徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

激しい雷雨の中での事故でした

 日本時間の今朝(3日午前5時)、カナダ・トロントのピアソン国際空港(現時時間では2日午後4時すぎ)で、エールフランスのパリ発トロント行きエアバスA340が、悪天候下、着陸後オーバーランして機体が炎上する事故が起こりました。

以下の一連の写真を見ると機体が停止した場所は(くぼ地で)、条件が悪いことがわかります。
infant (幼児)も搭乗していた中で、よく、zero fatalities (死亡者ゼロ)でEvacuation (緊急脱出)したと思います。

当該便の乗務員は、冷静沈着に対応し、機内でのパニックもコントロールしてその勤めを果たしたことは、大変立派だと思います。

緊急事態における手順どおり、まず副操縦士が機外へ出たようです(脱出場所の安全確認とその後の脱出援助)。その後、客室乗務員の誘導で乗客全員が緊急脱出しました。(機長は機内に取り残されている乗客がいないことを確認して最後に脱出します)。

今回の事故の記事を幾つか読んで、改めて、客室乗務員の保安要員としての役目の重要性を認識させられました。
同時に、着陸時には万一に備えて安全姿勢を取れるよう日頃から心構えておくことの大切さも再認識しました。

以下、米国 Yahoo NEWS "Plane Skids Off Toronto Runway" の写真を一部引用

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事故当時のトロント・ピアソン国際空港の気象状況は、下の引用記事にもありますが、全天雲が雲に覆われ、視界も悪く激しい雷雨が降り続いていたようです。

事故当時のトロント・ピアソン国際空港の気象状況( METAR )です。

(日本時間:午前5時20分)
METAR CYYZ 022020Z 34024G33KT 3SM +TSRA FEW015 OVC040TCU 23/ RMK SF2TCU6 CB ASOCTD
(日本時間:午前5時04分)
METAR CYYZ 022004Z CCA 34024G33KT 1 1/4SM +TSRA SCT015 OVC045TCU 23/ RMK RA2SF2TCU5 CB ASOCTD
(日本時間:午前5時00分)
METAR CYYZ 022000Z 29011KT 4SM +TSRA BKN051TCU BKN140 23/22 A3002 RMK TCU6AC1 CB ASOCTD LTGCC VIS LWR SW-NW 2 SLP164
(日本時間:午前4時00分)
METAR CYYZ 021900Z 22007KT 4SM +TSRA BKN050TCU BKN080 24/23 A3003 RMK TCU6AC1 CB ASOCTD SLP168



仏旅客機が着陸失敗、炎上 全員脱出、43人軽傷 (共同通信) - goo ニュース
 【ニューヨーク2日共同】カナダ・トロントのピアソン国際空港で2日午後4時(日本時間3日午前5時)すぎ、エールフランスのパリ発トロント行きエアバスA340(乗客乗員計309人)が着陸後、滑走路を約200メートルオーバーランして地面のくぼみに激突、炎上した。乗客らは全員、炎上直前に脱出、死者はいなかったが、43人が煙を吸うなどして軽いけがをした。ロイター通信などが伝えた。脱出から炎上までは数分以内だった。

トロントの日本総領事館は、日本人が搭乗しているとの情報はないとしている。

米CNNテレビが乗客の話として伝えたところによると、着陸直後に機内の明かりが消え、タイヤがパンク、ブレーキが利かなくなったという。滑走路外の地面に激突後、機体が2つに折れ、炎に包まれた。乗客は脱出シューターを使って機外に逃れた。

2005年 8月 3日 (水) 12:21
トロントの航空機事故、22人軽傷 (ロイター) - goo ニュース
 [パリ 2日 ロイター] カナダ・トロントのピアソン国際空港で2日、エールフランス<AIRF>のエアバスA340型旅客機が着陸の際、滑走路をオーバーランし炎上した航空機事故で、エールフランスは、死者は出ておらず、22人が軽傷を負ったと発表した。

 エールフランスは声明で、「犠牲者はいなかった」と発表。事故機には乗客297人と乗員12人が搭乗していたと明らかにした。

 事故機は、パリ発トロントの行きのエールフランス358便で、荒天の中での着陸時に滑走路を外れオーバーランしたという。空港は落雷の危険性から警戒態勢(レッドアラート)を敷いていた。

 エールフランス幹部によると、乗客らは事故機が炎上する前に避難した。事故原因は調査中。

 同幹部は記者団に対し、「エールフランスは、乗客支援のために全ての努力を行っている。また全ての物理的、精神的な支援を用意している」と語った。

2005年 8月 3日 (水) 14:18
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ジャカ・デン

 ジャカルタ経由デンパサール路線、通称“ジャカ・デン”に搭乗してバリ島を訪れたのは、はるか昔の1999年の8月でした。

その頃は、未だインドネシアの治安もそれほど悪くなく、バリ島を満喫してきた記憶があります。

当時の日本航空のジャカルタ(CGK),デンパサール(DPS)路線は、
 1)NRT-CGK-DPS // DPS-CGK-NRT --- Boeing747-300SUD による運航
 2)KIX-DPS-CGK // CGK-KIX --- DC10 による運航
の2パターンでした。

1)のパターンはデンパサールまで、熱帯収束帯( ITCZ: Inter-Tropical Convergence Zone )での 2 Landing を強いられること;および、デンパサールの空港も山が迫っていて、バリ島デンパサール南のくびれた場所に東西に何とか滑走路を作った感じで(当然、両端は海)、慣熟が必要な空港であり、運航する立場(パイロットの方々)からすると相当に気を遣う路線でした。

一時期は、シングル編成での2回着陸で運航されていたのですが、私が搭乗した頃には、コックピットは CGK Stay となり NRT-CGK//CGK-DPS-CGK//CGK-NRT の2泊4日パターンに改善されていました(ジャカルタ~成田は夜行[徹夜]便)。
※ Cabin Crew は 2 Landing でデンパサール・ステイ。

その後、インドネシアが政情不安定になったことや、旅客の需要・利用形態を鑑み、“ジャカ・デン”は2)のパターン〔厳密には“デン・ジャカ”ですが....〕を残すのみとなり、成田からは、DPS, CGK にそれぞれ直行便を飛ばして利用客を捌く運用でした。

が、ついにその残されていた KIX-DPS-CGK // CGK-DPS も KIX-DPS // DPS-KIX となるようです。

Crew の立場からすると、負担が軽減され歓迎される見直しではあるのですが、“子会社JALウェイズによる担当路線の拡大で、コスト競争力の確保を目指しており、直行便化する関西空港~デンパサール便や既存の成田空港~デンパサール便の一部でもJALウェイズによる運航に向けて政府認可を申請している”が、ジョブ・セキュリティその他で火種にならぬかと案じられます。

【インドネシア】 JAL、関空発着のジャカルタ便を運休[運輸] (NNA) - goo ニュース
日本航空(JAL)グループは7月29日、10月1日以降関西空港とジャカルタを結ぶJL713便とJL714便を運休し、関西空港~デンパサール線を直行便化(JL715便・JL716便)すると発表した。燃油費高騰などの影響を抑制するための収支改善策の一環として、国際線低収益路線の見直しを行ったもの。

同社によると、関西空港~デンパサール~ジャカルタ~関西空港のルートで運航していたJL713便とJL714便がジャカルタへの寄港を取り止めるため、代替便を利用した乗り継ぎが必要となる。大阪伊丹空港から成田空港への乗り継ぎ(JL3002便)や、羽田空港から伊丹空港への乗り継ぎ(JL1513便)、シンガポール経由(JL722便)、デンパサール経由の乗り継ぎなどを案内している。
同社では、子会社JALウェイズによる担当路線の拡大で、コスト競争力の確保を目指しており、直行便化する関西空港~デンパサール便や既存の成田空港~デンパサール便の一部でもJALウェイズによる運航に向けて政府認可を申請している。
なお、成田空港~ジャカルタ便は10月30日以降、JL725便(成田空港~ジャカルタ)の出発時間が従来から10分早まり午前11時15分に、JL726便(ジャカルタ~成田空港)が従来から5分早まり午後10時30分となる。
関西空港~デンパサール便では、昨年12月に国営ガルーダ航空に次ぐ2番目の日本路線参入を果たしたインドネシアのエアーパラダイス国際航空が、5月8日以降運航を休止しており、再開のめどは立っていない。

2005年 8月 1日 (月) 02:00

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ここまでくると、もう「いじめ」?

