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SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

STACEY KENT 「IN LOVE AGAIN」

2007年05月01日 | Vocal

このCDの帯には「和みのヴォーカル」とキャッチフレーズが振ってある。言い得て妙だ。
ヴォーカリストで成功するには、歌がうまいだけではダメで、相当個性的な表現力を持ち合わせていなければいけない。
そういう意味においてこのステーシー・ケントは完璧だ。彼女の歌声を聴いて和めない人はいないのではないかと思う。
もちろん人によっては好き嫌いがあるだろう。でも彼女の囁くような声は天性のもので、決して他人が真似できるものではない。どことなく子どもっぽく、適度に甘く、ほんのりとした色気が漂う。色に例えるとパステルカラーの雰囲気を持った人だ。

さて以前にもお話ししたが、個人的にリチャード・ロジャースのつくった「Bewitched...」が大好きだ。
数ある彼女のアルバムでどれを推薦しようかと思ったが、やはりこの曲が入っている「IN LOVE AGAIN」に決めた。そう、このアルバムもリチャード・ロジャースの歌曲集なのだ。
但し彼女のアルバムには駄作がなく、どれもこれも安心して推薦できるので、どのアルバムでも結構、ぜひ一度聴いていただきたい。
春のほんわかした日差しの中で、まどろみながら聴くのが正解だ。

MOSE ALLISON 「BACK COUNTRY SUITE」

2007年04月21日 | Vocal

モーズ・アリソンのファンになって、かれこれ25~30年にもなる。
その頃はジャズ一辺倒ではなくて、ロックやポピュラー、レゲエなどもよく聴いていた(今も時々は聴いているが...)。
70年代後半から80年代の初めにかけてはAORというおしゃれな感覚のロックミュージックが流行っていた。ボズ・スキャッグスやマイケル・フランクス、ボビー・コールドウェルといった人たちがその代表選手だ。
この人たちの多くはジャズから影響を受けていた。特にマイケル・フランクスはベン・シドランと並んでこのモーズ・アリソンから多くのエッセンスを吸収していた人だ。聞けば一目瞭然だが、あのヘタウマ的な棒読みソングはモーズ・アリソンの歌い方にそっくりだ。最初は単調に聞こえても何度か聞くにつれ、癒されていくような快感に変わってくる不思議な歌声だ。

半分どうでもいいことだが、このページでは彼(モーズ・アリソン)をピアノのカテゴリーに入れるかボーカルのカテゴリーに入れるか悩んだ末、やっぱりボーカルに入れることにした。つまり彼はボーカリストとして孤高の存在なのだ。ある意味、チェット・ベイカーのような人だといってもいい。但しこのアルバムでは僅か2曲しか歌っていないので、彼の歌声を存分に聴きたい方にはちょっと物足りないかもしれない。しかしアルバムの完成度から見てもジャズピアニストとして再認識するにしても、このアルバムはもってこいの作品なのだ。

彼の歌は基本的にブルースである。都会よりも田舎が似合う。
AORにはほど遠いが、これはこれで充分おしゃれなのだ。

DIANA KRALL 「WHEN I LOOK IN YOUR EYES」

2007年04月05日 | Vocal

93年のデビュー以来、あれよあれよという間にスターダムにのし上がったカナダ出身のピアニスト兼シンガー。
まだ聴いたことがないという人がいたら、是非にといいたい。ほとんどの人が彼女の虜になるのではないかと思う。
私も最初に聴いた時の衝撃は大きかった。長い間、こんなヴォーカリストを待っていたような気がした。
数年前に「Live in Paris」の様子をBSで観たが、女性の格好良さを絵にしたような人だなと感じたことを覚えている。何が格好いいかって、彼女のピアノタッチが粋な上に背伸びしないボーカルがほどよくて、実に気持ちいい気分にさせてくれるからだ。
弾き語りをやる女性ボーカリストは多いが、やはりこれくらいピアノがうまくないと絵にならない。
彼女はジミー・ロウルズにピアノを師事したと聞いた覚えがあるが、そういわれてみれば無駄のないあの弾き方はどことなくロウルズに似ているような気もする。

