昨年暮れにオスカー・ピーターソンが亡くなった。
何だかんだいっても私は彼が大好きだった。あの巨体に溢れんばかりの笑顔、ダイナミックでハッピーでスインギーな演奏、彼こそキング・オブ・モダンジャズだった。
ヨハン・クレメントによるオスカー・ピーターソン曲集ともいえるこのアルバムは一昨年(2006年)に発売されたものだ。当然だがこの時ピーターソンは健在だった。しかし皮肉にも今となっては追悼アルバムのように聞こえてしまう。それくらいこのアルバムを聴くと、ヨハン・クレメントがオスカー・ピーターソンに寄せる思いの深さを感じるのである。
それはともかくこのヨハン・クレメントという人、なかなか器用な人だ。
普通オスカー・ピーターソンの曲を演奏すると、どうしても本人の超絶技巧と比べられてしまい萎縮してしまいそうだが、彼の場合そんなことは微塵も感じさせない。まるでピーターソン本人が弾いているように指さばきもスムースだし歌心もある。
但しピーターソン独特の節回しはクレメント流に昇華されていて微妙に表現方法が違う。うまくいえないが、このアルバムはオスカー・ピーターソンの現代版サウンドとでもいった方がいいのかもしれない。そういえばエリック・ティンマーマンというベーシストもどことなくレイ・ブラウンを意識しているように聞こえる。
アルバム全体を通して聴くと、スピード感溢れる曲もいい出来なのだが、4曲目の「When Summer Comes」や8曲目の「Noreen's Nocturne」で思わずジ~ンときてしまう。こういう表現がヨハン・クレメントの真骨頂なのかもしれない。
現代の正統派ピアノトリオを聴きたい人に強くお薦めする。
決して買って損はないアルバムだ。
ついでにジャケットデザインもこれくらいのシンプルさがお気に入りだ。