<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

シャープの今後を憂う(中国視点の続編)

2012-08-19 | 中国ビジネス

今回は予告どおり、経営危機に揺れるシャープを話題に。
今年の3月16日に書いた「シャープの今後を勝手に占う」という記事のアクセス数が際立って増えているのをみると、やはり相当数の皆さんがシャープの経営問題に危機感をもっているというのが窺える。
ブログの場合、賞味期間は短いですからね。
5ヶ月も前に書いた記事が再び脚光を浴びるというケースは本当に稀です。。。

もっとも、今回の記事も既報の情報に基づく個人の私見に過ぎませんので、その点は予めご了承のほどを。

まず、このアクセス数が増えた要因、端的に言えば「株価の暴落」だろう。
報道をみると「暴落」という表現は使っていないが、現状を踏まえれば、この言葉を十分使っていい状況であることが分かる。
なぜなら、今年の年初来高値(690円)と年初来安値(164円)を比較すると、株価は実に4分の1以下になってしまったからである。
※2012年8月17日終値は184円
ちなみに、2011年12月には800円近くだったので、当時との比較では約5分の1、液晶パネルが絶好調だった2007年には2,500円に迫る勢いがあったのだから、その当時と比べれば10分の1以下になったという計算に。
改めて株の世界の難しさと株式市場における企業評価の変容ぶりを感じざるを得ない。

しかしながら、株価の上下には必ず「理由」が存在する。
その理由がニセの情報だったため、株価が元に戻るといったことはあるが、少なくとも上下した時点では噂であれ理由が存在するのが常である。
今回のシャープのように長期にわたって下落、しかも節目の発表を契機に下落幅が更に大きくなるというのは、最も危険なパターンではないか・・・と筆者は考えている。


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では、シャープが売り込まれている理由は何なのか?
それは報道にもあるとおり、同社の赤字が続くことによる経営不安である。
ただ、報道機関はそこまで直接的な表現は使っていないように感じる。
これは、色々な背景があってのことだと思うが、報道されている情報を整理すればするほど、同社の置かれた状況が極めて厳しいものであることが浮き彫りになってくる。

まずは、有利子負債の状況。
同社は2012年6月末時点で約1兆2500億円の有利子負債(借金)を抱えており、このうち1年以内に返済する必要のある短期負債が約7000億円にも上る。
正直なところ、かなり大きな金額と言わざるを得ない。

ちなみに、同社の総売上額は2兆4558億円。そのうち、不調と言われている液晶テレビ(プロジェクター等を含む)、液晶ディスプレーの合計額が約1兆4800億円と全体の60%近くを占めている。
つまり、この液晶関連事業の早急な建て直し抜きに、同社の経営問題が解決することはないのである。

こうした本業が不調な中では、貸し手となる金融機関が現れないのも無理はない。
一部の主要取引行がつなぎ融資を行ったとの報道がなされているが、あくまで「つなぎ」に過ぎない。
しかも、こうしたつなぎ融資が取り上げられた過去の事例を思い出せば分かるが、こうした事態こそが経営危機の現状を反映していると言えるだろう。

次に、こうした状況を受けたリストラ策の断行。
同社は新たに工場や都心に保有するビルの売却に乗り出したようだが、売却手続きに時間を要するうえ、数百億円程度では大きなインパクトはないだろう。
しかも、資産の売却は本業の縮小という形で売上げの減少に跳ね返って来かねない。
残るは人件費の圧縮ということになる。
既に発表済みの5千人削減方針に加え、新たに数千人を削減するとの報道もあるが、これも短期的には赤字額を増やすことになり、また長期的には優秀な人材の流出という側面も有している。
どれも自社で対応できる精一杯の対策であり、かつ苦渋の選択ではあるのだが・・・。


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では、シャープの今後を左右する本業の液晶事業。
その前途は、残念ながら明るいものとは言えそうにない。
大型液晶などを生産する堺工場の2012年4~6月期稼働率は30%前後とふるわず、7~9月期以降は80%以上を見込んでいるが、確たる保証はどこにもない。
いや、この命運を握っているのが、まさに鴻海(ホンハイ)精密工業(台湾)ということになる。

同社と鴻海精密工業との間では、2012年3月、鴻海がシャープ株式を1株550円で取得し、9.9%出資することで合意していた。
このまま取得手続きが進めば、シャープは約669億円を手にすることができたのだが、同3月以降、株価は下がり続け、今では370円も値下がりしてしまった。
台湾当局からの承認が下りないとの報道もあるが、ここはしたたかな台湾企業のこと、同社の足元を見ているという面も否定できないだろう。

あわせて、鴻海は液晶パネルの買取りにも合意していた。
つまり、シャープにとって、鴻海は同社の経営を左右しかねない大口顧客なのである(おそらく鴻海に匹敵する影響力をもつ取引先はないだろう)。

こうしたバイイングパワー(購買力)を背景に、20%程度まで出資比率を押し上げることを迫っていると言われている。
コレ、単純計算すれば分かりますが、買取価格を現在の株価に置き換えたら、鴻海の手出し額はほとんど変わらないだろうということが理解できる。
その上、シャープの経営の主導権を握れるのだから、こんなに美味しい話はないだろう。

シャープにとっては、大口顧客にソッポを向かれては困る、されど経営の主導権は手放したくない、というジレンマに陥っているワケだ。

こうした状況の中、シャープが他の国内メーカーやファンドに対して500億円規模の増資を打診しているとの情報がある。
ただ、これはひとえに「鴻海の出資比率引き下げ対策」の一環であると推測される。単純に考えると、出資する側のメリットが乏しく、実現性には疑問符がつくと言わざるを得ない。

このように見ていくと、シャープが置かれた状況は想像以上に過酷なものであることが容易に分かる。
一説によると、同社の経営問題は2年前にも議論されていたとの噂もある。
要は、液晶に依存した経営モデルの危うさは当時から認識されていた可能性があるのだ。
もしこれが真実であるならば、早急な対策を怠ってきた同社の経営姿勢が改めて問われていると言えそうだ。
もっとも、時計の針は戻ってきませんが・・・。

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