このアルバムは98年の作品で、彼女の中では私が最も好きなアルバムだ。グラミーも獲ったアルバムなので知っている人も多いと思う。
ここではラッセル・マローン(g)との掛け合いが聞き物である。彼とは同郷のよしみで気が合うのかもしれない。
プロデュースはトミー・リピューマ。現在の夫である。
蛇足ながら最近二人の間に双子ができたらしい。ちょっと気が早いが、この子どもたちの将来も今から楽しみだ。

RITA REYS「Marriage in Modern Jazz」

2007年03月28日 | Vocal

本作はリタ・ライスとピム・ヤコブストリオによるドラムレス編成のヴォーカルアルバムだ。
タイトルからもわかるように、この作品が発表された年(1960年)にリタ・ライスとピム・ヤコブスは結婚している。ジャケットを見ても幸せいっぱいという彼女の喜びが伝わってくる。リタ・ライスは1924年生まれだから歳は既に30代半ばを過ぎていたわけで、それも当然のことだろう。
因みにピム・ヤコブスは、リタ・ライスの死別した夫のバンドマンであったらしい。

リタ・ライスはヨーロッパにおいては大変有名なジャズヴォーカリストだが、この日本では今ひとつ知名度が低い。
私も彼女のことを知ったのは、ピム・ヤコブストリオの「カム・フライ・ウィズ・ミー」に感激して、彼のことを色々と調べる中でその存在を知ったに過ぎない。だからこのアルバムもリタ・ライスを聴きたいというより、ピム・ヤコブスのピアノを聴きたいがために手に入れたものだ。
彼のピアノは実に気持ちよく転がっている。ある意味ジャズピアノの一番美味しいところを押さえた弾き方だといえる。タイプとしてはベツレヘムの専属ピアニストであったラルフ・シャロンに近い。両人とも歌伴を得意としていた職人肌のピアニストで、決して目立ったことはしない人たちだった。
リタ・ライスやクリス・コナーが光り輝いたのも、こうした影の存在があったればこそなのだ。
ジョン・レノンではないが、いつの時代も愛がすべてということだ。

ELLA FITZGERALD/LOUIS ARMSTRONG 「ELLA & LOUIS」

2007年03月13日 | Vocal

いまさら私が解説しても始まらないアルバムだ。
ジャズの神様といえる二人が競演しているだけでなく、バックにオスカー・ピーターソン・トリオを配置した誠に豪華なアルバムなのだ。内容も文句なしに楽しい。人気も沸騰したためスターウォーズのように続編も作られる始末。
しかし、こういいことばかりを書き連ねていると文句の一つもいいたくなる。
だいたい何でこんな写真をジャケットにしたのか。
確かに気の良さそうなおじさんとおばさんの仲むつまじい姿はほのぼのする。しかしこれでは私の家の近所にいるご夫婦と変わらない。これくらいの大スターが競演するっていうのに、スタジオの片隅で「はい、パチリ」はないだろう。しかもフラッシュ付きで大きな影が映り込んでしまっているじゃないか。何とも安易すぎる。
で、気がついた。
これはほんの思いつき作品なのではないかということ。
つまりたまたま思いつきでこんな企画が持ち上がり、それを二人がおもしろがって承諾した。オスカー・ピーターソンも、そんな二人が競演するならと、ノーギャラに近いかたちでテキトーにOKする。プロデューサーのノーマン・グランツも売れなくたって面白けりゃいいくらいの気持ちだった。だからジャケットなんかは考えてもいなかった....。
もちろんこれは全て私の勝手な推測で、たぶん事実とは違う筈だ。
ただ名作は、そこに関わるみんなの純粋な遊び精神から生まれることだってあるってこと。