 四年前のことを持ち出して、民事訴訟を起こしたようです。

“不祥事や航空機のトラブルが続いていることから「警鐘の意味で提訴した」”とありますが、本当にこれ(提訴すること)が、安全に対する警鐘となるのか、甚だ疑問です。
これが、この国の安全意識、危機管理に対する民意なのか、と思うと情けなくなります。

提訴した方々には大変失礼ですが、マスコミのJAL叩きに便乗した単なる「いじめ」としか私には考えられません。この提訴が、航空界の安全性向上と発展につながるとは思えないからです。

“一度ランディング・ギア(着陸脚)を滑走路に接触させたが、管制塔の許可を得ていなかったた”
との件も非常に理解に苦しみます。


以下、“Yahoo!ニュース - 読売新聞 - 「説明なくタッチ・アンド・ゴー」乗客がJALを提訴” より

「説明なくタッチ・アンド・ゴー」乗客がJALを提訴

 日本航空の旅客機が、着陸態勢から急激に離陸する「タッチ・アンド・ゴー」を行って着陸をやり直したにもかかわらず乗客に説明がなく、精神的ショックを受けたとして、水戸市の弁護士と友人の会社役員2人の計3人が、日本航空を相手取り、計600万円の損害賠償を求めて水戸地裁に提訴した。

 訴状などによると、弁護士らは2001年4月27日、成田発の韓国・釜山行き日本航空957便に搭乗。釜山の金海国際空港に着陸する際、機長は一度ランディング・ギア(着陸脚)を滑走路に接触させたが、管制塔の許可を得ていなかったため、タッチ・アンド・ゴーを行い、上空で転回して着陸したとしている。

 弁護士らは帰国直後、訴状を準備したまま提訴を見合わせていたが、同社で不祥事や航空機のトラブルが続いていることから今月8日、「警鐘の意味で提訴した」という。

 同社広報部は「タッチ・アンド・ゴーの記録が残っているかどうかについては答えられない。その他についても訴状が届いたばかりで、コメントできない」としている。

(読売新聞) - 7月27日14時50分更新
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判断の難しさ

 出発前に二系統ある与圧システムの一系統に問題があると判っていて何故出発させたのでしょうか。

勿論、AOM: Aircraft Operation Manual (運航規定)で定める MEL(航空機が故障し予定時間内に修理完了できない場合、出発可否を決定するための準拠が記載されている)に則しての判断だったのでしょうから、規則上は運航上の問題はなかったのでしょう。

ただ、安全運航に全ての責任を持つ機長の(特に危機管理の観点からの)意見に影響を与える外的要因が無かったのか、少々気になる事例ではあります。

与圧システムは高空を飛ぶ現代の旅客機においては非常に重要なシステムです。その一系統が最初から INOP (作動しない状態)であれば、バックアップシステムがない状態で運航を開始する訳で、リスクはそれだけ増加しています。

羽田から徳島までは1時間弱の飛行時間であり、その程度ならば大丈夫との考えもあったのかもしれませんが、当該便は巡航高度 FL280 (約8400メートル)かそれより高い高度を file して出発していたようです。
その要因としては、当日の気象状況も関連していて、当時の FBJP 国内悪天予想図によると、紀伊半島から潮岬沖にかけて雲中悪天域が広がっており、 ISOLATED CB (孤立した積乱雲)、並の乱気流、FL160 ~ FL260 にかけて並の着氷も予想されていました。
よって、ちょうど航路上に存在するその悪天域を避けるため、on top (雲の上を飛行する状態)となる高度選択は妥当ではあるのですが、当該便は「与圧システム」が一系統不作動なのですから、高度を上げれば上げるほど、万一生きている「与圧システム」にトラブルが生じてしまった場合に Emergency Descend (緊急降下)する場合の高度差が大きくなり、より大きな降下率が必要になります。

当該便の機長は、「与圧システム」が一系統しか作動していない点には飛行中ずっと注意を払っていたようです。よって、降下開始した後に残っていた一系統の「与圧システム」に異変の兆しが見られた際に、躊躇することなく Oxygen Mask を Manual Deploy させ、Declare Emergency をかけたのでしょう。
※A300-600R は2名乗務ですが、「与圧システム」に関する情報は Cabin Altitude (客室内高度)値が表示されています。きっと降下を開始したにも関わらず、Cabin Altitude が上昇傾向になったのでしょう。

Cabin Decompression (客室与圧急減圧)が起こったのでは無いようですし、「与圧システム」の異常をいち早く発見し、適切な処置を施した機長の対応は妥当であったと言えるでしょう。

ただし、MELは満たしていたとしても「与圧」が一系統しか動作していない状態で“飛ぶ”判断をしたのは、このような事態が発生するかもしれないことが事前に考えられるだけに、その判断が妥当だったかどうかは意見の分かれるところでしょう。

当該便は徳島行の最終便であり、相応の予約が入っていたので、空港支店側では何とか(そのまま)運航して欲しいと考えていた筈です。

ただ、安全性を最優先するなら、Delay Set (出発時刻の遅延設定)して Ship Change (機材変更)するとか、お客様にはご迷惑をかけることになりますが、FLT Cancel (欠航)する選択肢もあった筈です。

夏休みの繁忙期であり、機材繰りに余裕が少ない事情も理解できますが、ひとたびドアが閉まりスポットを離れたら安全運航を全うすることに全責任を負わねばならない機長の判断(意見)に、安全サイドのマージンが少なくなるようなプレッシャーを与えること無いように配慮してもらいたいものです。



8200メートルから緊急降下 日航機 (共同通信) - goo ニュース
 23日午後8時ごろ、羽田発徳島行き日航1439便エアバスA300(乗客186人、乗員9人)の与圧装置がトラブルを起こし、機内の気圧が保てなくなったため高度約8200メートルから緊急降下、約30分後に徳島空港に緊急着陸した。

到着後に乗客3人が耳の痛みを訴えたが、けが人はなく、全員が空港から目的地に向かった。

日航によると、2系統ある同機の与圧装置のうち1系統に不具合があることを出発前に発見。日航は、もう1系統で運航できると判断して午後7時に羽田空港を出発したが、午後8時ごろにこの1系統もトラブルを起こし、機内の気圧を制御できなくなった。

機長は客室内の酸素マスクを降ろした上で、緊急降下。8時半ごろに徳島空港に緊急着陸した。

2005年 7月23日 (土) 23:21

日航エアバス、客室気圧下がり5000m緊急降下 (読売新聞) - goo ニュース
 23日午後8時ごろ、羽田発徳島行きの日本航空1439便(エアバスA300―600、乗員乗客195人)が和歌山県串本沖を飛行中、与圧装置が故障して機内の気圧が保てなくなった。
 同便は高度8200メートルから3000メートルまで約5000メートル緊急降下し、約30分後、徳島空港に着陸した。乗客はこの間、酸素マスクを着用したが、幼児3人が耳の痛みなどを訴えているという。

 日航によると、同便は羽田空港を出発する際、与圧装置が故障。しかし、機長は、2系統ある与圧装置のうち1系統は正常に作動していたため、離陸を決めたという。日航は「機内で急な減圧は発生しなかった」としており、危険な状態にはなかったとしている。

2005年 7月23日 (土) 23:31

8200mから緊急降下 日航機、3人耳の痛み (共同通信) - goo ニュース
 23日午後8時ごろ、羽田発徳島行き日航1439便エアバスA300(乗客186人、乗員9人)の与圧装置がトラブルを起こし、機内の気圧が保てなくなったため高度約8200メートルから約3000メートルまで緊急降下、約30分後に徳島空港に緊急着陸した。

到着後に乗客の子供3人が耳の痛みを訴えたが、けが人はなく、全員が空港から目的地に向かった。

気圧調整のためエンジンを利用して高圧の空気を機内側に取り込む部分に不具合があったとみられる。国土交通省は24日、職員を派遣し、事故につながる恐れのあるトラブル(重大インシデント)にあたるかを調べる。

日航によると、2系統ある与圧装置のうち1系統に不具合があり作動しないことを離陸直前の点検で発見。日航は「もう1系統で運航は可能」と判断して午後7時に羽田空港を出発した。

2005年 7月24日 (日) 01:00

日航機が和歌山上空で急減圧 乗客3人が耳に痛み (朝日新聞) - goo ニュース
 23日午後8時15分ごろ、和歌山県串本町上空を飛行中の羽田発徳島行き日本航空1439便(エアバスA300―600R型、乗客・乗員計195人)の客室内の気圧が下がった。このため、管制上の優先権を得て緊急降下し、同28分に徳島空港に着陸した。客室内の酸素マスクが下り、乗客の子供3人(7歳~5歳)が耳の痛みを訴えたが症状は軽く、診察を受けずに帰宅したという。

 日航によると、同機は離陸直前、客室内の気圧を地上並みに保つ与圧装置2系統のうち、1系統が故障した。同社の運航規定上は1系統が使えれば飛行可能なため、機長はそのまま離陸した。しかし、高度約8200メートルから降下中に残る1系統が壊れたという。

 エンジンから客室内に空気を取り込む与圧装置のバルブの故障が原因で、客室内の気圧が下がったとみて、日航が調べている。酸素マスクは機長が計器の表示をもとに手動で下ろした。

2005年 7月24日 (日) 01:25

与圧装置が故障 日航機緊急着陸 (産経新聞) - goo ニュース
 二十三日午後八時ごろ、羽田発徳島行き日航1439便エアバスA300(乗客百八十六人、乗員九人)の与圧装置がトラブルを起こし、機内の気圧が保てなくなったため高度約八千二百メートルから約三千メートルまで緊急降下、約三十分後に徳島空港に緊急着陸した。

 到着後に子供三人が耳の痛みを訴えたが、けが人はなく、全員が空港から目的地に向かった。

 日航によると、二系統ある同機の与圧装置のうち一系統に不具合があることを出発前に発見。日航は、もう一系統で運航できると判断して午後七時に羽田空港を出発したが、午後八時ごろにこの一系統もトラブルを起こし、機内の気圧を制御できなくなった。

2005年 7月24日 (日) 02:42


7月23日 1439便の運航について - 日本航空のホームページより

弊社便運航につきまして、下記の事例が発生いたしましたのでご報告いたします。ご搭乗のお客さまにご心配とご迷惑をお掛けしたことを心より深くお詫び申し上げると共に、今後とも再発防止に努めて参ります。
<事実関係>
1.発生日時    2005年7月23日  20時03分頃 (日本時間)
2.発生場所    和歌山県串本市上空 27,000フィート(約8,200m)
3.便名       JL1439 羽田-徳島
4.使用航空機  A300-600R(JA8559)
5.運航時刻    羽田空港発 19:31  徳島空港着 20:30
6.搭乗者数    乗客 186名(幼児1名含む) 運航乗務員 2名 客室乗務員 7名
          総搭乗者数 195名
7.事例       当該便は、目的地の徳島空港に向け巡航高度から降下を開始した後、和歌山県
          串本沖の高度約8200m付近で外気を機内に送り込む装置が不作動となり、機内
          の気圧が低下傾向を示したため、機長が管制機関に要請し緊急降下を実施しました。
          当該便は20時28分に徳島空港に着陸しました。                                                    2005/7/24                                           


