」のメドレーだが、このスローブルースは全然土臭くなく、非常に寛ぎが感じられる。
「ブライアント」も高音域を上手く使い、あっさりと軽くアドリブを仕上げている。

3曲目「クバノ・チャント」は「ブライアント」のオリジナル曲と言うこともあり、このアルバムの中では、比較的パワフルに、低音域にウェイトを置いた演奏ですが、アドリブフレーズ自体は遊び心もあり、重いイメージにはしていない。

この後、本人のナレーションも録音されていて、真面目な曲紹介をしている。
そして「ロッキン・チェア」は、非常に肩の力の抜けた、寛ぎの極地的演奏で、聴衆はマジに癒されていますぜ。

「アフター・アワーズ」は、またまたライトなブルースだが、この演奏では左手の使い方、リズムの取り方が抜群に上手い!

6曲目「スロー・フレイト」も左手のリズムがブルースフィーリングを醸し出し、右手は自由にお洒落なフレーズを右往左往する。
この曲辺りが、このライブにおける「ブライアント」の精神力がピークに達しているかも。

「グリーン・スリーヴズ」は、クラシックの名曲だが、ここでの演奏はとても静かで、静寂のメロディ(矛盾?みたいだな)を演奏している。
とても美しい演奏です。

「リトル・スージー」では、余裕と寛容さを全面に打ち出した演奏で、アドリブにも、かなり遊び心が出てきて、良い感じです。

この後3曲はアンコール曲だが、「別れのときまで」は哀愁のメロディに「ブライアント」のリリカルな解釈、アドリブソロが加わった、超名演でしょう。
軟弱で乙女心一杯の私は、この演奏(曲)が、このライブ中ベスト1だと思う。

キューバン・ミュージックをピアノ・トリオで…キエレメ・ムーチョ~スティーブ・キューン・トリオ

2007-07-19 23:48:10 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
スティーブ・キューン・トリオが送る、楽しくてハイ・センスなキューバン・ミュージックを題材とした、ピアノ・トリオ・アルバムが、今日紹介の盤です。

録音も、ヴィーナスレコードのハイパー・マグナム・サウンドにて、ピアノ、ベース、シンバル等の音が粒立ち良く立っている、高品質サウンドです。

アルバムタイトル…「キエレメ・ムーチョ」

パーソネル…リーダー;スティーブ・キューン(p)
      デヴィッド・フィンク(b)
      アル・フォスター(ds)

曲目…1.そよ風と私、2.ベサメ・ムーチョ、3.いつも私の心に、4.デュエルメ、5.キエレメ・ムーチョ、6.君なしでは

2000年2月20日

演奏について…まず、馬鹿の一つ覚えですが、2曲目「ベサメ・ムーチョ」は、とても良い演奏ですねぇ。
いかにも21世紀の「ベサメ~」と言って良いような、かなり高速調のテンポで、「キューン」のアドリブメロディがとてもハイ・センスで、キューバン・ミュージックを素材としながらも、ジャズ・ピアノ・トリオの最良部を見せ付けられる演奏です。
「キューン」は、曲の中途では、「ティコ・ティコ」や「ハバネラ」のフレーズをアドリブ演奏で挿入している弾いている所などは、微笑ましい限りです。
それを受ける超絶ドラマー「フォスター」のスティックさばきも華麗で、「キューン」との絡みも絶妙です。

これと甲乙点け難い双璧の演奏は、6曲目「君なしでは」で、この演奏の序盤の主役は、ズバリ、ベースの「フィンク」です。
ここでの「ベースアドリブソロ」は、とにかくすごいの一言!!
この曲でのトリオ演奏解釈を端的に説明すれば、「キース・ジャレット・(スタンダーズ)トリオ」の名演にソックリですね。
後半の「フォスター」のドラムソロも、抜群のドライヴィング推進力で、3人の演奏世界に引きずり込まれる。
哀愁のピアノアドリブソロも傑出していて、演奏の起承転結も完璧で、個人的にはベスト・チューンに挙げたい名演。

3曲目「いつも私の心に」は、ミドルテンポのラテン調バラードで、とにかく「キューン」の紡ぐメロディがロマンティックで、「フィンク」もメロディアスなベースソロを刻み、「フォスター」はシンバル演奏に終始して、二人をサポートしています。

タイトル曲、5曲目「キエレメ・ムーチョ」は、「寛ぎ」第一の演奏。
「キューン」はシングルトーンを中心に、原曲のメロディを尊重しながら、優しきアドリブソロを展開する。
「フォスター」は、空間を活かしたラテンメロディのリズムを刻み(敲き)続ける。
「フィンク」は上品に、ベースラインを引き続ける。
3人は、単純の様でいて、とても奥深い名演奏に仕上げた。

1曲目「そよ風と私は」ワルツラテンリズムに乗って、3人のコラボレーションが見事な調和を見せる。
スタートから心を鷲掴みする、オープニング曲に相応しい秀演。

4曲目「デュエルメ」は、「フォスター」の超絶技巧ドラムスのすごテクに、KOされる事必至!!
「キューン」「フィンク」もぶいぶい言わしながら、曲を弾いて颯爽と駆け抜けるスポーツ・カーの様な快演です。

「枯葉」名演の一枚…ウィントン・ケリー~「枯葉」

2007-07-06 23:53:20 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
ジャズの名演に枚挙に暇が無い名曲「枯葉」のこれまた名アルバムを今晩は紹介します。

