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乱気流強度基準
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/1f/85/b5e6a848bc56860fcf5ec75f2916d99c_s.jpg)
擾乱の強度、つまり“揺れの強さ”は主観に負う部分も多くどうしても曖昧になりがちですが、乱気流に遭遇した飛行機の揺れ方の“震度”に相当する目安については、DIGITAL AVIATOR さんのブログ、『タービュランス(続)』に簡潔かつ的確にまとめられています。
「ど素人が出過ぎたことして」とのお怒りを覚悟の上で、関連した話題を取り上げてみました。
まず、“揺れの強さ”に対する客観的基準は無いのか、という点です。
これは(小生のブログではすっかりお馴染みとなった)ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)が『航空機重心位置における加速度変化』を基に、参考とすべき基本的な判断基準を定義しています。
ICAO のそれは、以下の3段階からなります。
- LIGHT
- 航空機重心位置における加速度変化は0.5G未満
- MODERATE
- 航空機重心位置における加速度変化は0.5G以上1.0G以下
- SEVERE
- 航空機重心位置における加速度変化は1.0Gを超える
加速度変化を瞬時に読み取れる“加速度計”は操縦席の前面計器にはありません。
実際にどれだけ揺れたかの値は DFDR: Digital Flight Data Recorder に0.2秒間隔で記録されているのを、後から解析して(読み出して)初めて解ることになります。
※ACMS: Aircraft Condition Monitoring System や AIDS: Aircraft Integrated Data System 搭載機であれば、Cockpit 内の Maintenance Terminal から類似データを読み出すことができますが、いずれも即時性という点では満足できるものではありません。
この ICAO 基準ではあまりにも粒度が粗く、日常の運航で用いるに適しているとは言えません。
一方で、パイロットは『運航の妨げとなる気象状態に遭遇した場合は、出来る限り速やかにその情報を管制機関等に通報すべき』となっており、洋上飛行での位置通報と共に報じられる機上気象報告 AIREP: AIr REPort や随時通報する PIREP: PIlot weather REPort の書式が定められています。
乱気流に遭遇したパイロットは PIREP を報告します。
そこで用いられる乱気流の強度は、例えば FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局) では以下の6段階からなります。
- Light Turbulence
- Light CHOP
- Moderate Turbulence
- Moderate CHOP
- Severe
- Extreme
航空会社では、よりきめ細かい乱気流強度基準を ICAO や FAA のそれに準拠して設定して、社内無線(カンパニー・レディオ)で通報し自社便の乱気流回避やサービス判定基準等に用いています。
例えば、全日空系では
- LIGHT MINUS (LGT-)
- LIGHT
- LIGHT PLUS (LGT+)
- MODERATE (MOD)
- SEVERE (SEV)
- EXTREME (EXT)
- SMOOTH (SMTH; TB0)
- LIGHT MINUS (LGTM; TB1)
- LIGHT (LGT; TB2)
- LIGHT PLUS (LGTP; TB3)
- MODERATE (MOD; TB4)
- MODERATE PLUS (MODP; TB5)
- SEVERE (SEV; TB6)
- EXTREME (EXT; TB7)
今では会社を問わず乱気流情報を共有し、快適で安全な航空機運航のために寄与しています。
C-PIREP で定める乱気流強度基準は
- SMOOTH (SMTH)
- LIGHT MINUS (LGTM)
- LIGHT (LGT)
- LIGHT PLUS (LGTP)
- MODERATE (MOD)
- MODERATE PLUS(MODP)
- SEVERE (SEV)
- EXTREME (EXT)
ICAO の判定基準は“客観的指標”を示している、という点では有益なのであり、不幸にして乱気流に遭遇し、負傷者が出た場合などは DFDR を取り下ろしてそのデータを解析、実際の揺れはどの程度だったかを明らかにします。
ただし、これにも盲点があります。
この値は『航空機重心位置における加速度変化』であるという点です。
飛行機の揺れ具合は、重心位置付近とそこから遠く離れた後部座席付近とでは異なる場合が殆どです。
よって、DFDR の値が0.5G未満であっても、お客様が着席されている座席位置によってはそれを上回る揺れがある可能性があります。
