無知の涙

おじさんの独り言

僕らの七日間戦争

2018年01月13日 | テレビや映画

正月に帰省した際に、ローカルテレビの深夜枠で「ぼくらの七日間戦争」が放映されていました。

なんで年明け一発目にこの映画をチョイスしたのか謎ですが、えっらい懐かしいなぁと思いながら観てるうちに、見いってしまった。TMネットワークが主題歌担当していたり、宮沢りえの女優デビュー作だったり当時はけっこう話題になっていましたが、今回初めてきちんと最初から最後まで観ました。

当時はさっぱり分からなかったけど、宮沢りえが大人気だった理由が分かった気がしました。



この映画が公開されたのは1985年。まだ学校で日常的に体罰が行われていた時代。

とある中学校が舞台であるが、いかにも体面しか考えていなさそうな校長に教頭、ガチガチの堅物学年主任、ガチムチの屈強な体育教師、朝礼中に告知なしで生徒たちのカバンを物色して私物を没収する担任。などなど当時ではテンプレとも言えるメンツである。

単なる学校の体裁の為だけに強いられる不条理なルール、些細なことでの言い争いが絶えない父母、生活は裕福になったがそれと引き換えに失ったものが子供たちの心を抑え付けてゆく。ついに我慢のできなくなった一部の生徒たちが蜂起し、謎の廃工場に立てこもって大人たちに戦いを挑む話。

反抗を起こす生徒たちが単なるヤンキーみたいな集団ではなく、部活を頑張ってる生徒や、学校側から一目置かれている優等生など個性的な面々なのが逆に不思議な一体感を作り出していて面白い。

工場内にある足場のパイプで見張り台を組んだり、仕掛けを作ったり、当時の子供が一度は夢見る基地ロマンも満載。

えらいバブリーな生徒も参加していて、食糧面も心配なし。

空手やサッカー、読書、それぞれがしたい事をして過ごす日々。しかしそれは自由に見えて本当の自由ではない。まだ彼らは自由というものがいかにリスキーであるかを知らず、またその自由の対価すら払えない年齢なのだから。

彼らの代わりにその対価を払わなくてならない先生や親たちが説得に来るが、彼らは力づくでこれを追い返す。2度目は強行突破を試みるが、何故か工場の地下に眠っていた戦車が起動し、大人たちはまたしても撤退を余儀なくされる。

戦車まで持ち出されたことで校長は機動隊の要請を行う。工場に突入する機動隊であったが、事前に生徒たちが用意していた様々な仕掛けに翻弄されてゆく。最後はそれぞれ因縁のある先生との対決であるが、チームワークでこれも撃退してしまう。

そして生徒たちは工場を放棄し、地下道を抜けて地上に脱出して終わり。機動隊の突入を察知していたのか不明だが、長丁場になればジリ貧になるだけなのを見越しての鮮やかな引き際。その夢のような限られた時間がもたらした大人への勝利が、現実に戻ってきた彼らに何をもたらしたのかは描かれていない。そこが残念。

映画という尺の関係で説明と描写に不足な部分が多々あるけど、なかなか面白かった。機動隊を次々に罠にはめていくシーンは、偶然同じような頃に機動隊にお世話になった身としては実にスカッとした。実際はあれほど間抜けではないけど。

問題を起こした生徒の保護者たちが雁首揃えて校長を問い詰めている時に、学年主任があんたらの日頃の教育が悪いからだろうが!と怒鳴り放つシーンは現在だとなかなか物議を醸すとこだろう。でもこれは主任の言い分が正しい。学校は特定のカリキュラムに従って生徒に物事を教えるだけの場でしかない。定められた時間が過ぎれば完全に赤の他人。

さいきん何もかも先生のせいにするクレーマーみたいな親がいるみたいだが、他人が思い通りに全て教育してくれると思う方がどうかしているというか、安にぜんぶ委ねてしまおうという発想が意味分からん。その子が犯罪を犯した時に学校の先生の教育が悪かったからとでも言うつもりなのか。

逆にそいつが先生だったら自分が求めてるような教育?を完璧に生徒にしてあげられる自信があるのかと首を傾げてしまう。

この舞台になった学校の問題は、体裁を重んじるあまり、個性にまで踏み入り力づくで生徒に強いろうとしたところ。言い分を聞かずに女生徒の前髪を切ったり、無断で物品を没収したり、地毛をパーマだと決めつけ頭に水をかけたり。対話がなさすぎる。

体罰自体は特に反対ではない。自制のきかない子供の頃は痛い目に合わないと分からないことがある。中学2年までよく体罰を受けたていたが、それは自分がルールを破ったからであるという自覚はあった。今でもその痛みというのは覚えていて、自制に繋がっている部分もある。

そして中学2年のある時を境にピタリと体罰がなくなった。

どちらかと言うとそっちの方に腹が立った。体罰がなくなり、あっと言う間に無法地帯を化した。まだ内申書をいう切り札があるので、生徒全員がそうなった訳ではないが、素行の悪さで有名な中学になってしまった。それでも先生たちが体罰を行う事はなかった。

極端すぎて不自然極まりない。怒りもあったが、自分たちが先生たちにとってその程度の存在だったのかと寂しい思いの方が強かった。

バランスを失えば物事は必ず屈折し歪んでしまう。今の教育というものを殆ど知らないので、当時と比べてどうなのかは分からないけど。


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