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乗員を降ろし続ける必用はないでしょう

 このインシデントについては、6月15日の投稿で私見を述べております。

極めて危険な部類のインシデントであった訳ですが、人間誰にでもミスはあります。それを如何にして未然に防止するかを考えるべきであって、当該乗員と関連のメカニックさんを業務から外したところで何の解決にもなりません。

飛行経験と操縦経験とは異なります。今日のパイロットは操縦経験(いわゆる操縦の技量)とともに飛行経験(安全なフライトを全うする総合判断力)も積んで研鑽しなければなりません。

本件、操縦技術的に未熟で再訓練を必要とする類のエラーではありません。飛行経験や危機管理能力が主要因のエラーです。そのような場合、長期間地上に降ろしておいたって得るものは殆んど無いと思います。

別の見方をすれば、当該機長は少なくとも6ヶ月以内には審査(所謂、6 month check )を受け合格しているのですから、その合格した機長に責任を押し付けるということは、6 month check による審査で合格させて Boeing 767 型式限定ライセンスを更新させた国土交通省側も審査が不十分だった、との矛盾が生じませんか。

当該便での Cockpit Crew の対応には確かにもう少し考える余地はあったと思いますが、そのことを責めるのではなく、そのような事態に陥らないように対策を考えるのが会社としての対応だと思います。

それでなくとも(当該乗員は)一ヶ月以上降ろされている訳ですから、飛行感覚が次第に遠ざかっていってしまいます。
会社の考えとしては、航空局から的外れなお達しが来て、それの“ほとぼり”が冷めた頃に、乗員を復帰させるつもりなのでしょう。どうせラインに戻るのだったら、間をあけることに何の意味がありますか。
乗員にだって、再訓練が余計必要になる会社にだって、両者にとって失うものばかりではないですか。

会社、労務、運航乗員部の一部の職制がこのような対応しか出来ていない限り、時をおいてまた類似した事例が起こってしまいますよ。



高度誤認で機長ら12人処分 全日空、社長は減給 (共同通信) - goo ニュース
 全日空機の機長らが高度を誤認し、管制官の指示より1600メートル高く飛行したトラブルで、全日空は21日までに機長(39)をけん責、副操縦士(30)や地上から無線で指示をした整備担当者3人を厳重注意処分とした。山元峯生社長も減給30%、1カ月とし、処分は社長ら役員3人、機長や整備士の上司を含め計12人に上った。

国土交通省からの行政処分がまだ決まっていないため、機長や副操縦士、整備担当者は当面の間業務から外される。

トラブルは6月5日、長崎発羽田行き全日空ボーイング767で発生。離陸直後に機長席と副操縦士席の高度計表示が食い違い、本来は機長側の高度計が正しかったのに、実際には数値が誤っていた副操縦士側の高度計データに切り替えた。

表示は管制官の指示通り8800メートルとなったが、実際は1万400メートルを約40分間飛行し続けた。

2005年 7月21日 (木) 16:54
高度誤り飛行、全日空機長をけん責…社長らも報酬減額 (読売新聞) - goo ニュース
 全日空の旅客機が今年6月、高度計が誤表示したまま運航し、管制官の指示より1600メートル高い高度を飛行していた問題で、同社は21日、当該機の機長(39)をけん責とする社内処分を発表した。
 副操縦士(30)らミスにかかわっていた計8人についても、各所属長からの厳重注意とした。全日空では行政処分が決まるまでの間、機長と副操縦士に対する乗務停止措置を続けるとしている。

 この運航ミスを受け、山元峯生社長は7月の役員報酬を30%減額。整備本部長の大前傑副社長と、運航本部長の森本光雄常務も、それぞれ同月の役員報酬を20%カットした。

2005年 7月21日 (木) 20:51
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無駄遣いはいけません

 それほどまでして RJAA の「AA」を守りたいものなのでしょうか?

もはや今でも運用上の種々の問題が露呈し、今後、改善・解決するとも思えません。まして、アジアのハブ空港を狙ったとしても、それは滑稽というもの。

北側国土交通大臣が在任中に何としてでも北側延伸を決めた、では洒落にもなりますまい。

ここはどこでしょう?」でも述べましたが、たった300mの無意味な延伸工事に巨額をつぎ込むのは、無駄遣いでなくして何でありましょうか。

どうやら、長さ300m×幅60mの延伸部分は、アスファルト+グルービングではなくて、お金を敷きつめて作るようです。

ベストケースで平成19年着工で供用開始が平成23年とのこと。ベストケースでですよ。
6~7年後に使い勝手の悪いたった2500mの滑走路が出来上がったところで喜ぶのは誰なのでしょう。新たな問題を生み出ておいて、極々一部の人が自己満足に酔いしれるのでしょう。

この国では、政治家や官僚は問題を解決するのが仕事ではなくて、次々と問題を生み出しては無責任に放り投げ、後世を苦しめることをお得意とする人種のようです。



成田滑走路「北延伸」で決着へ 発着枠限界、長期化を回避 (産経新聞) - goo ニュース
 空港会社社長が辞意も

 成田空港の暫定平行滑走路(二千百八十メートル)を二千五百メートルに延伸する問題で、成田国際空港会社の黒野匡彦社長は十五日、東京・霞が関の国土交通省で北側一雄国交相と会談し、用地交渉状況について「地権者との合意に自信がもてず、(当初計画と異なる)北側に滑走路を延ばすことを採用したい」と報告した。これを受けて北側国交相は今月中にも「北延伸」を正式決定する考えを表明、滑走路延伸問題は決着することになった。

 国交省は週明けに千葉県など地元自治体や関係者に北側延伸に向けた手続きを説明して、協力を求める。北側国交相は「(問題を)長引かせるわけにはいかない」と語り、「北延伸」を正式決定し、空港会社に伝える意向を示した。

 これに対し、会見した黒野社長は「進退問題を含めて悩んでいる」と述べ、辞任する可能性を示唆した。

 成田の暫定平行滑走路は計画に比べ三百二十メートル短い長さで開業したため、発着回数が制限されている。国交省は増大する国際線需要への対応が急務として南側への延伸を計画していたが、地権者との交渉が暗礁に乗り上げていた。

 北側延伸が決定されれば十九年に着工、二十三年の供用開始が見込まれる。ただ、工期や工事費が当初計画の約二倍に膨らむほか、騒音対策などの課題も浮上しそうだ。

2005年 7月16日 (土) 03:02

成田「北延伸」で決着、国交相が表明…月内に実施指示 (読売新聞) - goo ニュース
 成田空港の暫定平行滑走路(2180メートル)をジャンボ機など大型機の発着が可能な2500メートルに延ばす問題で、北側国土交通相は15日、本来計画とは逆の北に延伸する方針を正式に表明した。
 今後、千葉県や成田市など関係自治体、空港周辺の住民に説明したうえで、月内に成田国際空港会社に北延伸実施を指示する。

 成田国際空港会社の黒野匡彦社長が同日、国交省を訪れ、滑走路南側の未買収地(計3・1ヘクタール)取得の見通しが立たないことを報告。南延伸を断念し、北に延伸したいと申し出た。北側国交相は会談後、「来週にも地元の知事や首長らに協力をお願いしたい」と述べた。未買収地が残ることについては「国として(地権者との)用地交渉を指示することはないが、空港会社は交渉を続けると思う」と述べた。国交省は北延伸の理由として〈1〉増え続ける航空需要に対応するため、大型機の就航を可能にする必要がある〈2〉各航空会社からも早期2500メートル化の要請が強い――などを挙げている。

 北延伸にあたって、誘導灯などが設置されている保安用地約10ヘクタールなどを活用、誘導路も改修・新設する方針。完成までに約6年かかり、本来計画では約190億円とされた事業費は約330億円に膨らむという。

2005年 7月15日 (金) 21:03

成田空港B滑走路「北に延伸」 空港社長が国交相に報告 (朝日新聞) - goo ニュース
 成田空港(千葉県成田市)の暫定B滑走路(2180メートル)の延伸問題で、成田国際空港会社(NAA)の黒野匡彦社長は15日、北側国土交通相に会い、滑走路南側の反対派地権者らとの用地買収交渉に見通しが立たないとして、「本来計画とは逆に北側に延伸して2500メートル化する案を採用したい」との考えを伝えた。北側国交相は、千葉県や地元自治体の同意を得た上で、早ければ月内に北延伸を正式決定する。

 平行滑走路はジャンボ機が離着陸できる2500メートルの計画で、86年に工事を開始。だが、予定地内に土地を持つ地権者らの同意が得られず、約300メートル短いまま02年4月に暫定的に使用が始まった。

 計画通りの長さを確保する必要があるとして、北側国交相は今年1月、NAAにすでに用地買収を終えている土地を利用した北側への延伸検討を初めて指示。一方で、南延伸の進展を期待し、交渉期限を延ばしてきた。

 しかし、15日、「我が国の基幹的な国際空港としての成田への乗り入れ要求は強く、これ以上は決断を長引かせられない」と話し、黒野社長の決断を受け入れる考えを示した。その上で、「地元の知事や周辺自治体の首長らに北延伸への協力をお願いし、今月中にも結論を出したい」とした。

