<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

「日中間での人材育成の重要性」を再考(中国大手人材紹介企業との面談から)

2012-12-05 | 中国ビジネス

先日、中国国有企業で人材紹介大手の日本支社総経理と面談する機会を得た。
このように紹介しただけで、中国通の読者には具体的な企業名の察しがつくかも知れないが、ここでは敢えて社名は伏せておくことにしたい。

同社の日本担当者と最初に面談したのが、今年の6月。
その後、すぐにでも面談しようという感じだったが、先方も多忙な身なので、なかなかスケジュール調整がつかず、半年近く経って、ようやく面談が実現。

当日、会社訪問させていただき、最初に社内を見学後、DVD等を活用して業務内容の説明を受ける。
こうした場面でいつも感じることだが、中国企業が作成したDVDは本当に立派。
日本の大手企業が作成したものにヒケを取らないレベル、いや最新データに更新されているという点も加味すると、それ以上かも知れませんね。
いやはや、日本経済の立場が危うくなるのも頷けます。。。

そして、待望の総経理が登場。
名刺交換のあと、約1時間にわたって、企業の人材育成や人事・労務関連について、幅広く意見交換を行った。
筆者自身にとって、非常に興味深く、また勉強になるものばかりだった。

総経理からのお話をお聞きし、日本支社を設立して10年、苦労の連続だったことは容易に理解できた。
10年前と言えば、まだ中国企業が現在ほど認知されていなかった頃。
中国国内では、国有企業というだけで、かなり有利に物事が進んでいくことが多いが、日本では完全にアウェーの状態。
ましてや、経済的な格差も大きかった当時においては、そのプレッシャーは想像以上のものだったに違いない。

もっとも、当時、日本経済は構造改革の真っ只中。
こうした状況下で生まれた「外国人研修制度(正式名称:外国人技能実習制度)」が、同社の業績浮揚のきっかけになったことは想像するに難くない。
同制度を活用して、中国から研修生を受入れようとする日本企業が増えていた時期だったからだ。


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「外国人研修制度」について、日本人でご存知の方はどのくらいいるのだろうか?
筆者は、以前、興味をもった分野に関しては、片っ端から資格を取得していた時期があり、行政書士や社会保険労務士の資格(現在は活用できていないので、死格ですが)も有しているので、ある程度の知識は持っているつもりだ。それだけに言いたいことも山ほどある。

ただ、同制度の批判ばかりしていても、あまり建設的ではないので、ここでは同制度も含め、日本企業が中国事業を円滑に進めるに当たって、どのように人材育成を進め、人事・労務制度を整えていくべきかという視点で、自分なりの考えを論じていきたい。

まず、日本企業が同制度を利用するに当たって、もう少し制度趣旨に立ち返って活用方法を検討すべきではないだろうか。

そもそも、この制度は「技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材の育成を図ること」を目的としたもの。
さらに言えば、日本企業はいま、当地中国での事業展開において、現地人材をいかに定着させ、現地化を推進していくかという難しい問題に直面している。
ならば、日本でも行われているように、キャリアパスという観点から、中国人労働者の育成を同制度も活用しながら考えていく時期に差し掛かっているのではないだろうか。

同じようなことは、日本留学経験者の採用にも言える。
現状を見渡すと、中国現地での訪日前の日本語教育、その後の日本の大学への留学斡旋、留学先での大学教育、就職活動支援、日本企業への就職という全てのステップが個別単体の動きとなっており、とても効率的に日本語人材を育成できているとは言えない状況にある。
無論、留学生本人の資質や学習意欲の違いなども影響してくるが、日本の文化や歴史を理解した優秀な日本語人材の育成を図り、日本企業で活躍してもらうというのが理想像であることは言うまでもない。

そのためには、政府や国際的に事業を展開する企業がもっと大きな視点で「国際人材の育成」をいうテーマを見つめ直し、中長期にわたる人材育成プログラムというものを構築する必要があると筆者は考えている。


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こうした視点に立つと、日本の製造業を支えてきた人材派遣会社にも更なる活躍を期待したいところ。
ご承知のとおり、生産現場における労働者派遣に関しては、リーマンショック後「派遣切り」という現象が発生したため、社会問題のひとつとされたが、現状をみても、「請負」に形態が変わっただけで、実態的な変化は見受けられない。
日本のコスト競争力という観点に立つと、もはや労働者派遣なくして日本のものづくりは成立しないと言っても過言ではないからだろう。

そして今、大手企業を中心に、生産拠点の海外流出が粛々と進んでいる。
同問題は「国内生産拠点の整理・統合」という一面で論じられがちだが、その一方で海外生産拠点が拡充されていれば、総体としては「海外生産へのシフト」が進むという結果が生まれていることに気付いている人はどれくらいいるだろうか。
そうなれば、日本の人材派遣会社が国内の製造業だけをターゲットにしていては、将来が覚束ないということが容易に想像できる。

ただ、筆者は悲観ばかりしたくはない。
現在、日本の中国進出企業は、「現地化」という難題に直面している。
社内を見渡すと、海外に赴任したくないという若手社員が急速に増えているらしい。ある調査結果によると、新入社員の49%が海外赴任を希望しないと答えたというデータもあるようだ。それほど、日本の内向き志向は深刻な問題となっている。
こうした中、逆説的過ぎるかも知れないが、派遣労働者のレベルアップを図り、中国などの現地で現場監督者として活躍できるよう教育していくといった視点も今後は必要なのではないだろうか。
現在の労働条件に不満を抱く若手派遣労働者にとって、やりがいを見出すことができるワケだし、労働者自身のキャリアにとっても決してマイナスにはならない。
中国進出企業にとっても、自社の社員を説得して、高い駐在コストを負担する必要がなくなるという点で、双方にメリットがある。
勿論、いかにして優秀な派遣労働者を見出すかという問題はあるものの、一考に値するものではないだろうか?
また、こうしたアイデアに限らず、様々な観点から検証を行い、試行錯誤を重ねながら、よりよい制度づくりに努めていく必要があるだろう。

外国人研修制度にしても、労働者派遣制度にしても、そもそもの成り立ちに起因する課題が多いのは事実だ。
しかし、ある意味では当時の社会的要請もあって、このような制度が誕生したという側面も否定できない。

であるならば、その制度の持つ本来の趣旨に立ち返り、現状に即した形で最大限活用していこうとする姿勢も必要ではないか・・・と愚直に信じたい。

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