乱気流には機上レーダにも映る対流雲に伴う乱気流だけでなく、圏界面( tropopause )やジェット気流近傍で起こる晴天乱気流( CAT: Clear Air Turbulence )もあります。
この晴天乱気流は機上レーダにも映らない、当然雲もない状況で突然の風の変化で起こる厄介なものです。
![DFDR Plot](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/b5/211515e96cb79c9721203587709dd3e6.png)
晴天乱気流は、右の図( DFDR のプロット図)のように突然、『ドン』とくることが多いので、ベルト着用サインが消灯していても、着席時には少々窮屈であっても座席ベルトを腰の低い位置で締めておくことがお客様の立場でできる最善の自己防衛手段です。
パイロットの皆さんは、C-PIREP や PIREP、Company-PIREP、Air-to-Air の無線交信などを駆使し、揺れに関する情報を共有し、安全で快適なフライトのために頑張っておられます。
お客様も搭乗して着席したらベルト着用、でその努力に応えましょう。
パイロットの皆様も自分が遭遇した気象状況が各種気象FAXや衛星画像でどのように捉えられていたのか、C-PIREP, METAR, TAF などではどのように表現されていたのか、是非“ Look Back ”されることをお勧めします。
3レグ、4レグ後で疲れた後にそんな気力は残っていないかもしれませんが、決して無駄ではないと思います。
【蛇足】
ICAO や FAA, 航空局の判定基準は良いとして、航空会社の判定基準やら DFDR のグラフを何故知っているのか?
「日々是勉強」でございます。
このときばかりは事故調が発表する事故調査報告書や重大インシデント報告書を隅々まで読むのであります。
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GE社 CF6-80A2 エンジン故障 (Americal Airlines Boeing767)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/58/ea/79ead4ba2187581743cb07b8668ab14b_s.jpg)
米国西海岸標準時、6月2日の12時27分、ロサンゼルス国際空港で整備中だったアメリカン航空の Boeing767 の左翼第一エンジンがテスト中に故障、一段目高圧タービンが破損し、その破片は約1000mの範囲にわたって散乱すると共に、機体主翼にも突き刺さり、そこから燃料が漏れ、その漏れた燃料が発火、火は空港の消防職員により消し止められました。
この事故による死傷者はおりませんが、事故当時、3名の整備士が航空機内にいたため、NTSB が調査にあたっています。
破損したエンジンは、米国 General Electric 社製の CF6-80A2 というエンジンです。
【補足】
ボーイング社は767に当初二つのエンジンを選択肢として用意しました。
一つは、この General Electric 社の CF6-80 シリーズ、もう一つは Pratt & Whitney 社の JT9D-7R4 シリーズです。
その後1990年2月に Rolls-Royce 社の RB211-524H シリーズが三番目の選択肢として加わり、英国航空が早速 Rolls-Royce のエンジンを搭載した767を導入しました。
NTSB の調査官は6月3日~7日にかけて事故現場で破損した高圧タービンブレードの破片を回収、Washington DC の研究所に送り解析を始めました。
初期解析によると、破片からは金属疲労による破断が見つかっているそうです。
アメリカン航空は、故障したエンジンをオクラホマ州にあるアメリカン航空の整備拠点に運び込み、今週、NTSB 監督下のもと、当該エンジンを分解する予定です。
Boeing767 は本邦のキャリアでも運航している機体であり、昨年12月1日に鹿児島空港において、スカイマークエアラインズの Boeing767-300ER (JA767B) が離陸直後にエンジン故障を起こしATBするという事故が起きています。
関連投稿:スカイマーク機、鹿児島離陸直後にエンジントラブル
確か、このときにも NTSB の調査官がやってきたと記憶しています。
昨今のハイテク機に搭載されているエンジンは、省燃費・高効率化と共に信頼性においても格段に向上しているのは確かです。それ故、双発機でも ETOPS180, ETOPS207 を取得して長距離路線にどんどんと進出してきています。
噂によると、FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)は ETOPS360 (つまり片肺で6時間の飛行が可能)を認可するらしいとも聞いています。
が、いくらエンジンの信頼性が向上しても、双発機では一発止まれば即 Emergency です。
机上の確率論だけでなく、このようなエンジン故障の事例を教訓としてマージンを十分にとり、安全が担保される検査・整備体制や運用制限等を確立して欲しいものです。
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