長いものに巻かれない中間派ジャズの精神が好きだ。
自分たちがやりたいジャズはこれなんだ、というかたくなまでの姿勢に共感できるのだ。まぁ伝統工芸の職人のような人たちが奏でるジャズだともいえる。
好きになったきっかけを作った作品は、ヴィック・ディッケンソンの「ショーケース」とボビー・ハケットの「コースト・コンサート」。こうしたアルバムのお陰で、それまでハードバップ系のジャズ一辺倒だった自分のジャズ観が変わった。
バック・クレイトンやルビー・ブラフもよく聴いた。
そしてこの大御所コールマン・ホーキンスの傑作「ハイ・アンド・マイティ・ホーク」を忘れるわけにはいかない。
出だしのバック・クレイトンとコールマン・ホーキンスの短いアンサンブルを聴いただけで嬉しくなる。
中間派が好きな人でないとなかなかわかってもらえないかもしれないが、この乾いた音の重なりが広大な大地を感じさせ、私をアーリーアメリカへと連れて行ってくれる。
演奏はここからホーキンスの見事なアドリヴに入る。よほど体調もよかったのだろう、彼はまるで全盛期のように快調に飛ばしていく。
この音を聴く限り、ホーキンスがモダンテナーのパイオニアであることを今更ながら思い知らされる。
続くアドリヴはハンク・ジョーンズのピアノからバック・クレイトンのトランペット、レイ・ブラウンのベースへと受け継がれテーマのアンサンブルに戻る。単純な構成ではあるが全員が貫禄充分だ。
命名したといわれる大橋巨泉さんには悪いが、「中間派」という呼び方には抵抗を感じることも事実である。
本場アメリカで呼ばれる「メインストリーム・ジャズ」の方がはるかに正しい表現だと思う。要するに樹木でいえば幹の部分だ。彼らがしっかりしていたから色んな枝葉が出ても倒れなかったのだ。
これからももっとど真ん中で聴こうと思う。