無知の涙

おじさんの独り言

無題4

2008年05月08日 | Weblog
部屋の中は暗かった。
当たり前だ。
既に2時を回っているのだ。

闇の中で彼女の静かな寝息だけが聞こえる。

最初に闇があった。
そこに誰かが、光あれ、と叫んだ。
そう記された書物がある。
そしてその書物には、こうも記さてもいる。

あらゆる善行も、愛がなければ全ては無益である、と。

完全な絶望というものは無い。
それがどんなに脆弱なものであっても、
我々が生きてゆくには希望が必要なのだ。

僕はキッチンの前に敷いた布団に入り、眠りについた。


翌日は雨だった。
僕は7時に起きて仕事場に向かった。

働く為だけに働く。
そこに自我はあっても自己は無い。
僕は誰かの意志であり、その誰かが属するものの何かだ。
意味などは無い。

「できれば今日は」
今朝、僕が部屋を出るとき彼女は言った。
「話したい事があるから、早めに帰って来てくれる?」

分かった、と僕は言った。

彼女が昼間、何をして、何を食べ、何を思い、
そして何に対して悩んでいるかは僕には分からない。

僕に分かることがあるとすれば、
全ての物事には始まりがあり、終わりがある、ということだけだ。

昼休みに外へ出た。

雨は相変わらず勢いよく降っていた。
そのせいで桜がだいぶ散ってしまっていた。
人や車に踏まれてグズグズになった桜の花びらの塊が、
通りのあちこちにゴミと一緒に溜まっていた。

毎年その光景を見ると、たまらなく憂鬱になる。
だから桜も好きになれない。


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