クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

平野啓一郎『本心』感想

2022-07-14 | 本と雑誌

「新聞に、平野啓一郎(ひらのけいいちろう)の小説が連載されていた」

と 聞き、

読んでみました。(←好きな作家さんです

 小説『本心』は、「超高齢化社会」が進むこれから、

多分、真剣に話し合われるであろう、死の自己決定権にまつわる お話。

「自分が死ぬタイミングを自由に決められるようになったら、どうします?」

読者に そっ(率)直に問いかけてくる、切ない物語です。

~あらすじ~

 2040年、デジタル化がいっそう進んだ世の中。

仕事の多くは科学技術にとってかわられ

格差はひろがり

日本人が、中国に出稼ぎに行ったりする時代

 

「特に重篤な疾病障害がなくても、人々は個人の意思で自由死を選択してもいい」、

一線を越えた社会に なっています。

 主人公の29歳の男性は、母ひとり子ひとりで育った

心やさしい青年ですが、

先ごろ、母を事故でなくし

孤独に うちひしがれていました。。

 そんな中、亡くなった人のバーチャル・フィギュアを作るサービスがある

のを知り、

お母さんのバーチャル・フィギュアを作ろう

と 思い立ちます

 というのも、実は・・

お母さんは事故死する前、

彼に

自由死したい、との希ぼう(望)を 伝えていました

(・・なぜ、お母さんは、人生を終わらせる気持ちになったのか

 

理由を知りたかった彼は、

母のライフログを学習したAI に「最適解」を答えさせよう

と、

バーチャルフィギュアとくらす生活を はじめたのです

 ところが、お母さんは自由死にまつわる

一切の自己データを残さなかったため

「バーチャルお母さん」も 

そけだけは、答えることができず、、


 そうぞう(想像)以上に、深いお話でした。

 数年前まで、恋愛小説を書いて

読者をキュンキュンさせていた

じ作家さんとは 思えないくらい、

踏み込んだテーマで、考えさせられました。

 クリン🐻、自分だけの考えとしては、

死のタイミングや

あいする人亡き後の わが身の処し方について、

ひそかに けつい(決意)していることが

あります。

 でも・・、さまざまな立場や考えの人がいる世間に向かって

このような問いかけをするのは、

よほどの「説得力」と

「確固たる意見」がないとダメだって 

わかっているので、

うっかり 口にはできません。

 それを まだ老れい(齢)でもないのに 世に問うて

小説という形で ぜつみょうにまとめた

平野啓一郎さんは、

作家として、すごいフィールドに足を踏み入れた

と 

かんじました

 物語の主人公は、母の自由死のどうき(動機)を探るべく

自死を介助したお医者さん、

もと同りょう、

生前愛読していた小説、

などを探り、

その中で新たな出会いをけいけんして 次第に立ち直っていきます。



そして、

「人に自由死を選択させる社会」に、今度は 立ち向かっていきます

 ・・なんとなく、(こんな時代になるのかな?)

みんながうすうす恐れている

ドライな未来に、

力強い人間の一歩を踏み出させて 物語のまくを閉じた平野さんは、

 やはり、いつも通り、弱くても・がんばっている人の味方であり

人間の、がんばる力を信じている

「善良な魂をもつ・作家さん」だなあ

って

かくにん(確認)できました




~印象に残ったところ~

 

「小菅駅からほど近く、歩き始めると、スカイツリーを荒川の対岸に遠望した。手前の河川敷では、高齢者たちが草野球をしていた。その楽しげな様子に、心を奪われた。

無事にその年齢まで生きられ、そして、今は自由だということが・・」

 

 

 

【おすすめ度:

 

 

 

コメント (16)
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