無知の涙

おじさんの独り言

限りなく鼠 2

2008年10月17日 | 思い出

そこにはパイプイスが10脚ほど並べられていて、
6人ほどの女性が座ってました。

その正面にはデカいホワイトボードがありました。


そこに座ってしばらく待つと、
一人の男が部屋に入ってきました。


どこにでもいそうな軽薄な感じの2枚目で、
服装はなんだかホストみたいな感じで、
やたら宝石類を身に着けてました。


うさんくさッ!!!


もう、うさんくさ発見器みたいなモノがあったら、
完全にメーター振り切るよ。
ボンッ!て爆発するよ、ベタに。

こ・・・こいつプロだ。
うさんくささのプロだ。


思わずうさんくさいで賞でもあげたくなりましたが、
まぁここまで来たからには一通り説明を聞かないと、
僕だって引っ込みつきません。


説明が始まりました。


もうほとんど覚えてませんが、
何かの商品を自腹で買って、
それを友達や知り合いに売る。
値段は自分で決めていいから、
利幅が多ければ多いほど儲けるとか。


要するにネズミ講


なんか高校生の頃に、
中学の同級生がネズミ講やってる
という噂が流れ、
その時に大体の概要まで聞いていたから予備知識はありました。


くだらねー。
ホントにこんなコトやってる奴いんだ。


リチャードに悪いけど、
そっから僕は完全に敵意むきだし


うさんくさマンも僕の敵意に気づいたらしく、
なんとなく意識し始めてるのが分かった。


んでも、あの話術というか、
アレは無駄にスゴイですね。

これで月に何百万も儲けて、
ポルシェがどーとか、マンションがこーとか。

僕以外の女の子はすっかりノリ気でしたもん。

タチの悪い新興宗教みたいで、
すんげー気持ち悪かった。


「この中に僕の話を全く信じてない人がいますが、
 私の言ったことは真実です」


僕のコトを言ってるのである。

「何か質問はありますか?」
うさんくさマンはそう続けた。


僕は真っ先に挙手した。

「それって要するに友達や知り合いを騙せってコト?」


その質問を聞いたうさんくさマンは、
フゥと溜め息一つ吐いてからこう言った。

「騙すわけではない。
 これはその人達にとっても有益な話です。
 その商品を元に、彼らも利益を上げれば問題ない」


「それを騙すっつってんだよ。 
 利幅の分だけ誰かが痛い目に合ってんだよ。
 人を騙せない優しい人がよ」


「おやおや、あなたは心優しい人なのですか」
と言って薄い笑みを浮かべた。


「俺のこと言ってんじゃねーよ!!
 アンタがそこまで儲けてる裏で泣いてる人達のこと言ってんだバーカ」


僕にバカと言われて、
明らかに奴の顔色が変わった。


「君みたいな貧乏人にバカと言われたくない」


なんで貧乏人だって分かったんだ!!
ガーン。
確かにパンクロッカー全盛期だったので、
ボロボロのジーンズにボロボロの革ジャンだったけど。


「確かに俺は貧乏だけど、アンタみたいに落ちぶれる気はないよ」


「落ちぶれる・・?私のどこが落ちぶれてるって言うんだ!!」
だいぶバケの皮が剥がれてきたうさんくさマン


「それが分かってねーから、落ちぶれてるっつてんだよ」
僕にもよく分からなかったけど、
なんとなくそう思ったのだ。


ただ、理屈はどうあれ、コイツ絶対に間違ってるのだ。


この世界で生きていると、
決して交わることのない線
というものを度々感じることがある。
死ぬまでけっして交わることのない線たち。



結局、そのあと僕はさっさと一人で部屋を出て、
実に苦労して家まで帰りました。


ただリチャードが残念でならなかった。
こんなペテンに騙されるような人だったとは。
それ


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