 本格的に北側への延伸の手続きを進めるには、事業計画の策定や公聴会の開催などが、あらためて必要になる。

 ただ、北延伸は工期は6年、事業費は約330億円といずれも南延伸の約2倍かかるとされる。旅客ターミナルから遠ざかることで今以上に発着便に遅延が生じる恐れがあるうえ、反対派の住宅の上空40メートルをジャンボ機が飛ぶ。

 このため、地元自治体には本来計画での建設を目指した交渉継続や、保安用地としての取得の必要性を指摘する声がある。北側国交相も15日、「地権者との交渉窓口を閉じるわけではない」と説明した。

 黒野社長はこの日、2500メートルの滑走路ができた場合、成田空港全体の年間発着回数について、2万回増やした22万回を目指すとの考えを示した。

 〈成田空港の滑走路〉 もともと4000メートルのA滑走路と、平行する2500メートルのB滑走路の整備が定められていた。しかし、立ち退きを求められた農民らが強く反発したため、78年にA滑走路1本だけで開港した。その後、多くの地権者は移転を受け入れ、約670ヘクタールの買収予定地のうち、現在、約4.1ヘクタールが未買収。B滑走路用地内では約3.1ヘクタール。暫定B滑走路は、サッカーW杯の開催を前に供用開始した。

2005年 7月16日 (土) 00:49
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化粧室内での火気は規則により禁じられています(怒)

 当該便を運航していた日本航空ジャパンは、もっと毅然とした態度をとっても良かったのではないでしょうか。
「たら・れば」になってしまいますが、当該便機長は会社のイメージ云々ではなく、航空界全体の安全を脅かすものとして毅然とした態度で事の対応にあたって欲しかったです。

このところ何かあると鬼の首をとったかのように騒ぎ立てるマスコミ連中(特に某社)も、『乗客らにケガはなかった』『大阪府警などが原因を調べている』などと、卑屈な読み方をすれば、日本航空ジャパン側に非が無さそうなので、これ以上騒いでも無駄か、とも読み取れる書き方です。

goo ニュースから3社の報道を引用しましたが、3社とも微妙に異なっています。

『ティッシュペーパーの燃えかすがあった』と言及しているのは、共同通信と読売新聞。朝日新聞は、乗客が人為的やったかもしれないと臭わせるこの件については一切触れず…。
共同通信が『日航によると』だけなのに対し、読売新聞は『国土交通省大阪空港事務所などによると』と国交省が確認したとなっています。

高度にも食い違いが。読売新聞は『愛知県知多半島上空約4300メートル』(注:FL140: 14000feet )としているのに対し、朝日新聞は『愛知県上空を飛行中;高度約8000メートルを降下中だった』(注:FL260: 26000feet )と記して、朝日新聞はその件に関しては『日航や国土交通省などによると』とクレジットを入れています。

読売新聞の『同機は約15分後、同空港に着陸し』と当時の推定飛行高度 FL140 は通常運航の場合理にかなっています。
“巡航高度 FL260 からの降下中、FL140 で客室乗務員が発見消火、約15分後に着陸”というのが自然に思えます。コックピットは 10000feet 通過で客室乗務員に連絡を入れますが、それに先立っての化粧室内チェックをしたところ発見したというのも違和感はありません。

さて、化粧室内での喫煙を含めた火気使用は厳禁であり違反した場合は航空法により処罰の対象であることはご存知でしょうか。

そのような事実が発覚したのなら、当該便の機長は管制(あるいは社内無線)を通じ状況を報告し、伊丹に到着、ドアが開いた時点で空港警察署が乗客の降機を阻止し乗客全てを取調べ犯人拘束まで乗客は一切外に出さない、等の強硬手段をとっても良かったのではないでしょうか。

出発時ドアが閉まってから、到着してドアが開くまで、機長には安全運航を全うするために絶対的な権限が与えられており、被疑者・犯人を拘束する権利もあります。が、その絶対的な権力も、到着してドアが開いた瞬間に権力を失います。したがって、ドアが開いた直後からは警察に任せなければなりません。

異常運航(乱気流とかコックピットから煙が上がったなど)があった際には、ドア・オープンと共に一目散に機内に入り込み、運航乗務員からの事情聴取を得意中の得意技としている警察が、何でこのような事態では、何の疑いもなく乗客を降ろしてしまいますかねぇ。

断定は出来ませんが、本件、電気系統等によるメカニカル・トラブルによる出火ではなく、人為的な放火の可能性が高いと思います。

ここで航空会社が毅然とした態度をとらないと、愚か者が「愉快犯」的に繰り返す可能性があります。これは全ての航空会社にとっての脅威です。

仮に、人為的放火であった場合、それを行なった愚か者は「日本航空グループなら、マスコミが航空機のトラブルとして取り上げてくれるだろう」といった軽々しい気持ちと、他の112名の命を軽んじた断じて許すことができない考えがあったのかも知れません。

先日、修学旅行の高校生が機内から救命胴衣を持ち出す、という事件があったときも、マスコミは救命胴衣を持ち出した高校生の違法行為には論点をあてることなく、救命胴衣が持ち出されたことを気付かずに数日間運航した航空会社の運航管理体制を責め立てていました。

マスコミが執拗なまでに騒ぎ立てて歪んだ世論形成を行なってきたつけが、新たな脅威を生んでしまいました。マスコミは、年初来の自社の報道姿勢を大いに反省すべきです。

最後になりましたが、保安要員としてその職務を遂行し、大事に至ることを防ぎ、機内の統率を維持した当該便の客室乗務員に賛辞を贈りたいと思います。
立派です。



日航機のトイレで煙 秋田発大阪行き、無事着陸 (共同通信) - goo ニュース
 13日午後7時すぎ、大阪空港に向け飛行中の秋田発日航2178便MD87の後方トイレから白煙が上がり、客室乗務員が消火器で消した。
同機は飛行を続け午後7時半に大阪空港に着陸。乗客乗員113人にけがはなかった。

日航によると、トイレにティッシュペーパーの燃えかすがあった。同社と兵庫県警伊丹署が詳しい原因を調べている。

2005年 7月13日 (水) 22:18


日航機でボヤ、乗客ら113人は無事…秋田発大阪行き (読売新聞) - goo ニュース
 13日午後7時15分ごろ、愛知県知多半島上空約4300メートルを飛行中の秋田空港発大阪空港行き日本航空2178便MD87型機内で、最後部のトイレのゴミ箱から煙が出ているのを、巡回中の客室乗務員が見つけ、消火器で消し止めた。同機は約15分後、同空港に着陸し、乗員、乗客計113人も無事だった。

 国土交通省大阪空港事務所などによると、ゴミ箱にはティッシュペーパーの燃えかすがあったが、たばこの吸い殻などはなく、日本航空で原因を調べている。

2005年 7月14日 (木) 00:09


日航機トイレのゴミ箱から煙 愛知上空で、けが人なし (朝日新聞) - goo ニュース
 13日午後7時15分ごろ、愛知県上空を飛行中の秋田発大阪行き日本航空2178便(MD87型、乗客・乗員計113人)で、機体後部右側のトイレに入った客室乗務員が、ゴミ箱から焦げくさいにおいがするのに気づいた。ゴミ箱のふたを開けたところ、中から煙が立ち上ったため、客室乗務員が消火器などを使って消火した。同便は同32分に大阪空港に着陸。乗客らにケガはなかった。大阪府警などが原因を調べている。
 日航や国土交通省などによると、同便は当時、高度約8000メートルを降下中だった。

2005年 7月14日 (木) 01:10
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ここはどこでしょう?

さて、このタイトル画像はある空港のとある滑走路に天気・視界共に良好な状況下、進入時に見える光景です。
( AIRPORT FAMILIARIZATION:空港慣熟と言って、未だ飛んで行ったことのない空港の場合、パイロットの皆さんはこのような教材でお勉強をします)

滑走路の接地帯から反対側の接地帯が見えて、心なしか滑走路終端も近くに見えます。セスナのような小型機ならまだしも、Boeing767, 777, Airbus 320 で着陸するとなると、接地したら Full Reverse (最大逆噴射)、Auto Brake (自動ブレーキ)も最大で減速しないと、オーバーランして滑走路を飛び出してしまいそうですね。
かと言って、これから夏場で暑くなると、ディスク・ブレーキやタイヤの温度にも気を配らないと、温度が急激に上がり、タイヤ・バースト、出火となる可能性もあります。従って、速度やブレーキ温度にも気を配り、ある程度の減速効果が得られたらブレーキペダルを踏み込んで Auto Brake を解除しなければなりません。

大型機が着陸するとなると、パイロットには相当の技量が求められ、パイロットの心拍数も極限にまで上がりそうです。

調布飛行場かな?それにしては滑走路の幅だけは生意気にそこそこあるように見えますねぇ。

【正解】これが、成田空港のB滑走路 Runway 16L (北側から南へ向けて着陸する方向)です。

用地買収が難航しているから「北側に延長する」(写真でいうと手前側にたった300m)かもしれない滑走路であります。

某社のオペレーションセンターに査察と称して偉そうに入り込み、頓珍漢なことを言って威張っていた航空局の局長殿も、地権者の前では何で偉そうに出来ないのでしょうねぇ。不思議です。

他のブログでも指摘されていますが、今の状態で北に僅か300m伸張したところで、箪笥の肥しにもなりません。

成田空港の Airport Diagram は以下のようなものですが、

NARITA_INTL_20_9


そこには、B滑走路に関する注意・制限事項が記載されています。画像では読みにくいと思いますので、一部を転記しておきます(太字、下線は小生による)。

B-747s are not permitted to use Rwy 16L/34R.

As a general rule, propeller driven airplanes are required to use Rwy 16L/34R.