アルバムタイトル…「枯葉」

パーソネル…リーダー;ウィントン・ケリー(p)
      ポール・チェンバース(b)
      サム・ジョーンズ(b) 
      ジミー・コブ(ds)

曲目…1.降っても晴れても、2.メイク・ザ・マン・ラヴ・ミー、3.枯葉、4.飾りのついた四輪馬車、5.ジョーズ・アヴェニュー、6.サッシー、7.ラヴ・アイヴ・ファウンド・ユー、8.風と共に去りぬ、9.チャーズ・ブルース

1961年7月20・21日録音

演奏について…やはり、アルバム表題曲「枯葉」が第一のお薦め曲であることは間違いない。
この演奏には「ケリー」の己を追い込み過ぎない余裕のあるピアノ・インプロビゼーションの魅力がタップリで、ほぼ同時期に録音された「枯葉」のピアノ・トリオ演奏の決定版「ビル・エヴァンス盤」と比べて、どちらが勝かと問うたら、万人が「エヴァンス」と言うでしょうが、だからと言って「ケリー盤」の価値が落ちる事は100%ないでしょう。
何故ならば、何度も言っておりますが、自らを究極に追い込むジャズも、寛ぎと余裕&楽しさ満載のジャズも、音楽としての普遍さは何ら変わりはなく、時に「追い込み型ジャズ」は聴いていて苦しくなる事(つまり苦痛になる時)があるが、寛ぎジャズにはそれは絶対に無いからです。
かと言って「寛ぎ系ジャズ」は、決してふざけた演奏をしている訳では無いので、何回もの視聴に絶えうる事ができる。
言わば、「普遍的価値」は、逆にこう言う演奏の方が実は高いのかもしれません。
何か学者気取りの発言をしてしまってすみません。

次いでは、正統派4ビートのブルース調佳曲の6曲目「サッシー」は、トリオ3人の持ち味がバランス良く形成された好演です。
「ケリー」の遊び心と、ほんの一寸の「哀愁」スパイスを効かせたシングル・トーンと、空間を活かすドラミングをする「ジミー・コブ」、そしてベースソロも素敵で、言う事なしの演奏です。

非常に短い曲だが、7曲目「ラヴ・アイヴ~」は、乙女心を直撃する様なラヴ・バラードで、こう言う曲を弾かせたら、ジャズ界広しと言えども「ケリー」の右に出る者はいない。
いや、「トミフラ」「ケニー・ドリュー」「レイ・ブライアント」あたりは好勝負をしそうかな。

2曲目「メイク・ザ~」も7曲目とほぼ同系統の演奏で、一言で言うと心が切なくなるバラッドです。
「コブ」のブラシ・ワーク、「チェンバース」のサポート・ベースも品良く「ケリー」をアシストしていて、goodです。

オープニング曲「降っても晴れても」の、「ケリー」のブロックコード一小節だけで、このアルバムの楽しさと期待が聴衆に伝わってくる。
演奏しているメンバー(トリオ全員)が最強の「マイルス・クインテット」のリズム・セクションであり、粗を探しても、悪い演奏になる理由は全く見つからない。
チェンバースの音色だが、VEE JAYの録音だと、ブルーノートなどの演奏よりは、締まったトーンで録音されていて、聴いているととても新鮮な印象です。

シェリーズ・マン・ホールのミシェル・ルグラン

2007-06-28 23:52:40 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日ナオさんからご依頼の当ブログのカテゴリーを変更しました。
手前味噌ですが、以前に比べて少しは検索し易くなったと思います。
これからも宜しくお願い致します。
さて、今日は少し軽めのジャズ・アルバムを紹介しましょう。

いまや映画音楽の超大御所となった、ミシェル・ルグランが若かりし頃、ジャズ・ピアニストとして、ぶいぶい言わせていた時の、ライブ・アルバムです。

アルバムタイトル…シェリーズ・マン・ホールのミシェル・ルグラン

パーソネル…リーダー;ミシェル・ルグラン(p)
      レイ・ブラウン(b)
      シェリー・マン(ds)

曲目…1.ザ・グランド・ブラウン・マン、2.ア・タイム・フォー・ラヴ、3.レイズ・リフ、4.ウォッチ・ホワット・ハップンズ、5.マイ・ファニー・ヴァレンタイン、6.アナザー・ブルース、7.ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー、8.ロス・ゲイトス

1968年9月5日 LAシェリーズ・マン・ホールにてライブ録音

演奏(曲)について…4曲目「ウォッチ~」は、「ルグラン」の自作曲である名画「シェルブールの雨傘」からの(挿入)曲で、流石に掌中に修めている曲らしく、ここでの「ルグラン」のピアノ・テクニックは筆舌しがたい程の超絶技巧である。
バックの二人もピアノを際立たせるサポートに徹しており、このアルバム中、白眉の名演でしょう。

多分に好みが入っているのだが、2曲目「ア・タイム~」はとてもロマンティックな曲で、ルグランの演奏技術の確かさが堪能できる。

終曲「ロス・ゲイトス」も個人的に好きなラテン拍子の佳曲で、高速テンポに乗った3人のプレイは驚嘆もの!!

