<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

上海におけるカプセルホテルの挫折から学ぶ

2011-04-20 | 中国ビジネス
今年1月、上海で中国初のカプセルホテルが開業したことが話題になった。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110111/chn11011123330091-n1.htm

日本式のサービス、清潔感を売りにしてスタートした事業だが、その後の状況は芳しくないようだ。
新華ネットによると、同ホテルは消防部門の許可が下りず経営困難な状況となっているとのこと。
カプセルホテルは建物内の人口密度超過、非常時の避難が困難という理由で上海市政府消防部門の営業許可が下りなかったようだ。
しかも話題性はあったものの、一般の宿泊客はほとんどない状態が続いていたようだ。

上海市では昨年11月15日に58人の犠牲者を出した上海市静安区のマンション火災以来、消防基準の適用が厳しくなっていることも、営業許可が下りない原因のひとつかも知れない。

このケースを考察すると、中国でのビジネス展開のヒントが潜んでいるように思える。

ご承知のとおり、カプセルホテルは日本で生まれたビジネスである。
このビジネスが生まれた理由を至ってシンプルに考えると、既存の宿泊施設より圧倒的に安く泊まれる、そして経営者の立場から考えると、資産効率が高いという点に尽きる。
これに日本式のサービスや設備、清潔感の徹底などを加えていったことで、ひとつのビジネスモデルが完成した。
加えて、そもそも日本にはサウナや共同浴場という文化が根付いていることも、ビジネスが定着した背景にあるだろう。

では、中国のほうはどうか?

今回のカプセルホテルは85元程度との報道だが、既存の宿泊施設でも安いところであれば100元そこそこで宿泊可能な現状にある(勿論、清潔感などは望めないが・・・)。
加えて、錦江之星、モーテル168、如家など、大手格安ビジネスホテルも乱立状態にあり、こうしたホテルの相場は100元台後半~200元台である。
筆者も上記ホテルに何度か宿泊したことがあるが、水周りの設備等の不具合を除けば、広さ・清潔感・TV等の設備など、特に問題は感じられない(壁が薄いという難点はあるが・・・)。
加えて、中国では「人前で自分の裸を見せる」ことに対する抵抗感が日本より根強いと言われている。多くの一般家庭では、シャワーだけで済ませることも多く、「見知らぬ人と一緒に湯船に入る」という習慣もない。

こう考えると、今回のビジネスモデルは出発点から少々無理があったと言わざるを得ない。
日本企業が陥りやすい失敗でもあるが、「日本で成功しているモデルを直接持ち込む」というのでは、大きな成功は望みにくい。

当たり前のことではあるが、その国で製品・サービスの対価を得る(ビジネスを成功させる)には、現地の人が「対価を支払いたいと思う価値」を徹底的に追求する必要がある。
ありきたりの表現でいうと「マーケティングの徹底」ということになるが、これは実際のところ簡単なことではない。人種や生活習慣が違えば、理解しにくいことも多いからだ。

幸い、日本から中国までの距離は遠くない。航空券代も国内便より少し高い程度である。
本気で中国ビジネスを展開しようと考えるのであれば、現地に深く踏み入って、その国の住人になった気分で楽しみながらマーケティングすることも必要ではないか?

真剣にこの国と向き合えば、必ずや成功を勝ち取れるものと筆者は確信している。


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