On B-Twy between E2-GWY and B7-Twy;
-Acft with a wing span of 194' (59m) or more reduce taxiing speed adequately so that it can follow the center line accurately as the wingtip clearance will become less than 49' (15m).
-B777-300 must exercise caution when taxiing on the curved portion of the twy because the clearance between the main landing gear and the edge of the twy will become less than 15'(4.5m) when the nose gear follows the centerline.

この夏休みに成田空港から海外にお出掛けになる方で、近距離国際線をご利用になる皆様、B滑走路利用にあたって極度の緊張を強いられる運航乗務員・客室乗務員の方々のご苦労に感謝しましょう。



成田空港 暫定滑走路、北延伸へ 国交省、用地交渉不調 計画の反対側 (産経新聞) - goo ニュース
 成田空港の暫定平行滑走路(二千百八十メートル)を二千五百メートルに延伸する問題で、国土交通省の岩崎貞二航空局長は十一日、用地売却の意思を最終確認するため、成田市東峰の建設予定地の最大地権者(58)宅を訪問した。同日、千葉県の堂本暁子知事と成田市の小林攻市長も最大地権者に直接協力を要請した。だが、いずれも会談は不調に終わった。国交省はこのため、今週中にも滑走路を本来計画とは反対側となる北側に約三百メートル延伸して建設する「北延伸」の決断を下す見込みだ。

 成田空港には現在、A滑走路(四千メートル)と、建設予定地内にある七戸の反対派農家などの土地が買収できないため、計画より三百二十メートル短い長さで平成十四年四月に暫定開業したB滑走路がある。国交省は増大する国際線需要などへの対応が急務として、B滑走路の延伸を急いできたが、地権者との合意には至らないまま交渉は事実上、棚上げ状態だった。

 岩崎局長は十日に続いて、十一日も同地区の各地権者宅を戸別に訪問。未買収地約三・八ヘクタールのうち約一・六ヘクタールを所有する最大地権者とは約一時間半にわたって会談し、本来計画での滑走路延伸を求める北側一雄国交相の意向を伝え、改めて協力を要請した。堂本知事や小林市長も延伸計画への協力を要請した。

 しかし地権者側は、「用地交渉には応じられないし、北側延伸も容認できない」「まだ空港会社との話し合いを進めている。今の段階では協力できない」などと計画反対を表明し、結局、合意には至らなかった。会見した岩崎局長は「皆さん、厳しい意見だった」と肩を落とした。

 国交省は、今週後半に成田国際空港会社の黒野匡彦社長から用地交渉の報告を受けたうえで際立った進展がなければ、計画とは反対側の「北延伸」を決断、空港会社に指示する見通しだ。

 本来計画とは逆の北側方向への延伸が決まった場合は、早ければ十九年に着工、二十三年には供用開始が見込まれている。

 ただ、工期(約六年)、工事費(約四百億円)ともそれぞれ本来計画の約二倍に膨らむ。このため、供用開始までには運用上の安全性確保の問題やコスト削減などの論議も出そうだ。
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自動着陸への道-運用編

PAXによる、なんとも大雑把な航空教室の続編です。

「自動着陸-だれでも出来るとは限らない」のモチベーションは、成田空港で早朝によく発生する放射霧の中をオートパイロットで見事に降りた、との話題でした。

ここまでは、悪天候下で自動着陸が許されるかどうかは、“運航に供される機材とそれを運航する乗務員の資格が必要である”ことを中心に述べてきました。

今回は、
 -CAT III を実施するための運用面について
 -自動着陸を実施するに当たっての飛行機側の運用制限について
を説明します〔もうぼろが出てるので今回でおしまいの予定です〕。

実は、CAT III の「自動着陸」で一番忘れてならないのは、地上の支援体制です。

【 SSP: Special Safeguard and Procedures 】とは、CAT II, CAT III 運航を可能にする必要条件が整っている体制のことをいいます。

必要条件とは;

 ☆航空保安施設(計器着陸装置 ILS の LOCALIZER, GLIDE SLOPE, MARKER BEACON )
 (※ILS LOCALIZER のアンテナは着陸滑走路の末端にあり、GLIDE SLOPE のアンテナは着陸滑走路接地帯付近の横にあります。MARKER BEACON には、滑走路から遠い順に OM: Outer Marker, MM: Middle Marker, IM: Inner Marker の3種類ありますが、滑走路によっては OM が設置されていない場合もあります;成田 RJAA の Runway 16R には MM, IM しかありません。)

 ☆航空灯火施設(進入経路、滑走路の灯火類)
 (※滑走路の輪郭・中心線を示す灯火、滑走路末端・終端を示す灯火、接地帯を示す灯火、誘導路輪郭・中心線を示す灯火、停止線灯、および進入灯などがあります。釧路空港の霧対策・航空視覚援助装置のページが、実際のイメージが湧きやすいかもしれません。参考までに、Jeppesen 社の Airway Manual に掲載されている進入路灯の図も↓に掲載しておきます;いささか古いですが....)

 ☆RVR機器(滑走路視程距離測定装置)
 (※RVRとは、滑走路中心線上にある航空機のパイロットが滑走路面の標識、滑走路の輪郭または中心線を示す灯火を見ることができる最大距離のことで、パイロットの目線位置としては滑走路面上5mを想定しています。我が国では、滑走路面から2.5mの高さで観測を行なっており、観測機器の方式としては、透過率方式と前方散乱方式とがあります。)

 が CAT II, CAT III 運航に供することができる状態にあること。
 かつ

 ☆ILS制限区域が確保されている
 (※前回も記しましたが、ILSの電波は指向性が強く高精度です。その精度を確保するためには精度を落とす要因となる撹乱(かくらん)を徹底的に防がねばなりません。そこで、ILSの電波が地上で撹乱されないように、ILS制限区域( ILS Sensitive Area とも言います)を設け、その中に撹乱の原因となる、他の航空機は言うまでも無く空港管理用の車両、人をも進入させないようにします。)

ことを言います。

JEPPESEN_INTRO_121

JEPPESEN_INTRO_122




「自動着陸」を行なう航空機側にも運用制限があります。

つまり、いくら“運航に供される機材とそれを運航する乗務員の資格”が共に要件を満たしていたとしても、暴風雨で風が荒れ狂うような悪天下では、地上支援側が完璧であっても、気象状況が航空機毎に決められている「自動着陸の運用制限」を超えているようならば進入は出来ない、ということです。

この航空機機種毎の「運用制限」は、航空機の製造メーカがマニュアルで定める値が先ずあり、さらにその航空機を運航する航空会社が独自の安全基準をもうけ、メーカが発表している値よりも厳しくしている場合もあります。

一例として、Boeing777 で「自動着陸」を実施できる気象上(風)の運用制限は;

 Head Wind (真正面からの風の成分): 25 kt (風速約12m)
 Cross Wind (横風成分): 25 kt (風速約12m)
 Tail Wind (真後ろからの追風成分): 15 kt (風速約7m)

となっています。

風の他には、
 -Flap は 20°か30°の何れかを選択すること
 -Glide Slope の降下角度は 2.5°~ 3.25°の範囲であること
などが、要件として求められています。

さらには航空機の「自動着陸装置」そのものが正常に作動していることも当然のことながら“航空機側の運用制限”となります。

ここでも Boeing777 を例にとりますが、奴さんはハイテク機ですから EICAS: Engine Indication and Crew Alerting System というLCDパネル上にどのような不具合が発生したかが EICAS MESSAGE として表示されるようになっています。

(下の写真のように、通常のオペレーションでは、EICAS は2名のパイロットの間に表示させます)

777_Display_Selection


例えば、「自動着陸」すべく進入中に
 NO AUTOLAND と表示され Beeper が鳴った場合には、「自動着陸装置」に故障が発生したので自動着陸は使用できない、
ということです。また、
 NO LAND3 と表示され Beeper がなった場合には、3系統の冗長性が損なわれた(例えば、1系統が他の2系統と違う状態に陥る)
ことを示します。

これらの(他にも幾つかあります)メッセージが表示された場合は、飛行状況下と表示されたメッセージに応じた適切な対応が求められます。



【本日のまとめ】

「自動着陸」を実施するためには、“運航に供される機材とそれを運航する乗務員の資格が必要である”ことに加え、

 ☆地上側が、SSP: Special Safeguard and Procedure 体制を確保していること
 ☆風の Head Wind, Cross Wind, Tail Wind 成分が当該航空機の運用制限範囲内であること
 ☆当該航空機が「自動着陸」を行なうための Configuration がとられていること
 ☆当該航空機の「自動着陸装置」が正常に動作しており、不適切な EICAS MESSAGE が表示されていないこと

の運用条件をも満たしていなければなりません。

PAXの大雑把「自動着陸」航空教室 は今回で終了(無事?着陸)です。
4回にもわたり拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。


機会あるいはリクエストがあれば「特番」を組むかもしれません。


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自動着陸への道-パイロット編

PAXによる、極めて大雑把な航空教室が続きます。

前回の大雑把教室では、悪天候下で自動着陸が許される条件のうちの“運航に供される機材”を題材にして「自動着陸」について少しだけ詳しく説明をしました。

今回は、悪天候下で自動着陸におけるもう一つの条件となる“運航にあたる乗務員の資格”に関する説明です。

これは、端的に言ってしまえば“機長の資格”となります。

エアラインの機長までの道のりは長く険しく、その上、めでたく航空局と社内の両方の審査に合格、機長として発令後も、半年毎の技量審査と第一種航空身体検査に合格し続けなければ、機長として乗務ができません。