3曲目「レイズ・リフ」は、ブルース・ワルツだが、まずカッチリした音色で、皆を引っ張る名人「レイ・ブラウン」のベースが素晴らしい。
中途でのソロ・プレイも余裕と包容力を醸し出していて更に気持ち良い。
それを追従する、華麗な音色の「ルグラン」と、タイトでシャキっとしたドラムスを奏でる「シェリー・マン」の3人共いずれも好調だ。

6曲目「アナザー・ブルース」も3人のテクニックが充分に活かされた曲で、特に「ルグラン」のハイ・テクに魅了される。
「ブラウン」「マン」のすご腕演奏にもKO昇天寸前になりますよ。

7曲目「ウィロウ~」も3曲目同様「ブラウン」の重厚なベースに終始引っ張られて、所々で「ルグラン」が美麗なピアノ演奏を飾り付ける。
しかし「レイ・ブラウン」は、流石にベース名人として名を馳せるだけの事はあると改めて感じさせる、スーパー・テクニシャンです。

5曲目「マイ・ファニー~」は、何と「ルグラン」のスキャットヴォーカルが聴ける珍曲・珍演で非常に貴重なトラックです。

過去の大ヒット・アルバム…ラムゼイ・ルイス~ジ・イン・クラウド

2007-06-15 23:53:34 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
このアルバムは、かつては、私の説明など全く不要で、売れに売れて、1965年度の、グラミー賞「ジャズ・コンボ」部門を受賞した事がある、「名盤」なんですよ。
一言で言うなら、とにかくご機嫌にハッピーな「ラムゼイ・ルイス」のピアノ・トリオ演奏のライブ演奏が、このアルバムに収録されているのです。

アルバムタイトル…ジ・イン・クラウド

パーソネル…リーダー;ラムゼイ・ルイス(p)
      エルディ・ヤング(b)
      レッド・ホルト(ds)

曲目…1.ジ・イン・クラウド、2.シンス・アイ・フェル・フォー・ユー、3.テネシー・ワルツ、4.ユー・ビーン・トーキン・バウト・ミー・ベイビー、5.スパルタカスの愛のテーマ、6.フェリシダージ、7.時には母のない子のように、8.カム・サンデイ、9.ザ・パーティーズ・オーヴァー

1965年5月13日~15日、ワシントンDC ボヘミア・カヴァーンズにてライブ録音

演奏(曲)について…グラミー賞に選ばれるだけあって、愚演、愚曲はないですが、その中からいくつか推薦していきましょう。

まず、白眉は、私お得意の言葉ですが、起承転結が誠に鮮やかな5曲目「スパルタカスの愛のテーマ」が最高の聴き物です。
ルイスの甘く、切ない哀愁のピアノテーマから、一転してファンキーな乗りに劇的に変わって行き、バックの二人&聴衆の変化もライブ録音らしく、すぐに雰囲気の変化に乗じており、スタートから3曲が比較的遊び心満載だったこのトリオの大真面目な演奏に、皆が固唾を呑むのです。

タイトル曲「ジ・イン・クラウド」は、オープニングに相応しく、ファンキーでグルーヴィーで、尚且つノリも抜群なので、この1曲で聴衆の掴みは完璧!
この名盤の、光輝く栄光を良く表した演奏です。

3曲目「テネシー・ワルツ」は、ベースの「エルディ・ヤング」が、まるでコルトレーン・カルテットの「ジミー・ギャリソン」張りの、弓弾きを含んだ、ロング・ベース・ソロ(実際はここではチェロ)を演じて、正に名演です。

6曲目「フェリシダージ」は、私の大好きなボサ・ノヴァ曲で、とてもスイング感の有る、ジャジーで、チョットディープな演奏です。

7曲目はCD化に際して、追加された曲だが、ルイスのピアノをフューチャーしていて、彼の技巧やスピリットがダイレクトに感じられる、ラグタイム的な演奏で、何故、オリジナルLPに収録されなかったのか、信じられないぐらいの名演奏です。

他の曲も、美しいバラードや、ファンキー節等もあって、全編に渡って楽しめる好アルバムです。

このピアノトリオはすごい!ビル・エヴァンス~グリーン・ドルフィン・ストリート

2007-06-07 22:48:48 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
ここ数日、本格派のジャズから少し(かなり?)道筋が逸れていましたので、今日は超本格派のジャズ・ピアノ・トリオの名盤を紹介しましょう。

アルバムタイトル…グリーン・ドルフィン・ストリート

パーソネル…リーダー;ビル・エヴァンス(p)
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)トリオ1~6曲目
      
      ズート・シムズ(ts)
      ジム・ホール(g)
      ロン・カーター(b)※チェンバースから代わる
      エヴァンスとフィリー・ジョーは代わらず、7曲目のみ

曲目…1.あなたと夜と音楽と、2.マイ・ハート・ストゥッド・スティル、3.グリーン・ドルフィン・ストリート、4.ハウ・アム・アイ・トゥ・ノウ?、5.ウッディン・ユー(テイク1)、6.ウッディン・ユー(テイク2)、7.ルース・ブルース

1959年1月19日(1~6)、1962年8月21日(7)録音

演奏について…まずは、ピアノのエヴァンスに、この強力なリズム二人は、この時期伝説の「マイルス・デイヴィス・クインテット」のメンバーであり、いずれのアーチストも、スーパー・テクニシャンである。
特に、リリカルでインテリジェンスに富んだ、エヴァンスのピアノワークと、とにかくジャズ史上ドラムテクニックで言えば、おそらくナンバー1と思える、フィリー・ジョーの超絶技巧に加えて、ボーイングとほのぼのトーンが魅力のチェンバースが奏でる演奏が悪かろうはずが無い。

さて、お薦め曲だが、私的にはかつてCMのBGMにも使用された、1曲目「あなたと夜と音楽と」は、エヴァンスのイマジネイティヴなアドリブと、フィリー・ジョーのブラッシュワークがとても格調品位の高い名演を創造していて、このアルバムのベストトラックだ。

