SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

AVISHAI COHEN 「Gently Disturbed」

2009年01月04日 | Bass

どういったらいいんだろう。
最初のピアノの音からして普通と違う。吸い込まれそうな鳴り方・響き方をしている。
いきなりこんな印象を持てたのは間違いなくe.s.t.以来だ。
そこには全体に音の重心が低い深遠な世界が創られており、私たちはあっという間に引きずり込まれるのだ。
これは単純にリーダーのアヴィシャイ・コーエンがベーシストだからといったことでは済まされない。
音そのものに彼らの魂が入っているような感じがするのだ。

このアルバムだけ聴いて判断するのも乱暴だが、これはバド・パウエル・トリオ~ビル・エヴァンス・トリオ~キース・ジャレット・トリオときた、歴代ピアノトリオの革新的なスタイルの次なる完成形のように思えてくる。
この完成形はe.s.t.がその土台を創り、このアヴィシャイ・コーエン・トリオが最終的な仕上げを行ったと思えてしまうのである。
ではなぜそんな印象を受けるのだろう。
まず楽曲であるが、これはクラシック的な雰囲気が随所に漂っている。特にメロディラインなどはクラシックの名曲を聴いているような優雅さがあって洗練されている。
もちろん音は完全なジャズである。しかもかなりゴリゴリした力強さが前面に出てくるジャズだ。但し複雑な変拍子が続くので、ロック的・ラテン的な要素もあちこちで感じられ、単純な4ビートジャズではない。しかもそれらが見事に融合されていて、アルバム全体の統一感が生まれているのだ。
しかしそう書くとe.s.t.とどこが違うのかという話になってしまうが、e.s.t.ではやはりピアノが主役だったように感じている。それに比べこのアヴィシャイ・コーエン・トリオは誰が主役という感覚はまるでない。メンバー全員がそれぞれの持ち味やテクニックを駆使して結びついているところにその完成度の高さを感じるのである。

これはe.s.t.同様に大音量で聴きたいピアノトリオである。
ベースが、ドラムスがまるでスピーカーを破って飛び出してくるかのような迫力だ。これは実に快感だ。まだという方はぜひとも聴いていただきたい。
余談になるが、アヴィシャイ・コーエンはエスビョルン・スヴェンソンに雰囲気がどことなく似ている。どうやら現代はこの手の顔に革命児の素質を持たせているのかもしれない。


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