さて、本題の ILS CAT III で「自動着陸」を実施できる“機長としての資格”ですが、最近の規制緩和の一環なのか、機長飛行時間300時間になれば CAT III の資格取得にチャレンジ出来るようになりました。
ざっと計算すると、機長の乗務時間の上限は確か月間80時間(それ以上は飛びたくても飛べない)だったと思いますから、上限ギリギリ飛びまくったとして、最短で約4ヶ月。
普通はそこ(上限ギリギリ)まで乗務しないでしょうから、機長に昇格してから半年~1年後になるでしょう。

実際の資格取得に際してどのような訓練が必要なのかは、PAXである私にはその詳細がわかりません。申し訳ありません。

これは想像の域を出ませんが、多分、
 -「自動着陸」システムに関する座学とそれに対応する筆記または口頭試問
 -SIM: Simulator による訓練と審査
 -実機における「自動着陸」経験(勿論、CAT IIIではない気象条件下で回数を積む)
といったところだと思います。

航空機の性能と信頼性が向上し、地上航法支援施設の整備とも相まって CAT III の「自動着陸」が可能にはなりましたが、「自動着陸装置」も機械である以上、絶対に故障しないとは限りません。

「自動着陸装置」が何らかの変調をきたした場合には、躊躇することなく「自動操縦」を Take Over (自動操縦を解除しパイロットが操縦)する必要があります。

ILS CAT III の気象条件下では、「自動着陸」による接地の瞬間まで滑走路は見えませんから、「自動着陸装置のメッセージがおかしい」「機体の動きが変だ」ということになれば、即座に Take Over して Go Around (着陸復航)することになります。

万一の場合には“いつでも取って代われるぞ”という心構えと、そうなったときの操作は、CAT I よりも CAT II、CAT II よりも CAT III の方が時間的余裕が少なくクリティカルであり、より高度な技量が求められるのです。

CAT I の気象条件下で「自動着陸」を実施している場合では、地上から60mの地点まで降りれば雲の下に出る訳ですし、視程・滑走路視程距離も相応に遠くまで見えているので、Take Over しても Visual Reference を見つつパイロットがそのまま安全に接地操作を行なえる可能性もあります。
一方、CAT III の気象条件下での Take Over では、「おかしい」と感じたら即 Go Around (着陸復航)となるでしょう。

ともすると、『経験が乏しいパイロットを助けるのが「自動着陸」だ』と考えてしまいがちですが、全天候下で「自動着陸」を行なえるのは、逆に機長としての経験を積み、対応する訓練を受け資格を有するパイロットだけなのです。



ちなみに、「自動着陸装置」が変調をきたす機上の原因として最も有力視されているのが、人工的な電波による“計器着陸装置の誘導電波”の撹乱(かくらん)や操縦制御信号系統へのノイズ混入です。
ぶちあけた話、携帯電話の電源が入っていたり(地上が近いので、携帯電話くんも盛んに地上基地局を拾おう=圏外からアンテナ3本立てようと、質問電波を発射するのです)、電波を発する電子機器の電源が入っていたりが危険因子となるのです。

“計器着陸装置の誘導電波”は精度が高い(飛行機を自動でぴたりと接地点にまで誘導する程ですから…)と共に非常に敏感でもあるのです。

『離着陸時は全ての電子機器の電源を~;機内では電波を発する機器は常に~』の理由がここにもあるという訳です。



さて、話題が少しそれますが、航空局と会社の審査に合格して、はれて機長の辞令を手にしても、いきなり困難な気象条件下で機長としての乗務はできません。CAT III 取得資格の要件が「機長飛行時間300時間」と述べましたが、それ以前に「機長飛行時間100時間」の要件を満たした段階で CAT I の資格をとる必要があります。
CAT I, CAT II, CAT III と順を追ってそれぞれの資格を取得することになります。

ちなみに、CAT I の資格を有していないと、雲低高度が 200feet (約60m)かつ滑走路視程距離が600mよりも良好な気象条件下でないと、着陸進入を開始することすら出来ません。

機長の辞令をもらい、機長としての初フライトが始まった瞬間から、より質の良い安全で快適な運航へ向けての新たな試練が始まるといっても良いでしょう。

777_Final_to_VHHH


※最低気象条件 Weather Minimum は飛行場、滑走路によって異なる場合があります。(実際、地上の一時的な障害物(クレーンなどの建設機材)に起因して Weather Minimum が変更された旨のチャート差替えが多くて....毎週大変です)

AIP_SUPPLEMENT_151_2005_KIX




今回は肝要な資格取得への訓練内容についてわからないので「まとめ」は無しです。

【本日の余談】
「機長飛行時間300時間」の要件を満たせば、CAT III (キャット・スリーと発音します)の資格取得へチャレンジ出来るのだから、ベテランの機長は皆 CAT III の資格を持っているのだろうと言うと、そうとは限りません。
例えば、どう頑張ったところで、在来型ジャンボのキャプテンは、航空機の制限によりCAT III運航が許されません。よって、CAT III の資格を持っていても、何の役にも立ちません。
俺は定年までずっと在来型ジャンボでゆくから「そんな資格要らんよ」というベテランの機長もいる訳です。

CAT_image


....回を重ねる度に内容希薄になっておりますが懲りずに次回[最終回-運用編]へと続く(予定)
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自動着陸への道-航空機編

PAXによる、極めて大雑把な航空教室の続編です。

前回、悪天候下で自動着陸が許されるかどうかは、“運航に供される機材とそれを運航する乗務員の資格が必要である”ことを述べました。

今回はその補足説明です。

そもそも「自動着陸」とは何なのかを、“飛行機が自動的に着陸すること”よりはもう少し詳しく説明しましょう。

自動着陸を行なうのに不可欠な機上の航法装置およびシステムとしては;

 ☆計器着陸装置 ILS: Instrument Landing System
 (※地上施設から発射される指向性電波を受信し、滑走路への進入コース・進入角度を指示する装置)
 ☆自動操縦装置:オートパイロット・システム
 (※飛行状態を計器で把握し、自機の姿勢変化に応じコンピュータにより操縦装置を操作し、安定した姿勢で一定方向に飛行させる;現在のオートパイロット・システムは航法装置と結合させることで、所定の方向に飛行を継続させることができる;Boeing767, Airbus A310 以降はフライト・マネージメント・システム FMS: Flight Management System とも結合させ、より緻密な自動制御を行なうことができる)
 ☆オート・スロットル・システム
 (※自動的に推力調整を行なう;機種により若干の差異はあるが、幾つかのモードを選択して推力を調整する-離陸・着陸復航モード,速度指定モード,上昇・降下率指定モードなど;FMSを搭載している機種は、FMSと結合した推力調節が行なわれる)
 ☆電波高度計
 (※地表に向かって電波を発射し、その反射波が戻ってくるまでの時間を測定して高度を測る高度計。自機と地形との間の垂直距離(=絶対高度)を指示する)

が挙げられます。「自動着陸」では、これらの装置・システムが密接に連動して着陸操作を行います。

本来、“着陸”という操作は“進入”の継続であり、計器着陸装置と自動操縦装置による「自動進入」は Boeing767 以降であれば、着陸決心高度( ILS CAT I の決心高度は、フルスペックで滑走路高+ 200feet (約60m)です)まで行なうことができます。

つまり、Boeing767 以降の機材であれば航空機の性能としては、地上約60mまではオートパイロットで進入してくることが可能です。

それ以前の機種では、オートパイロットの性能により使用制限が加わっており、例えば Boeing 747 在来型の場合、通常は離陸後高度約 10,000feet (約3000m)以上でオートパイロットを入れ、約 3,000feet (約900m)まで降下したらオートパイロットを切る( Disengage する)ような運用となります。

*Boeing767 や Boeing777 の場合、オートパイロットは離陸後、上昇出力に設定する高度約 1,500feet (約450m)から使う( Engage する)ことが出来、上述したように着陸決心高度まで使用できます。
*オートパイロットを「使用することが出来る」のと「使用する」のは別問題で、PF: Pilot Flying (操縦を担当するパイロット)の性格やその時の気象条件などにより、「いつ“オートパイロット”に入れ、いつ“オートパイロット”を外すか」は、 PF 次第とも言えます。

Boeing777_PFD_FLTDIR_mode



さて、本題である「自動着陸」を行なうには、自動操縦装置を同時に2系統、あるいは3系統カップリングして(つないで)使います。ここが重要なポイントで、システムに冗長性を持たせる訳です。例えば、3系統の自動操縦装置を同時にカップリングして使用した場合には、仮に1系統のシステムにエラーが発生したとしても、残り2系統は正常な値を示していることになります。

Boeing767 には2系統または3系統の自動操縦装置が、Boeing747-400, Boeing777 には3系統の自動操縦装置が搭載されています。

「自動着陸モード」を選択していると、Boeing747-400 や Boeing777 では、計器着陸装置の誘導電波に乗ると、文字通り“自動的に”3系統の自動操縦装置がカップリングされるようになっています。

どのように「自動着陸」操作を行なうかは、機種により若干の差はありますが、概ね次のようになります。
 -計器着陸装置の誘導電波に乗り、適切なコース・降下角(通常3°)で進入を続けてきて、
 -電波高度計が約 50feet (約15m)となった段階で、機首上げ姿勢をとり(これを“フレア”といいます)、
 -さらに電波高度計が約 30feet (約9m)となった段階で、オート・スロットル・システムが推力をアイドルに絞り( IDLE Retard )、
 -ゆっくりとボディギア(主車輪)から接地させます。

風の影響が少ない(悪天候=風の状態が悪い、とは限りません;突風が吹き荒れているときに成田名物早朝放射霧は起こりません)場合には、昨今の「自動着陸」はベテラン・パイロットにも引けをとらない程、実に見事な着陸をやってのけます。