次いで、表題曲の3曲目「グリーン・ドルフィン・ストリート」が良い。
エヴァンスのややクールで冴えたソロに対して、フィリー・ジョーもまたまた抜群のテクで応戦していて聴き応えがある。

それと1曲だけ別の日「2年半後」に録られた、終曲の「ルース・ブルース」が、良い演奏だ。
先回紹介した「ズート・シムズ」の渋いテナーに、エヴァンスの名盤「インター・プレイ」にも参加している「ジム・ホール」の、これまた渋く抑え目のバックギターに、何と言っても「完成を見た」「エヴァンス」の、知的でハイセンスなアドリブにKOされる。

2テイクある「ウッディン・ユー」では、6曲目のテイク2の方に分がある。
何故なら、フィリー・ジョーのスーパードラミングテクニックが、テイク2の方が乗りが良く、分かり易く言えば、やや派手だがとても華麗な演奏だからである。

最後になるが、リーダー;エヴァンスの演奏が素晴らしいのはともかくとして、どのトラックでもそれ以上に「フィリー・ジョー」の演奏はすごい!の一言だ。
かつて、彼がライヴに出演する時、チケットがいつもソールド・アウトになったと言う伝説があるのも頷ける。

対して、チェンバースは全般的に余り調子が良くないようで、ボーイングで時折見せ場を作るものも、いつもの彼からするとちょっと残念な演奏で、これが、本アルバムが録音から10年経ってから、初レコード化された(すぐに世に出なかった)理由かもしれない。


今日もゲリラ的ジャズアルバムです。ルパンⅢ世ジャズアルバム

2007-06-06 23:57:52 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
まず最初に一言言わせて下さい。
私、音楽が大好きなのですが、実は「ルパンⅢ世」も超超好きなんです。
私事ですが、かつて有名になった、10万円のDVDボックスセットは、流石に持ってないのですが、テレビで放送された、アニメ全部と年一の新作TV2時間物も、全部ビデオ録画orDVDに焼いて持っている程で、所謂「アニメおたく」みたいな物です。いや、完全にアニメおたくかなぁ。

ちなみに私のプロフィールに掲載している写真は、我が愛犬のシェルティですが、名前に「るぱん」と付けています。
全くの完全な親馬鹿ですね。(笑)。。。

さて、本題に戻りましょうか。
アニメルパンⅢ世、実はと言うか、内容的にコミカルでは有りますが、本筋はハードボイルドに有るので、劇中のテーマ曲が元々から非常にジャージーな曲なので、当然ジャズ演奏はマッチします。
まして、音楽監督がこのトリオのリーダーである、ピアニストの大野雄二ですから、極論ですが、昨日紹介の「カーティス」等よりも、ずーっと本格派のジャズ演奏です。

アルバムタイトル…ルパンⅢ世ジャズ

パーソネル…リーダー;大野雄二(p)
      鈴木良雄(b)
      村田憲一郎(ds)
                  オオノユウジ・トリオ
      杉本喜代志(g)
      横山達治(perc)
      山田穣(as) 他

曲目…1.ルパンⅢ世のテーマ、2.愛のダ・カーポ、3.ルパンⅢ世愛のテーマ、4.メンバーズ・オンリー、5.銭形マーチ、6.ファニー・ウォーク、7.炎のたからもの、8.マンハッタン・ジョーク、9.ラヴ・スコール

演奏について…最高のお薦め曲の一つは、ロマンティックな夜に乾杯!的なラスト・ナンバーの「ラヴ・スコール」で決まり。
アニメのエンディング・テーマとしても、「サンドラ・ホーン」が歌っていた、超名曲だが、ここでは大野の究極なロマンティシズムのピアノと、村田のスネア・ドラムが、ピアノを本当に優しく包み込む様なサポートをしていて、美演である。

お薦め曲のもう一つは、意外かも知れないが、5曲目の「銭形マーチ」です。
原曲は演歌コミックナンバーなのだが、ここでは最もジャージーなコンボ演奏が繰り広げられる。
まずは導入部分から、鈴木良雄の骨太のベースが皆をドライブし、(ドライブしているがテンポはスローな4ビートで非常に正統派だ)ピアノの大野はとてもメランコリックで、小洒落たシングルトーンを奏で、(ウィントン・ケリーか、はたまたケニー・ドリューか)テレビアニメの傑作番「銭形の初恋」を連想させる名演。

次いで私事だが、(世評でもか?)アニメとしてのルパンⅢ世の最高傑作は、やはり誰が何と言っても映画「カリオストロの城」だろう。
7曲目の「炎のたからもの」は「カリオストロの城」の主題歌であり、ここではサプライズゲストとして、アルトサックスの山田穣がメインを張った、アート・ペッパーの様な甘さと辛さが同居した、素晴らしい中庸のソロ演奏を堪能できる。

オープニングの「ルパンⅢ世のテーマ」はオオノユウジ・トリオにプラスして、ギターの杉本と、ラテン・パーカションの横山が加わった、変則クインテットだが、編成・編曲と言い、まるでレッド・ガーランドのピアノトリオ・プラス1(パーカション)を彷彿させ、正に「正統的ラテン・ジャズ?」演奏になっている。

