無知の涙

おじさんの独り言

ハイスクール落ガキ「告白」2

2010年08月25日 | 思い出
車に乗せられ寿司屋へと連れて行かれる。

ちゃんとした寿司屋だ。
回転寿司以外の寿司屋に入るのは初めて。

夏休みのせいか、けっこう家族連れがいた。

そんな中、パンチパーマに茶色のグラサンかけてアロハシャツ着たデカイおじさんと、怪しい灰色のブレザーズボンに黒いTシャツ(僕)と、ピンクのポロシャツ(フテブテ)を着た若くてデカイ2人がドスドス入店。

完全にヤクザと愉快な舎弟たちな感じで周囲から恐怖の眼差しで見られながら食べる寿司は涙の味でした。

このあとも僕は何度かフテブ邸を訪れることになるが、親父さんがいるときは必ず寿司を食べに行くことになる。


最終的に僕は親父さんのことを「すしいくぞう」と心の中で呼ぶようになっていた。


初めての寿司屋だし、パンチパーマのおじさんを見ながら食べたせいか、僕はイカばかり食べていたような気がする。値段が書いてない寿司屋だったので、恐ろしくて頼めなかった。

親父さんは「好きなもん頼めよ!」と言ってくれるのだが、ウニなんか注文した日には、どこからともなくヤクザの子分がやってきて、「てめぇで仕入れてこいや!」と東京湾に沈められるのではないかと恐怖していた。

東京湾にウニがいるのかどうかは知らないが。

とにかく僕は、ヤクザ→海に沈没という固定観念を抱えて幼い頃から生きてきたのである。


そうして、約2時間のぎこちないランチタイムを終え、フテブ邸に帰ってきた。


正直もうギターなんてどうでも良いような気がしていたが、変なところで降ろされると迷子になってしまうので、とりあえず一緒に帰ってきた。


そんな紆余曲折を経て、ようやくフテブテくんの部屋に到着。


お!ギターが!
目の前にある!

「弾いていいぜ」とフテブテくん。

コードをアンプに繋いでくれた。

ギャァァン!
とギターはエレキトリックな音を放った。

いいなぁ一軒家。
うちはファミリーアスレチックやってるだけで苦情が来る。


とりあえずギターは弾きたいが、知識がまるで無いのだから、何かしらまず弾いてくれよ、と僕はお願いした。


「あー俺、Iに電話しないといけないから」

えっ

そうして彼女に電話し始めるフテブテくん。


さっきまで一緒にいただろ。

つーか、友達来てるときに彼女に電話するか?
しかも招いておいて。

で、淡々と30分経過。

長っ。
男がこんなに長電話する生き物だとは知らなかった。

ギターにも飽きてマガジンを読み出す僕。


そのとき唐突にして、フテブテくんの口から僕の名前が出た。

びっくりしてフテブテくんの方を見る僕。

「Nさんの電話番号知ってるか?地元一緒だったよな?そうなんだよ、好きみたいなんだよ」

まさか、バラしてるよね?おもっきし。

俺は怒ったぞ。

四つん這いのまま移動し、フテブテの顔面にアイアンクローを決めて受話器を奪った。

「もしもし!今の嘘だから!勝手に言ってるだけ」と必死に弁解する僕。必死になればなるほど認めることになるパターン。

Iさんが何か言ってるがフテブテのうめき声でよく聞こえない。

「いてー!いてーよ!頭割れんだろっ!」喚くフテブテ。

安心しろ、割るつもりだ。

「ちょっと何してんの?やめて!」ドタバタしてるので、何か事態が起こってるとIさんも察知したのか、声を荒げる。

僕は手を離した。

「おまえ少し考えろよ。そういう話はバラされたくない奴もいるんだよ。なんでもかんでも自分と同じだって思うなよ」なぜか説教を始める僕。

こめかみを押さえながら黙ってるフテブテくん。

「きっと心配だったのよ」と受話器から聞こえた。「力になりたかったんじゃないのかな?だから許してあげて」

そうなのか?
僕の力になりたくて?
そうなのか?
そうだったのか?
そうかなぁ
えー違うと思う。


まぁでもIさんがそう言うのなら、ハイパーポジティブシンキングで、フテブテくんは僕に協力してくれようとした、ということにしよう。

「じゃあ電話番号言うね」とIさん。

いいよ!フリダシじゃねーか!

「いや、だから違うって。別に好きじゃないから」と僕。

「え?さっきバラされたって怒ってたんでしょ?」

はい。

と、言うわけで電話番号を教えてもらった。

その昔、卒業アルバムに卒業生全生徒の住所と連絡先が掲載されているという、恐ろしい時代があったのだ。

で、この電話番号を知って、どうしろと?

「ここで電話していいから」とフテブテくん。

俺が?ここで?
電話で告白すんの?

つづく

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