「自動着陸」による着陸時の衝撃は、1.2G 未満と聞いたことがあります(昔のことで、メモに残していなかったので、記憶だけが頼りで正確性に欠けてしまいますが、まぁ妥当な値かと思います)。



【本日のまとめ】

「自動着陸」を実施できる航空機には、
 ☆計器着陸装置 ILS: Instrument Landing System
 ☆自動操縦装置:オートパイロット・システム
 ☆オート・スロットル・システム
 ☆電波高度計
と、これらをカップリングするためのシステムが不可欠である。

中でも、「自動操縦装置:オートパイロット・システム」は2または3系統同時にカップリングして使用できなければならない。

「自動着陸装置」は ILS による進入に続き、
 1)地上約 50feet (約15m)でフレアをかけはじめ、
 2)その後、地上約 30feet (約9m)でスロットルをアイドルにまで絞り、
 3)ゆっくりと滑走路上に接地させる
操作を行なう。

国内の航空会社が使用している機材では、Boeing767, 777, 747-400、Airbus A320, A321 (多分、Boeing737 New Generation, Airbus A300-600R も含まれると思うが確証なし;すみません) は ILS CAT III での「自動着陸」を行なえるポテンシャルを持っている。
が、Boeing747 在来型(多分、DC10, A300B2 も駄目だと思う;ボンバルディアは全く持って勉強不足) は ILS CAT III の天候下では「自動着陸」を行なうことは出来ない。

....めげることなく次回に続く(予定)
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自動着陸-だれでも出来るとは限らない

PAXによる、極めて大雑把な航空教室です。

「昨今の旅客機はオートパイロット(自動操縦)を装備しているし、オートパイロットが着陸も自動でやってくれるのでしょ?」
と多くの方が思っていることでしょう。

実際、成田空港に早朝( curfew の関係で成田空港は午後11時から午前6時までは離着陸が禁止されています)に到着する便では、成田特有の放射霧に悩まされることが少なくありません。そのような気象状況下では、自動着陸により就航率が向上していることは確かです。

それを支えているのが、成田空港に装備されている、より精密な計器進入・着陸を可能とするための地上設備 ILS CAT IIIA (ILS: Instrument Landing System 計器着陸装置 カテゴリー3A)です。この CAT IIIA が“より精度が高く悪天候にも対応している”ことを示しており、普通の ILS とは違うのだぞ、という権威の象徴みないなものです。
※国内では、この CAT IIIA の地上設備を備えているのは、成田空港の他には北海道の釧路空港 RJCK と九州の熊本空港 RJFT と計3空港しかありません。

ILS CAT IIIA の着陸進入の場合、当該滑走路の視程距離 RVR: Runway Visibility Range が200mあれば、最低雲低高度に係わる制限がありません。
つまり、滑走路視程距離さえ規定を上回っていれば「自動着陸」が可能となる地上航法支援施設なのです。

ちなみに、普通の ILS 、ILS CAT I (カテゴリー1)と言います、の場合、滑走路視程距離もより遠くまで見通せることが必要となりますし、計器進入してきても、滑走路標高より+ 200 feet (約60m)の高度まで降りた時点で滑走路を目視できなければ着陸することが許されません。

カテゴリー3とカテゴリー1の中間に位置する精度が ILS CAT II (カテゴリー2)で、CAT I よりは、より低くまで(=滑走路の近くまで)進入できますが、CAT IIIA よりは滑走路視程距離が遠くまで見通せることが必要であり、通常は滑走路標高より+ 100 feet (約30m)の高度まで降りた時点で滑走路を目視できなければ着陸が許されません。

以上が、地上支援航法援助施設、つまりインフラを整備している要素と言えましょう。

成田空港のように、ILS CAT IIIA の設備を有している空港は、それに対応する進入方式 Approach Chart が公示されています。

RJAA_21_2A


ただし、このインフラを利用して「自動着陸」が可能かどうかの最初の関門として、航空機とそれを操縦している運航乗務員の資格が関与してくるのです。

RJAA_21_2A_notice


CAT IIIA の気象条件下、例えば成田空港の早朝の放射霧現象、であって、地上支援側が CAT IIIA の運用を満足する条件であっても、進入着陸する航空機・それを操縦する運航乗務員が対応する資格を有していない場合には、CAT IIIA の進入開始すら出来ません。

同じ時間帯で、同じような気象条件だったのに、○社の便は難なく着陸したのに、×社の便は上空で旋回待機したあげく、羽田空港に Divert (目的地外着陸)して、成田に戻ったら午前10時を過ぎていた;
といった事例も時としてあるのですが、その原因として考えられるのは、○社の便の航空機と運航乗務員は ILS CAT IIIA の資格を満たしていたが、×社のそれは残念ながら ILS CAT IIIA には対応していなかったのかも知れません。



【本日のまとめ】

悪天候下での進入・着陸においては、
 -空港ごとに定められた最低気象条件と地上航法支援施設の精度(運用状況を含む)
 -その便の飛行機および運航乗務員の資格
により、着陸できるかどうかが決まる。

最新鋭機の運航に携わっているパイロットならば、だれでも悪天候下で「自動着陸」を行なえるとは限らない。

....次回に続く(予定)
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最近まともに書いていたら追いつきません

このところ、ちょっとしたインシデントから重大インシデントまで「飛行機に何かあった」というと必ずマスコミさんが取り上げますので、まともに全てを相手していたら追いつきませんね。

No.3 Engine Fire!! Shutdown No.3, Fuel Cut!! Pull No.3 Engine Fire Extinguisher. Declare Emergency, Request return back to New Chitose after Fuel Dump. Engine Fire Checklist!
(第三エンジン出火。第三エンジン停止。燃料供給遮断。第三エンジン消火器オン。緊急事態宣言。燃料投棄後、新千歳空港への帰還を要求。エンジン火災チェックリストを実施せよ)

といった緊迫した会話がコックピットでは交わされていたのではないでしょうか。

他のインシデントのときにも毎度述べていますが、この種のトラブルへの対処方法について、パイロットは半年に一回、チェックを受けて合格していますし、離陸の都度、コックピットの乗員(今回は Boeing747-200 在来型ですから機長・副操縦士・航空機関士の3名)が異常事態が発生した際の対処方法についてブリーフィングを行なっておりますので、表現は適切ではありませんが、エンジン火災への対処が緊迫した中にもテンポ良く進められていった筈です。

燃料投棄についてですが、航空機には最大離陸重量と最大着陸重量が決められており、最大着陸重量を超えて着陸をすることは、着陸装置やその他の強度から原則許されません。
日本の国内線のような長い航続距離を必要とされない航空機においては、最大離陸重量と最大着陸重量が同一なので、上空で燃料投棄をすることは滅多にありませんが、国際線に就航するような航続距離の長い航空機や貨物機のように貨物を出来るだけ積むことで収益を得る航空機の場合には、最大着陸重量は最大離陸重量よりも少ないのが一般的です。

通常の運航においては、最大離陸重量に近い重さで飛び立った航空機も、目的地に到着するまでに相応の燃料を燃やして消費しますから、目的地に着陸する頃には航空機の重さが最大着陸重量よりも軽くなっているのが普通です。

しかし、今回のインシデントは離陸直後に発生しており、航空機の重さが最大着陸重量を上回っていたため、安全に着陸するため、航空機の重量を減らす処置をしました。それが、燃料投棄です。本来ならアンカレッジまでに燃やすはずだった燃料の一部を主翼端に設けられた燃料排出口から投棄し、最大着陸重量を下回るまで捨てたというわけです。

多分、燃料投棄は太平洋上空で行なわれ、投棄された航空燃料(ケロシン:灯油の仲間)は霧状になって蒸発し、海上に降ったことは無いでしょう。

当該乗員の皆さん、他の Traffic Flow にも大きな影響を与えなかったとのことで、ご立派でした。そのために、日々厳しい訓練をしているのですものね。お疲れ様でした。

それにしても“朝日新聞”さん、

『同機は昨年8月にも、香港からハバロフスクに向かう途中で左主翼の第2エンジンで燃料制御装置の異常を示す計器表示があり、成田空港に緊急着陸している』

とは、素晴らしい調査能力でございますこと....。


米国貨物機がエンジン火災、新千歳空港に引き返す (朝日新聞) - goo ニュース

※タイトル写真は第3エンジンの位置を説明するもので、当該インシデントとは関係ありません。
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CRMの問題でしょ

これって、所謂 CRM: Crew Resource Management / Cockpit Resource Management の問題ですよね。青社はCRMトレーニングやLOFT( Line Oriented Flight Training :実際の運航に基づいた飛行訓練)を実施していないのでしょうか?そんなことは考えられません。

結局、マスコミや世間体への体裁を整えるために、Cockpit Crew に原因を押し付けて、
全日空は3日までに、機長ら運航乗務員の意思疎通が不足していたことも原因の一つだったとして、社内に「コミュニケーションプロジェクト」を立ち上げた。
と言っているようにも思えます。

昔のことですが、米国の Cockpit Crew の間では“機長は絶対”“俺のやることに文句があるか”といった、機長への権威集中(ワンマンな機長が多かった)で「物言えぬコックピットの雰囲気」が問題となり、それが原因で悲惨な事故が何件か発生しました。その悪い環境を解決するために提案・開発されたのがCRMの考え方であり、米国の航空会社はそのトレーニング導入を義務付けられました。

その後、CRMはコックピットだけの問題ではない、とのことで「クルー・リソース・マネージメント」と呼び名が変わり、客室乗務員も含めたクルー全体の訓練手法として世界的に取り入れられるようになりました。

日本でも当然導入され、各社実施している筈です。

今の日本で3名(機長・副操縦士・航空機関士)で飛ばしているのは、全日空では在来型の Boeing747 しかありません〔日本航空グループでは、在来型の Boeing747 に加え、DC-10, A300B2(B4)〕。他の機種は全て2名(機長・副操縦士)運航です。
2 men crew cockpit でCRMがより重要であることは航空界では常識であり、今では機長に昇格時の資質として操縦技量や判断力と同等かそれ以上に求められている要件です。

ですから、運航乗務員はCRMの重要性は十二分に認識しています。イレギュラー発生のときにこそ2名の意思疎通が重要であり、それを問題なく行なえるようにCRMトレーニング受講を最低年に1回義務付けているのですから。

マスコミの報道を見ると、最終的に運航に携わっているパイロットに問題あり、のように書かれていますが、もし記事の中にある
 『副操縦士が、すぐ隣に座る機長の操作を疑問に思いながらも、口にしなかった』
が本当ならば、早急に対応を考えねばならないのは青社の運航技術本部や運航乗員部であり、CRMのトレーニング内容が適切なものであって訓練効果が得られる内容であるのかをレビューすべきです。
また、経営や労務が(運航乗務員の)組合活動に何らかの干渉をして、コックピットに余計な危険要素を持ち込んでいないのか、その点も充分吟味すべきです。

それらを行なう目的での「コミュニケーションプロジェクト」旗揚げであれば、異存はありませんが....。

機長ら、もっと意思疎通を 全日空、対応策検討 (共同通信) - goo ニュース
 全日空機の機長らが計器不調のため高度を誤認し、管制官の指示より1600メートル高く飛行したトラブルで、全日空は3日までに、機長ら運航乗務員の意思疎通が不足していたことも原因の一つだったとして、社内に「コミュニケーションプロジェクト」を立ち上げた。

副操縦士が、すぐ隣に座る機長の操作を疑問に思いながらも、口にしなかったことが事態を悪化させたと判断した。

全日空は運航中に感じたことも含め、さまざまな情報を伝達する能力を向上させるため、どんな訓練が必要かなどについて7月中旬までに対応策をまとめる方針だ。

高度誤認は6月5日、長崎発羽田行き全日空機で発生。離陸直後に機長席と副操縦士席の高度計表示が食い違い、機長は本来存在しない別の高度計データに切り替えたつもりで、実際には数値が誤っていた副操縦士側の高度計データに切り替えた。本当は機長側の高度計が正しかった。

2005年 7月 3日 (日) 18:24

タイトルの写真はイメージであり、投稿内容と直接の関係はありません。
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PW4090 高圧タービンブレード破損 愚論

6月21日の1936便、エンジントラブルはボアスコープによる内部検査の結果、高圧タービンのうちの片方のタービンの一部が破損し、その破片により、さらにその後段にある低圧タービンも一部損傷していることが判明しています。

現在は、当該エンジン PW4090 の製造メーカである米 Pratt & Whitney が詳細な原因究明を行なっていることと思います。

私見ですが、一般的に考えると「高圧タービンの損傷」ということは、金属疲労(高圧タービンは燃焼室からの高温高圧の排出ガスにさらされるのでニッケル合金製なのですが)でクラックが入り、損傷したのではないか、と思われます。

では、何故に仮説としている金属疲労にまで至ったのでしょうか。ここから先も一愚論です。

そこには日本における国内線航空機運航の特殊性があるのではないかと思います。

メーカの Pratt & Whitney 社だって、PW4090 で ETOPS207 (一発のエンジンで207分間の片肺飛行出来る; ETOPS に関しては別途投稿機会を設ける予定です)の認定を取得しているのですから、種々の綿密な設計・検証を行ない、金属疲労に関するデータやシミュレーションなど真っ先に行なっている筈です。

その際に、日本の国内線のような運航事情をどこまで考慮したのかな、と素朴な疑問を抱きました。

Boeing777-300 は、日本の国内線における Boeing747 (ジャンボ・ジェット)置換をも念頭において導入されています。その供給座席数をみても、全日空の Boeing777-381 では525席、日本航空の Boeing777-346 では470席と、ジャンボ・ジェットに比べても決して見劣りしません。
かつ、運航効率(燃費)は双発の777の方が優れているわけですから、“離着陸回数”の多い国内線では、ずっと経済的で環境に優しいと言えるでしょう。
損得勘定がお得意な航空会社経営陣からしても、一座席あたりの運航コストが低く抑えられる777の方がうれしい訳で....。

で、私が咽下に引っかかっているのは、国内線運用に供した場合“離着陸回数”が多い、という点です。

Boeing777-300 の供給座席数を考えると、それを導入してメリットが得られるのは旅客数の多い幹線がメインとなります。例えば、羽田-伊丹,福岡,札幌,沖縄那覇。それプラス時間帯、季節変動により多くの需要が見込まれる路線です。

羽田~伊丹を例にとると、その飛行時間は僅か45~50分でしかありません。水平飛行をしている巡航は20分前後でしょう。出発後、離陸~上昇とエンジンには大きめの出力を用いた後、僅かな巡航を経て、エンジン出力はアイドルまで絞られ降下へ移る。そして最終進入では微妙にエンジン出力の調整がなされ、着陸。到着後、1時間もするとまた次の便の運航に供される状態です。
仮に、朝6時半羽田発伊丹行きに始まり、羽田~伊丹を往復するパターンに投入したとすると、1往復に要する時間は約3時間(伊丹でのインターバルを含む)であり、それに羽田での1時間のインターバルを入れて4時間、夕刻18時半羽田発伊丹行で4往復目に入り、伊丹の curfew である午後9時ギリギリですが、20時半伊丹発に使えば、約15時間のうちに羽田~伊丹を8片道飛ぶことになります。
つまり、エンジンの運転サイクルも8回の離陸・上昇出力~...を繰り返すことになります。

一方、同じく PW4090 を搭載した Boeing777-200ER で ETOPS207 はどのような路線に投入されるかと言うと、その航続性能と ETOPS207 を生かした長距離、長大路線がメインになります。

全日空の Boeing777-200ER を例にとると、一例が米国西海岸線であり、その飛行時間は、米国行きが9時間~10時間、米国からの戻りが10時間~11時間といったところでしょう。
成田やLAX (ロサンゼルス)を離陸する際には、特に帰国便は燃料をたくさん積んでの離陸となりますから、最大出力に近いパワーをもって大地を蹴りますが、そこから先は、燃料が軽くなるに従って、1000ft (約300メートル)単位で巡航高度を上げる際に、少しエンジンパワーを巡航時のそれより使うくらいで、10時間前後の殆どが巡航です。
※コンチネンタル航空(こちらは米 General Electric 社のエンジンですが)では、香港~ニューヨークの直行便を Boeing777-200ER で運航しており、ニューヨーク行きなど15時間以上エンジンが回り続けます。

つまり、長時間ほぼ一定の出力でエンジンを回し続けることに関しては、充分な信頼性検討が行なわれ、そのような状況下での運航に対するエンジンの整備基準も余裕を持って設定してあると考えられます。

勿論、Boeing777 の開発にあたっては、 Working Together ということで、全日空も日本航空も開発段階から関与して意見を述べているので、Boeing 社やエンジン・サプライアも、短距離で短いサイクルでエンジンが使用されることについても当然配慮している筈です(この素人オヤジでも考え付くくらいなのですから....)。
ただ、日本列島、狭いようで広い。冬場~春先にかけて、札幌では Winter Operation でエンジンオイルの温度に気を配らなければならない状況でも、札幌-羽田-福岡-羽田-沖縄那覇と飛んだ那覇では、長袖では汗ばむ陽気のことも珍しくないでしょう。

そのように地上での温度差も激しい上に、離着陸サイクルが多い。

燃焼室後部の高圧タービンブレードは、急激にフルパワーで熱せられたかと思うと、奴にしてみれば適温で回ったのもつかの間、温度変化がやや激しい状態を経て地上に戻る。半日くらいは休ませてもらえるかと思いきや、1時間後にはまたフルパワー…。金属疲労にとっては、決して恵まれた環境ではないと思います。

そうした運航状況を想定した際の整備基準、例えば、ペケペケ・サイクル毎にボアスコープで内部検査を実施し、ホニャララ・サイクル運用したら、当該モジュールを外してラジオ・アイソトープで金属疲労を徹底検査すること等、が適切だったかどうかは未知の領域であり、誰もその妥当性を100%コミットすることは出来なかったのではないでしょうか。

今回の事例を生かし、より安全サイドにマージンを持った、実績に裏付けられた整備基準が策定されるようなことがあれば...;

「エンジンの異音と計器の異常」にいち早く気付き、1 Engine Shutdown, LAND at Nearest Suitable Airport を淡々とこなした当該 Cockpit Crew の普段からの厳しい訓練、片肺飛行で決して良い天候の中、関西空港へ目的地外着陸をし、不安で不便を強いられた当該便のお客様、機内の統率を乱すことなく対処した当該便 Cabin Crew、代替便を手配したり着陸後のお客様対応に頑張ったグラウンド・スタッフ、降りしきる雨の中、当該便の着陸を見守り Spot In した機体の点検・状況解析に尽力したメカニックさん、そして、Declare Emergency の中、Priority Landing に協力してくださった航空管制機関の方々、etc.

それが、当該事例を体験・経験そして対処された皆様へのメーカとして最大の誠意と言えるのではないでしょうか。

※いつものことながら、タイトル画像はイメージで、本投稿とは直接の関係はありません。
 これ、United Airline の Boeing777-222ER、エンジンは PW4090。はるか太平洋を越えてきたところ。
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