3曲目の「ルパンⅢ世愛のテーマ」は、セロニアス・モンクっぽい演奏だと解説に書かれていたが、私の聴く限りでは、モンク以上にとても鎮美的で、アンニュイな雰囲気を醸し出している佳演であり、アニメのエンディングは夕暮れの海で使われている曲だが、ここでの演奏は、とてもロマンティックな南国の夜の海こそ相応しいと思う。

ルパンⅢ世のアニメテーマのジャズなどと侮ったら、痛い目に遭いますぜ。
非常にお薦めのアルバムです。


ビル・エヴァンス二世?、ニュー・ランド~エンリコ・ピエラヌンツィ・トリオ

2007-06-03 22:54:19 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
ビル・エヴァンス亡き後、もっとも彼の音色、演奏様式、形態、に近い、「二世」とも言うべきミュージシャンが、イタリア出身の「エンリコ・ピエラヌンツィ」である。
ことに、このアルバムではベーシストに「マーク・ジョンソン」を迎えて、80年代最強の、ジャズ・ピアノ・トリオ、ユニットが完成を見て、彼等の代表作としてSJ誌の名盤募集CLUBにも選ばれた逸品である。

アルバムタイトル…「ニュー・ランド」

パーソネル…リーダー;エンリコ・ピエラヌンツィ(p)
      マーク・ジョンソン(b)
      ジョーイ・バロン(ds)

曲目…1.イフ・ゼア・イズ・サムワン・ラヴリアー・ザン・ユー、2.アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー、3.ザ・ムード・イズ・グッド、4.ニュー・ランズ、5.ア・チャイルド・イズ・ボーン、6.オール・ザ・シングス・ユー・アー、7.アイ・ラヴ・ユー

1984年2月17日

演奏について…巷で最も評価されているトラックは、タイトルナンバーでもある4曲目「ニュー・ランズ」で、とにかく、エヴァンスゆかりのベーシスト「ジョンソン」の骨太で、且つ疾走するが如く高速の指使いのベース演奏が、トリオ全体をドライヴして行く。
これに追従して「バロン」のスネアショットとシンバルワークも非常に良い反応を示し、この二人のリズムに乗せて、「ピエラヌンツィ」のやや固めのタッチでモーダルな、そしてメロディアスなアドリブも大変素晴らしい出来栄えである。

個人的には2曲目「アイ~」が、非常にリリカルで官能美に溢れたピアノのアドリブ演奏がなされていて、とてもお気に入りです。
「ピエラ」のソロだけで言ったら、アルバム中ぴか一の出来です。
「ジョンソン」の対話をするような、渋めのベースライン演奏もこの曲に、印象深いアクセントになっていて、特出物です。

サド・ジョーンズ作曲の5曲目「ア・チャイルド~」は原曲自体はとても甘いメロディなのだが、ここでの「ピエラヌンツィ」は、やはりエヴァンス直系らしく、メロディアスでセンシティヴなのだが、決して甘すぎない、言わば上質の「ブランデー・ケーキ」の様な都会的な演奏がなされている。

3曲目のオリジナル曲「ザ・ムード~」も5曲目同様、原曲はとてもメロディアスと思うが、極端な甘さは排除し、特にベースを全面的に押出した、「ジョンソン・リスペクト的」な佳演である。

冒頭の「イフ~」は、オープニングから、「仮想エヴァンス」と言って良い程、「ピエラヌンツィ」の乾いた音色と、メロディアスだがやや辛口の演奏にすぐさま「エヴァンスワールド」に引き込まれて、とても心地よい。
リズムの二人も1曲目から余力を多少残しながらも、アクセル&スロットル全開で「ピエラ」をケアーしている。

6曲目は、「ジョンソン」のベースに触発されて、「ピエラヌンツィ」がアドリブを演奏し始めるが、解説書からの登用になりますが、演奏形式の専門用語で言うと「演繹」と言って、主題を後から提示する方法との事。
いずれにしろ、非常にアーバンな演奏で、このトリオのハイセンスな部分を全面的に見せつけられる演奏です。




ブルージー&ソウルフルなピアニスト、ジュニア・マンス~いそしぎ

2007-05-25 23:07:57 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
ブルージーな正統的4ビートジャズで、ピアノトリオ演奏のアルバム「いそしぎ」を紹介します。

アルバムタイトル…いそしぎ

パーソネル…リーダー;ジュニア・マンス(p)
      マーティン・リヴェラ(b)
      アルビン・クイーン(ds)

1982年、1983年 ニューヨークにて録音

曲目…1.ファンキー・カーニバル、2.ヒア・アンド・ゼア、3.ウェイヴ、4.グライディン・アンド・ストライディン、5.いそしぎ、6.スナップ・クラックル・アンド・ポップ、7.アイ・ドント・ケア、8.ウォッチ・ホワット・ハプンズ、9.エミリー

演奏曲について…まず、オープニングのラテンナンバーである「ファンキー~」から、正にファンキーなノリノリ全開で、トリオ演奏は颯爽と駆け抜けていくような演奏。

2曲目「ヒア~」はこれぞブルースの極み的な演奏で、80年代と言うポップな年代にこのディープでブルージィなピアノトリオ演奏…うぅーん貴重品ですね。

3曲目、ボサ・ノヴァの名品、ジョビン作の「ウェイヴ」だが、この演奏はラテンチックではなく、マンスが華麗な装飾音符をふんだんに使用し、ベースのリヴェラはカチッとした硬派のベースラインで臨戦し、二人のバトルを見るようなスリリングなデュオ名演が繰り広げられる。
それにしても、マンスの超絶技巧演奏には思わず舌を巻かされる。

