こんなアルバムに出会ってジャズがますます好きになった。
いわゆる初級者から一皮剥けて中級者になったような気分なのである。
なんたってメンバーがすごく渋め。
ジャック・シェルドン(tp)、ハロルド・ランド(ts)、カール・パーキンス(p)、フランク・バトラー(ds)、そしてリーダーのカーティス・カウンス(b)だ。
このうちの2人以上のリーダーアルバムを持っていたら、あなたも立派な中級者である(たぶんね)。
ただ「要するに全員B級のジャズメンということか?」と勘違いされては困る。
とんでもない、ハートもテクニックもハイレベルなメンバーばかりなのだ。
とにかくそれぞれの楽器の持ち味が、くっきり浮き立ってくるような音色を奏でているのに驚く。
しかも全体のトーンはあまり変わらない。
つまり色相は違うが、明度や彩度は同じといった色合いに染められているのである。
これが全体のまとまりをよくしている原因だ。
ここに収録されている曲はどの曲もゴキゲンなナンバーばかりなので、どれか推薦曲をといわれても答えにくいが、今日は5曲目に収録されている「Sarah」を簡単にご紹介する。
ブルージーな雰囲気を持つこの曲はジャック・シェルドンの作である。
カール・パーキンスのキレのいいピアノソロから始まり、やがて遠くからハロルド・ランドのテナーがやってくる。
そのテナーソロの途中で、フランク・バトラーが思い切り、タタン!とスネアを叩く。この瞬間が快感である。
続くジャック・シェルドンのトランペットも、バトラーのドラムに煽られ徐々に熱くなっていき、最後にカーディス・カウンスが重心の低いベースを全面に押し出す。
単純なハードバップと呼べないフィーリングがここにある。
目玉と呼べる大スターがいないからこそ、こうした均衡のとれた作品ができたのかもしれない。
ジャズも何よりチームワークが大切だということだ。
このアルバムに関してはこだわりを持って聴いている「通な方」が多くいるようです。ある意味試金石のようなアルバムかもしれませんね。
ハロルド・ランドが低い声でじわじわと搾り出すような「タイム・アフター・タイム」が好きです。
私のはふやけたジャケットの米中古盤ですが、何故かアナログ以外で聴く気にならない稀少な作品です。
データをダウンロード、インポートし、手軽に持ち歩くのは可能でも、空気や気配までは無理。
何故かそう感じてしまいます。
緊張を強いるような演奏ではないはずなのに。