徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


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GPWS: Ground Proximity Warning System - Mode 1

 GPWS: Ground Proximity Warning System 、和訳すると「地上接近警報装置」と言います。

CFIT: Controlled Flight Into Terrain 、つまり機材故障などではなく正常に制御され飛行していた機体が地上・海上に激突する、この類の事故を撲滅することは今日の航空界に課せられた課題の一つです。

昔に比べ CFIT が原因の事故は激減したとは言え、まだ時として人智の無力さを嘲り笑うかのように CFIT が原因と推定される事故は無くなりません。

GPWS は CFIT 対策の一つとして米国において1973年から航空機への装備が始まり、それ以降、確かに CFIT による事故は減少傾向をたどっています。
その意味で、GPWS は CFIT 対策に一定の効果をあげていると言って良いでしょう。

初期の GPWS, Mark I は誤報が多いなど性能面で満足できるものではありませんでした。8割を超えるパイロットが GPWS の発する警報に懐疑的だった、との調査結果もあります。

その後、GPWS は改良を重ね、Mark I から II、そして Mark V, VII と進化を遂げて行き、完成の域に近づきつつありますが、未だ完全ではありません。

近年のハイテク機は、GPWS を更に進化させた EGPWS( E は Enhanced の意味)を装着しており CFIT 撲滅と闘っています。

この先、数回に分けて、GPWS の仕組み、発する警報について簡単な説明にチャレンジしてみます。

例として取り上げる GPWS のモデルは、GPWS としてはほぼ完成形に近い Mark V, Mark VII, Mark VIII 、Advanced GPWS と呼ばれるグループです。
多少の差異はありますが、設計思想はほぼ同じです。説明の図では Mark VI という名前を用います。

先ず、この GPWS にはモードが六つあります。

初回のきょうは、Mode 1 の動作です。

Mode 1 は飛行機が地面(海面)に激突することを考えて、極端な降下率に対する警告( Warning )と警報( Altert )を発します。

モニターしている値は、電波高度(地表に向けて電波を発射し、その反射波が到達するまでの時間経過から高度を測定します: Radio Altitude )と気圧高度を基にした降下率(降下率は FPM: Feet Per Minute 、一分間あたり降下した高度( feet )を単位としています)です。

これらの値を、下の図に当てはめ、警告・警報を発します。

GPWS Mode 1 Warning Condition


"Sinkrate" が警告( Warning )で、"Pull up!" が警報( Altert )です。それぞれ「降下率」、「引き起こせ!」の意味です。

(これらの言葉の前に "Whoop", "Whoop, Whoop" が入る場合あり)

"Sinkrate" は3秒毎に繰り返され、さらに降下が続くと、より大声で "Pull up!" が操縦室内に響き渡ると同時に赤色の "GPWS Warn" 警告等が点滅します。
※音声は合成音声です。

次の図をみると、実際に飛行機が急激に地上接近した際 GPWS Mode 1 がどのように警報を発するかが理解できるかと思います。
※図はあくまでも説明のためのものです。

Avoid possible collition by GPWS Mode 1


極端な降下率で高度を下げてきた飛行機は、高度と降下率から "Sinkrate" 警報領域に突入します。
上の図の例では、そのまま降下を続けた場合、地上に激突する約20秒前のことです(20秒って意外と短いですよ)。

そのまま降下を続けると、"Pull up!" 警告領域に入り、合成音声が高らかに鳴り響きます。
上図の例では、"Sinkrate" を発してから約6秒後です。

この段階で、迅速かつ的確な回避措置をとらないと、地上に激突します。

図の例では、何ら回避措置をとらなかったら地上に激突したであろう約5秒前に何とか機首をたてなおし、危機一髪で難を逃れています。

ジェット機(殊に大型機)の場合、エンジンのパワーを入れてから実際に吹き上がるまでにタイムラグがありますし、機体の慣性の影響で操縦桿を操作してから機体姿勢に変化が現れるまでにも時間を要します。

さらに、パワーと機首上げ角度とのバランスを考えずに、ただ操縦桿やサイドスティックを引き起こしたのでは機体は失速します。

よって、この説明に使った図の飛行経路は、"Sinkrate" の警報が発せられた直後、直ぐに適切な回避操作をとったであろう機体の動きです。

[しつこいようですが、この図はあくまでも説明のためのものです。最近のハイテク機はコンピュータ制御されており、この図のような upset には陥らないよう制御則が働くよう設計されていますので。]

Mode 1 説明の最後は、意図的に地上に接近する場合、進入・着陸についてです。

進入・着陸のために機体を操っているとき、突如 GPWS が鳴り出したのでは心臓によくありません。

よって、GPWS の引き金を引くまでの“あそび(ゆとり)”の部分を増やし、パイロットの機体操作に自由度を持たせる機構が Mode 1 には備えられています。

飛行機が ILS Glide Slope (計器着陸装置の誘導電波の内、的確な進入角度(通常は3度)を示すビーム)に乗って降下している場合には、警告・警報を発する感度を鈍らせます。具体的には、警告・警報を発する閾値を変化させています。

イメージとしては下の図のようになります。

GPWS Mode 1 automatically desensitized


ただし、ひとたび機体が Glide Slope 中心よりも下に降下した場合には、落とされていた GPWS Mode 1 の感度は元に戻り、Glide Slope よりも過度に高度が下がった場合の警告・警報を発するようになります。

と、ここまで GPWS Mode 1 の動作説明にチャレンジしました。

この先、Mode 2, 3, 4, 5, 6 と説明にチャレンジするつもりでおりますが....。いつ完結するかは不明です。

(図を用意したり、これでも結構大変なのです、ハイ)
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