4曲目「グライディン~」は、ラグタイム的な序章から徐々に遊び心溢れるトリオ演奏が展開されて、中盤以降は、いよいよこのトリオのエンジンも全開になる。

5曲目のアルバムタイトル曲「いそしぎ」も3曲目の「ウェイヴ」に近いデュオ演奏で、マンスが色々なテクを駆使し、曲におかずをつける中で、リヴェラは淡々と忠実に「骨太」のベースラインを刻み続ける。
人に例えるなら、おしゃべりでお洒落な貴婦人をマンスとするなら、リヴェラは無口で無骨な親方(職人)と言ったら良いだろうか。
しかし中盤からリヴェラも少しいきり立ったのか、高速調のベースラインを端々で弾く所も逆にお洒落だったりする。

6曲目「スナップ~」は急速調8ビートのトリオ演奏。

そして7曲目「アイ~」も、マンスとリヴェラのデュオ演奏なのだが、3&5曲目と同様の素晴らしい演奏がなされる。
取分けここでは、リヴェラが抜群のベースソロとテクニシャンぶりを発揮して、中途では、マンスとリヴェラの演奏形態が真逆になる時があり、(華麗なリヴェラの演奏に対して忠実なコードでサポートするマンスに)非常に興奮させられる。

そして、8曲目と9曲目は落ち着いたトリオ演奏と、アダルトで色香が漂うデュオで〆となる。

非常にリリカルなピアニスト、蒲池 猛~スプレッド

2007-05-17 23:37:05 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
つい先日、某大手レコード店で邦人ジャズプレイヤーのセールス、言うなれば「投売り:1枚¥500」をしていまして、その中の一枚が今日紹介のアルバムです。
マイナー・レーベルだったのですが、アルバム帯のメンツを見て、ジャズ好きの嗅覚が働きまして、買ってみたらやはり「大当たり」が出ました。
そこで今日はこのアルバムを紹介させて頂きます。

アルバムタイトル…「スプレッド」

パーソネル…リーダー;蒲池 猛(p)
      ビクター・ジョーンズ(ds)
      中村 照夫(b)
      チャギー・カーター(perc)
  スペシャル・ゲスト
      ヒューバート・ローズ(fl、pic)
      峰 厚介(ts、ss)

曲目…1.スプレッド、2.ダディーズ・サンバ、3.オットット・ブルース、4.オン・ザ・シルクロード、5.アイ・ミス・ユー・ソー・マッチ、6.ディア・アミーゴ、7.ジャスト・ハング・アラウンド、8.マンハッタン・セレナーデ…かおる…、9.プリティ・グッド

演奏(曲)&パーソネルについて少しばかり解説しましょう。

リーダーの蒲池は1941年東京生まれで、彼の経歴では、原信夫とシャープス&フラッツで10年間ピアニストを務めたのが有名。
サミー・デイヴィスJrやアンディ・ウィリアムス、ナンシー・ウィルソンなどの大物ボーカリスト伴奏なども歴任している。

中村は1942年東京生まれで、ロイ・ヘインズのバンドでデビューし、スタンリー・タレンタインのレギュラーバンドに在籍したこともある。
JAWSコンサートの主催者の一人としても著名である。

ヒューバート・ローズはもはや説明は要らないでしょう。現存するジャズ界最高のフルーテストです。

ビクター・ジョーンズは、ゲッツ、ガレスピー、ペトルチアーニなど多くのジャズメンと共演したことがある実力者。

チャギーはライジング・サン・バンドのレギュラーとして15年以上の経歴を持つ技巧のパカッショナー。

峰は1944年東京生まれで、ことに78年にネイティブ・サンを結成したことが有名なサックス奏者です。

演奏曲については、全曲蒲池のオリジナルなのだが、名旋律の佳曲が多いのでこちらもお薦め曲が多い。
その中からいくつか紹介しましょう。

まず、ナンバー1は、4曲目の「オン・ザ~」は映画音楽を思わせる美旋律の曲で、前半はローズの流麗なフルートのアドリブに涙しそうで、中盤は蒲池のフェンダー・ローズに酔いしれ、後半はチャギーの超絶技巧のパーカッションに心を奮わせる。正に蒲池入魂の一曲なり。

7曲目「ジャスト~」はファンキーでとにかくカッコイイナンバー。
演奏スタイルや曲調で言うと、D・ジョーダンの「危険な関係のブルース」とか、S・ロリンズの映画曲「アルフィー」の様な曲調をイメージして頂くと分り易い。
とてもファンキーなのだが、決して泥臭くなく、ハードボイルドで非常に都会的なニューヨークをイメージさせる曲です。
演奏では特に峰のテナー、ブローが豪快で秀逸です。

5曲目「アイ~」はこのアルバム唯一のピアノ・トリオ演奏。美しいワルツ曲で、ビル・エヴァンスを彷彿させる程、蒲池のピアノが美しく、中村のベース、ビクターのブラッシュ・ワークも、まんま、モチアンやラファロをイメージさせる名演です。しかし決して「モノマネ」演奏では無い所が良いですね。

6曲目「ディア~」は47歳で急逝した、蒲池の盟友「川上アミーゴ和彦」へ捧げた曲だが、非常に明るい曲で、峰のソプラノ・サックスも軽やかなアドリブを奏でて、どこかロリンズのカリプソを連想させる。

2曲目「ダディーズ~」は蒲池のピアノはとても楽しく粋なプレイで満足だが、それ以上は、後半のローズのピッコロが最高の聴き物。

8曲目「マンハッタン~」は夫人の「松井かおる」に捧げた曲との事。ローズのフルートがとにかく美しいバラードだ。

最後に…蒲池のピアノ演奏は全編に渡って非常に繊細でリリカルな、女性美?溢れる演奏で、ナオさんが紹介していた、男性的でパワフルマッチョな?大西順子とは正反対のミュージシャンなんです。

しかし、¥500って言うのが信じられない「アンビリーバブルな名盤」です。
今晩はもう一回聴こうかなぁ。



            

セロニアス・モンク~ストレート・ノー・チェイサー

2007-05-15 23:50:10 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日はモダン・ジャズの大巨人の一人なのですが、どういう訳か今迄一度もリーダーアルバムを紹介していなかった、「セロニアス・モンク」のアルバムをセレクトします。

モンクは非常に個性的な(演奏をする)ピアニストですが、この演奏を好きになるか、受け入れられないかは個人の好みが出ると思いますが、今後の鑑賞に多少影響を与えることは否めません。

アルバムタイトル…ストレート・ノー・チェイサー

パーソネル…リーダー;セロニアス・モンク(p)
      チャーリー・ラウズ(ts)
      ラリー・ゲイルズ(b)
      ベン・ライリー(ds)

曲目…1.ロコモティヴ、2.アイ・ディドント・ノウ・アバウト・ユー、3.ストレート・ノー・チェイサー、4.荒城の月、5.ビトゥイーン・ザ・デヴィル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー、6.ウィー・シー、7.ディス・イズ・マイ・ストーリー・ディス・イズ・マイ・ソング(未発表テイク)、8.アイ・ディドント・ノウ・アバウト・ユー(別テイク)、9.グリーン・チムニーズ(未発表テイク)

1966年11月14日、15日 1967年1月10日 NY録音

演奏(曲)について…最もモンクらしい演奏は、やはりタイトル曲でモンク作曲の中でも著名な「ストレート・ノー・チェイサー」であろう。
ここでは、ゲイルズのベースと、ライリーのドラムスはバックのリズムのみに徹し、モンクは得意で独特の不協和音?(くずした和音)で全曲弾きまくる。
最初はこの少し音ハズレ?な和音に戸惑う人もいると思うが、何回も聴いて耳に慣れてくると、「アラ不思議!」非常に魅力的な演奏になります。

それから2曲目「アイ~」はモンクが敬愛する、D・エリントン作品だが、この演奏はモンクのくずした和音の度合いが少なくとても聴き易い演奏です。
初心者の方々などはこのブルース演奏が一番馴染みやすいと思います。

4曲目は何と何と、日本の滝廉太郎の名曲「荒城の月」を弾いており、元はかなり日本的な曲ですが、ここでは「シッカリとモンク節」に編曲&演奏されており、とても楽しめます。
この曲では、全員がソロを取っており、最初の主役はテナーのラウズで、ジャージーでブルージーな非常に良いアドリブを吹いており、この曲を日本の曲と感じさせません。
モンクも流石と言うべきか、この日本の楽曲でもモンクらしい天才的な和音の崩しをして、ソロをさりげなく弾いています。
また、ゲイルズもセンシティブなベース演奏を、ドラムスのライリーも品の良いドラムソロをそれぞれ演奏しています。
そして最後は全員の演奏が高揚の頂点に達してフィニッシュします。
個人的にはこの演奏がこのアルバムで一番だと思います。

7曲目「ビトゥイーン~」はこの曲唯一のモンクのソロ・ピアノプレイです。
ハロルド・アーレンのスタンダードを、モンク独特のストライド奏法で弾ききるブルース演奏に何かを感じる人も多いのでは?
この演奏が好きになったら、貴方もモンクのとりこの一人です。

6曲目「ウィー・シー」も比較的聴き易い演奏なので、これはノー・プロブレムでしょう。

CD用のプラス3曲(未発表曲&別テイク)も、モンク演奏の中では聴き易いのでご心配無用です。
※但し、9曲目の「グリーン・チムニーズ」はモンクの作曲なので、3曲の中では一番モンク的な曲です。

それでは、貴方も「モンクの不思議な世界」へ旅立って下さい。

「パリ北駅着、印象」~「ケニー・ドリュー・トリオ」

2007-04-28 23:52:20 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
このセンス溢れるジャケットを見てください。
かつて一世を風靡したアルバムであり、演奏曲も品の良いユーロ作品&スタンダードをセレクトしてあります。

また、この録音の企画は、当時のケニュー・ドリュー再出発アルバムでもあります。

アルバムタイトル…「パリ北駅着、印象」

パーソネル…リーダー;ケニー・ドリュー(p)
      ニールス・ペデルセン(b)
      アルヴィン・クイーン(ds)

曲目…1.パリ北駅着、印象、2.イブニング・イン・ザ・パーク、3.カフェ・フローラ、4.枯葉、5.ノー・グレイター・ラブ、6.マイ・シップ、7.ルージュ・プリンス、8.モーニング・ミスト、9.ラスト・タンゴ・イン・パリ、10.追憶

1989年5月14日&15日 イージー・サウンド・スタジオ コペンハーゲン

演奏(曲)について…まぁ私の大好きの「枯葉」は、やはりとても素晴らしい。
「ドリュー」の演奏技術の確かさ、「ペデルセン」のカチッとしたベースフレーズがこの作品の魅力を伝えており、50年代(いや全録音かな?)のベスト1ピアノトリオ演奏が、「ビル・エヴァンス盤」だとすると、これは80年代(実質90年代の方が正しいかな?)のベスト1でしょう。

