本当に泣けてくるジャケットだ。
このインディゴ・ブルーの深い色合いといい、プレイヤーが遠くを見つめるポーズといい、主役となる楽器の大写しといい、これこそ正しいジャズのジャケットだ。
ジャズ市場においては、そのジャケットだけでも買う価値を提供しなければ評価や売上がぐんと落ちる。つまりジャケットはただの表紙ではなく、中身を視覚的に表現した立派な作品なのである。故にジャケットには中身の音楽と同等の価値があるのだと思っている。
さてこの作品、ちょっと見ただけではブルーノート盤のように見えるが、これは歴としたリバーサイド盤である。
リバーサイド盤であることは他のメンバーを見てもわかる。ブルー・ミッチェル、ジミー・ヒース、ナット・アダレイ、ボビー・ティモンズ、とくればもっともリバーサイドらしい布陣だ。聴く前から音が聞こえてきそうな気配すら感じる。
このジャケットをよく見るとベースの手前にセロ(チェロ)があることに気づく。そう、このアルバムでサム・ジョーンズはこの両方を弾いているのだ。このへんの企画もいかにもリバーサイドっぽい。
白眉なのは3曲目の「THE OLD COUNTRY」とラストの「SO TIRED」。重心の低いサム・ジョーンズのベースの上で、ブルー・ミッチェルやジミー・ヒースの哀愁漂うソロがよどみなく流れていく。目立たない人だがチャールス・デイヴィスのバリトンも効果的で、ボビー・ティモンズの存在も大きい。
大スターがこそいないが、こういうアルバムがジャズを牽引してきたのだ。