<見えない敵>
行方不明の者たちは、森の長老やベテランばかりで、簡単にカラスなどの外敵に食べられるはずもなかった。
森は木々に囲まれ外敵が侵入して来ても、すぐ分かる。
クリンたちは、ホトホト困り果てていた。
「アゲハちゃんは、どこに行ってしまったの?
一緒に遊んだのに・・。
おいしいみつの花の場所を教えてくれた。絶対に見つけてあげなきゃいけないよ!」
クリンが、みんなを励ますように言ったその時、
「フフフッフフフッ!」
馬鹿にしたような笑い声が聞こえてきた。
クリンたちは、声の聞こえる方に身構えて、辺りをキョロキョロ見回したが、
木の葉や枝が揺れているだけで、いつもと何も変わらない。
「キャー、悪魔!」
「お化けか?」
「幽霊じゃない?」
雀たちはいっせいに、腰を抜かした。
「・・みーんな旨かったぞ。
この森にはまだまだ、うまそうな奴がたくさんいるな。明日も楽しみだ。
お前たちの仲間を、全部食べてやる。アッハハハハハハハ・・・」
まるで、こったの森が話しているようだった。
クリンたちは、怖くなって、一目散に森の中から逃げ出して行った。
猫のミーちゃんは、
「この森が、大変な事になってしまった。連続失踪事件じゃない。連続殺人事件だみゃー!」と、身体を震わして叫んだ。
「帰って、チットとお兄ちゃんに聞いてみる。
また明日集まって、話しましょう。必ずアゲハちゃんの仇はとってあげる から・・・」
「チュンチュン」「チョッチョッ」「チッチッ」「私たちも、ワシの多摩王に聞いてくる、チェッチェッ。」
みんなは、不安の表情を浮かべて解散した。
(つづく)