それから、ドビュッシーの曲のようなオープニングから入る6曲目「マイ・シップ」のバラード(シャンソン)は、乙女心をくすぐりますね。

ラテン調の8ビートの早いテンポで「ペデルセン」がぶいぶい言わす9曲目「ラスト~」は心を無性にファイトさせる利き酒の様な魅力があり、「ドリュー」のシングルトーンも勿論素晴らしいですが、それにも増してここでは「クイーン」のドラムスが最高です。

バーブラ・ストライザンドで知られている名曲「追憶」の、いかにも「大人のピアノ・トリオ」と言える余裕と奥行きのあるバラード演奏もラストを飾るに相応しい名演奏です。

肩のこらない小粋なピアノ・トリオ「ザ・スリー・サウンズ」~「ボトムズ・アップ」

2007-04-26 23:44:26 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日は肩肘張らない、小粋なピアノ・トリオを紹介しましょう。
正直、この3ヶ月間の間で、何で紹介していなかったんだろうと思うほど、初心者の方々にも聴き易いピアノ・トリオ・アルバムです。

アルバムタイトル…「ボトムズ・アップ」

パーソネル…「ザ・スリー・サウンズ」
      ジーン・ハリス(p、celeste)
      アンドリュー・シンプキンス(b)
      ビル・ドゥディ(ds)

曲目…1.ベサメ・ムーチョ、2.エンジェル・アイズ、3.タイム・アフター・タイム、4.ラヴ・ウォークト・イン、5.アイ・クッド・ライト・ア・ブック、6.ジーン・ルウ、7.ナッシング・エヴァー・チェンジズ・マイ・ラヴ・フォー・ユー、8.恋に恋して

1958年9月16日、28日、 1959年2月11日録音

演奏(曲)について…「ザ・スリー・サウンズ」はブルーノートレーベルの言わば専属ピアノトリオと言っても過言ではなく、このレーベルに長きに渡り20枚以上にアルバムを残した。
ものすごい超絶技巧でもなく、ハイセンスでもなく、特徴的な音質・音色でもないのだが、小粋で明るく楽しく、いつ聴いても肩のこらないピアノ・トリオを味わえる、食べ物で言ったら、「玉子かけご飯」か「お茶漬け」みたいな物だろうか。

さて、演奏曲だが、まずマイ・フェイバリットの「ベサメ~」はちょっとお下品な類の演奏だが、正直嫌いじゃない。
オープニングには誠に元気で宜しい!って言う感じです。
7曲目「ナッシング~」もラテンの曲で「ベサメ~」の演奏の延長線上にあり、これまた結構です。
侮れないのが、6曲目「ジーン・ルウ」で、ピアニスト「ハリス」のオリジナル曲らしいのだが、途中で弾いている「セレステ」の演奏センスが良く、もしかしてこのアルバムのナンバー1かも。
2曲目「エンジェル~」と4曲目「ラヴ~」なんかは、これぞ「ザ・スリー・サウンズ」だ!的な演奏でお薦めです。
特に「ラヴ~」は「ハリス」の演奏テクが随所に垣間見れて、ただの「おくつろぎピアノトリオ」じゃないって事を感じさせます。




「ドン・ランディ・トリオ」~「枯葉」

2007-04-23 22:11:58 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日はかつて、スウィング・ジャーナル誌の名盤蒐集CLUBに選ばれた事もあるとても渋いピアノ・トリオの名盤を紹介します。

アルバムタイトル…「ドン・ランディ・トリオ」枯葉

パーソネル…リーダー;ドン・ランディ(p)
      リロイ・ビネガー(b)
      メル・ルイス(ds)

演奏曲…1.T.J.ズ・ブルース、2.ワルツィング・マティルダ、3.アイ・ラブ・パリ、4.ザッツ・オール、5.テイク・シックス、6.インタールード、7.枯葉、8.ジプシー・イン・マイ・ソウル

1962年1月31日、2月1日 ロス・アンジェルスにて録音

演奏(曲)について…さすが解説書に寺島氏がコメントを寄せていること分かる通り、メロディアスな佳曲が目白押しで、渋さの中に聴き易さが満載です。
まず、お薦め曲ですが、タイトル通り「枯葉」はgoodです。
勿論、ビル・エヴァンスの様なハイセンスな演奏とは大分趣が違いますが、小洒落た表現とバックの名人二人、骨太ベースの「ビネガー」とブラシ・ワーク冴え渡る「メル・ルイス」が「ランディ」のピアノを強烈にアシストしています。
それを受けて「ランディ」のアドリブも瑞々しい輝きを放っています。
それから、「アイ・ラブ・パリ」はラテンのリズムが普段聞き慣れたシャンソンと打って変っていて意外に楽しめます。
それ以外では、2曲目「ワルツィング~」はこの曲を選んだ「ランディ」のセンスに拍手物です。
ちなみにこの曲はライブでの彼の「十八番」だったそうです。
1曲目のブルース、4曲目のハイテンポのバラード、5曲目の変則拍子曲など変化にも富んでいて聴き応え充分です。
最後にもう一曲ぴか一なのがあります。
そうです、6曲目の「インター・ルード」です。
きれいな女性と二人で飲むカクテルのBGMに似合いそうな、哀愁の4ビートに身も心もとろけそうなロマンがあり、今宵の貴方を夢の世界に誘うでしょう。