SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

VIT SVEC TRIO 「KEPORKAK」

2009年07月16日 | Bass

愛称「鯨」といえばこれ。
チェコのベーシスト、ヴィト・スヴェッツによる人気盤だ。
いきなり鯨の鳴き声を模したアルコでスタートする。
これがかなりリアルに聞こえるので、いかにもコンセプトアルバムっぽく感じてしまうが、こういうトリッキーな演奏は1曲目の最初と最後のみ。他はいたってシンプルなピアノトリオである。

ここ数年のピアノトリオ・ブームで、私たちの耳はかなり研ぎ澄まされてしまった。
つまりよほどいい演奏でない限りは、心に響かなくなってしまったのだ。
いよいよピアノトリオ・ブームも終わりかと思いきや、こんな優れた作品と出会うと「やっぱりピアノトリオが最高!」なんて思ってしまう。

3曲目「Dreamer」、4曲目「Smilla」におけるMatej Benko(マチェイ・ベンコ)の透き通るようなピアノ。
5~7曲目の「Information」における重厚なベースワークとシンバルワーク。
そして極めつけが4ビートで臨む8曲目の「Blues for Michael」である。
私はこういった4ビートの曲をもっともっと入れてほしいと思っているのだが、突然はっとさせるようなウォーキングベースの登場にいつも大感激させられる。これも演出の一つだとしたら、彼らの思惑にしてやられたり、である。
9曲目の出だしは、チコ・ハミルトンの「ブルー・サンズ」を連想させる。
その個性的なドラムのリズムが遠のくと、実にリリカルなピアノが全編を駆けめぐる。
やがて太鼓のリズムが帰ってきてエンディングとなる。この構成もなかなか見事だと思う。

とにかく最近のピアノトリオに少々飽きてしまった方に強くお薦めしたい。
ピアノもベースもドラムも高水準を行く作品である。








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