千日回峰行というのをご存知でしょうか。天台宗に伝わる、比叡山の峰々を縫うように巡る修験道と仏教が組み合わされた修行です。
先日、この厳しい修行を2回も満行したという酒井雄哉さんのドキュメンタリーを観る機会がありました。
こんな厳しい修行をするぐらいだから仏のような容貌をしているのかと想像していたら、意外にも頼りなげでひ弱な印象すら受ける方でした。予科練で終戦を迎えた後は職業を転々とし39歳で得度し、回峰行に入る決意をしたのは自殺した奥さんの命日だったそうです。
「もうちいっとましな人生を送ってくれば良かったかなあ」
と悔やむ酒井さんがこの厳しい修行を続ける強い意志の裏には、それ以上の苦しみと深い悲しみが横たわっていることが伺われます。
5年をかけて700日の回峰を満行した後には『堂入り』が行われます。断食、断水、断眠、断臥でひたすら真言を唱え続けるまさに命がけのこの行で、酒井さんの姿は恐ろしいほどにやつれていきました。途中から瞳孔が開きっぱなしになっていたとか。眠っていないので、交感神経が過剰に働き、興奮状態になっていたと思われます。
こんな厳しい修行を始める勇気は逆立ちしたって出ないですが、それでも過酷な日々を淡々とこなし一歩一歩進んでいく姿を見ていると、自分の人生の歩みもこうありたいという気持ちになります。すべてをそぎ落とした酒井さんの表情は究極のニュートラル。途中から、歩いているといろんなものが見えたらしいです。
昭和54年放送のドキュメンタリーなので、その後の酒井さん(満行後は大阿闍梨)の映像も紹介されていましたが、ドキュメンタリー当時とは似ても似つかないほがらかで自信に満ちた表情が印象的でした。
そもそもは山川草木の全てに仏性を見いだし礼拝をするというこの修行。未熟ではありますが、狭い家屋に閉じこもってばかりいないで、外の世界をどんどん歩いて、心と身体を鍛えたいと思います
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます