文屋

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●ずっと昔の夏に、瀬戸内海の小さな島でひとりひと夏をすごしたこと。

2010年07月12日 20時47分05秒 | 日録雑感

小学校の5年か6年生のとき、なぜか
なぜかというのは、いきさつをよく理解していないから。

岡山県のある小さな島で、夏休みを丸まる、
たったひとりですごした。

その島は、自分が住んでいた家の向かいの人の故郷で
どういう話でそうなったのか不明なのだが
そこへひとりでいって、ひと夏すごして
ひとりで帰ってきた。

島の名は、真鍋島という。
映画の「瀬戸内少年野球団」の撮影が、ぼくがすごした
ずっとあとに行われた。

島の比較的大きな家で、客人として優雅にすごした。

一日なにもせず、ずっと小さな港の船の出入りを眺めていたり
一日、海ですごして、小さな貝をしこたまとって
ゆでて食べたり、

島の丘をのぼったら、そこは除虫菊が満開で
浜では、カブトガニがうようよ。

小舟に乗って釣りをしたり。

釣りといっても、竿はなく、手で糸をもって
ただ、海面をつんつんするだけで
サヨリやベラやコチなどが面白いように釣れた。

その家にも、島にも知り合いはだれもいず
ただただ、わけのわからないまま
夏をすごした。

夢のようだった。

夏になると思いだす。

夏休みが終わって、ひとりで
大阪駅にかえってきた、その日の
暗い駅の光景もよく覚えている。

笠岡から、北木島、白石島とたどった
船の道筋もよく覚えている。

楽しかったというよりも
不思議な思い出。

郵便船がやってきて
島の人たちがみんな集まってきて
赤痢がはやって、何日か海に入れなくて
ただ、海を眺めていたこと。

まったく孤独だったこと。
その孤独が、とてもここちよかったこと。

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