JACINTHA 「AUTUMN LEAVES」

2007年03月02日 | Vocal

シンガポールの実力派人気シンガーがこのジャシンサだ。
女性ジャズヴォーカルブームに乗って、アジアから彗星のごとく登場したのが彼女である。
最初に聴いたのは4~5年前のことだが、とにかく一聴して惚れ込み、立て続けに何枚か購入した。
とにかくもう、うっとり、しっとり。耳元で囁くような歌声に時を忘れてしまいそうだ。ジャズのライヴハウスに行って、間近でこんな歌を聴かされたら10分以内で倒れる自信がある。それくらい感情のこもった歌い方だ。
このアルバム、録音も優れている。それぞれの楽器が持つ最良の音をきちんと拾っているところなど、エンジニアの腕も高く評価したい。彼女の声をより艶っぽくしているのもその録音技術のせいだ。

このアルバムはJohnny Mercer(ジョニー・マーサー)の歌を取り上げ、全体にスローなバラードで構成されている。
タイトル曲の「枯葉」の前半はオリジナルのフランス語で歌われており、改めてシャンソンから生まれた名曲であることを再認識できる。まるで晩秋のパリの街並みをゆっくりと散策しているようだ。


CHRIS CONNOR 「CHRIS」

2007年02月20日 | Vocal

やみつきになる人だ。特別な歌い方をしているわけでもないのになぜだろうと思う。
ベツレヘム・レーベルの魔術か、はたまたゴールドブラッドのせいか。いやいや、それだけではない。

一曲目の「All About Ronnie」を聴いてみる。
ちょっとハスキーな彼女独特の鼻づまり歌唱。
どことなくニーナ・シモンにも似ているが、クリス・コナーの方がはるかに先輩だし、もっとさらりとしている分だけ喉越し?がいい。
時々無性に彼女の歌声を聴きたくなってくる。これは本物であることの証明であると同時に、ジャズヴォーカルの最も大切な要素だ。
録音されて半世紀も経っているというのに少しも色あせない。
こんな普遍的な魅力を持った歌い手が現在のミュージックシーンにどれだけいるだろうか。

「John Coltrane and Johnny Hartman」

2007年02月14日 | Vocal

最高のジャズヴォーカルアルバムが聞きたいというリクエストがあればこれを薦める。
どんなジャズアルバムでも、必ず「好き」と答える人と「嫌い」と答える人がいるが、このアルバムだけは例外ではないだろうか。今までこのアルバムを「嫌い」と答えた人に会ったことがない。

コルトレーンといえば、目まぐるしいシーツ・オブ・サウンドや難解なフリーキー・トーンを最初に連想しがちだが、彼のアルバムで一番売れたのが「バラード」であるように、彼はこうした静かな曲が得意であったし、ハートマンの低い声と同調させたかのようなアドリヴはさすがだ。ハートマンもコルトレーンのテナーをじっと見つめて、ここぞというタイミングで歌い出す。これで感動しない人がいたらその人には心がないものと思いたい。
たっぷりと男の色気を感じてほしい。

BETTY BENNETT 「Nobody else but me」

2007年02月03日 | Vocal

ヴォーカルのアルバムも取り上げよう。
今日ご紹介するのはベティ・ベネットである。確かアンドレ・プレピンの奥様だった。ジャケットを見ておわかりの通り実にいい女で(美しい人などと書くよりこの方が相応しい)、アンドレ・プレピンも男前だったから、さぞかし周りが羨むカップルだっただろう。
このアルバムもショーティ・ロジャースとアンドレ・プレピンのアレンジとジャケットにも記されている。まぁウエストコーストジャズの歌姫といったところ。但し彼女の吹き込みは少なく、私が知っているのは本作と長いブランクのあとに発表された「The Song Is You」の2枚だけだ。

さらりとした歌い方は当時の白人女性歌手ならではのもので、重くて粘りけのある黒人歌手の「こってり力うどん」的な歌い方ではなく、「薄味な讃岐うどん」的味わいだ。でもこういう歌い方の方がどちらかというと好きだ。声が楽器になってしまうとヴォーカルアルバムではなくなってしまう。うまかろうがヘタであろうが、歌うその人の思いを共有したいというのが私の聴き方だ。