goo blog サービス終了のお知らせ 

プラネタリズム

ども、遊星です。世の中のもろもろを風景にして書き連ねる

吉野家、牛丼へのこだわり(7)

2006-02-15 21:39:37 | life
伝達性スポンジ状脳症が怖いのは、異なる宿主間でも感染する可能性があることである。
羊ではスクレイピー病、牛では狂牛病、ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病。
感染すると、長い潜伏期間ののち、発症し、神経器官が侵され、再起不能になる。
抗体反応もなければ、治療薬もない。

もともと、羊のスクレイピー病が知られていた。そしてスクレイピー病に侵された羊の肉骨粉が牛の飼料として給餌されたことから、狂牛病が発生したと見られている。
狂牛病に感染した牛が、廃棄処分される過程で肉骨粉となり、また牛の飼料として使われたことから、狂牛病が広まったというのが定説だ。

イギリスを中心として、肉骨粉は、ミルクの代用飼料として子牛の頃からエサとして与えられていた。
肉骨粉は、「羊、牛、豚などの家畜から食用肉を切り取った残りの部分の廃物やくず肉を集めて加熱し、有機溶剤で脱脂した肉かすを乾燥させ粉末としたもの」で、いわば廃棄物を利用した“リサイクル”である。タンパク質源として有用であったが、牛にとってみれば、これはある種の「共食い」である。


吉野家、牛丼へのこだわり(6)

2006-02-14 22:55:29 | life
プリオン説について、おおざっぱに整理すると、異常プリオンが病原体のように感染性を持ち、正常プリオンを異常プリオンに変換していって、羊や牛の脳などに蓄積してスポンジ状脳症を引き起こす、というもの。

しかし、プリオン説に異議を唱える学者は、このプリオン説の論理には飛躍がある、と主張しています。

確かに、狂牛病のもとになる病原体については、世界中の学者が探しても出てきませんでした。逆に、プリオン説を裏付けるような証拠がたくさん出てきたわけです。

でも、とても見つけずらいものの、未知の病原体が存在している可能性もあるわけです。

伝達性スポンジ状脳症の発症に、プリオンが重要な役割を果たしていることは明らかです。しかし、ウイルスのような病原体が主因で、プリオンは副次的な役割をしているにすぎない可能性もあります。

前出の福岡伸一氏の「レセプター仮説」も、そうした考え方からきていると思われます。

吉野家、牛丼へのこだわり(5)

2006-02-13 22:05:05 | life
福岡伸一著「プリオン説はほんとうか?~タンパク質病原体説をめぐるミステリー」(ブルーバックス)は、ノーベル賞まで受賞したプリオン説に対して、「プリオン説をさまざまな局面から再検討し、プリオン説がどこまでほんとうなのかを批判的に解析しようという試み」が題材となっている。

著者が「あとがき」で言っているように、「研究者は研究論文で勝負するのが本筋であるという意見があろう」、ということには同意する。
相手はノーベル賞である。プリオン説に対する「新説」が立証できれば、それこそノーベル賞ものである。

今のところ、狂牛病を引き起こしている原因に関して、プリオン説が定説のようになっていますが、そのプリオン説も仮説にすぎないということですね。勉強になりました。また、著者の展開している議論についても、プリオン説のほころびは指摘できても、その代替仮説の核となるウイルスの存在については、未だに発見できていないわけです。

ただ、プリオン説にまつわる最新の状況を解説した本書は、読み物としては非常に面白いです。また、内容に関しては、一般向けにできるだけわかりやすく書かれてはいますが、生物学をかじった人でないとわかりづらい部分もあるかと思います。


吉野家、牛丼へのこだわり(4)

2006-02-12 19:27:57 | life
狂牛病が異常プリオン蛋白質の蓄積によって引き起こされるということは今日、多くの人の知るところである。

異常プリオンは脳や脊髄などの神経部位に蓄積することがわかっており、それらを特定危険部位として、食用の際に除去する、ということがBSEを拡大させないための最も有効な方法だという国際的な見解に至っている。

通常、病気は細菌やウイルスを介して引き起こされるものである。しかしこの狂牛病をはじめとする伝達性スポンジ状脳症については、いまだにそのような病原体は発見されていない。これは一体どういうことなのか。

感染した牛や羊の脳に蓄積している、異常タンパク質自体が病原体ではないか、というのがプリオン説である。プリオンとは「タンパク性感染性粒子(proteinaceous infectious particle)」のことであり、スタンリー・プルシナーという学者が提唱した。プルシナーはこのことで、1997年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。

しかし実は、プリオンが実際に狂牛病の病原体として働いているかどうかということは明らかになっていない。あくまで、異常プリオンがBSEの原因とみられているだけであって、異常プリオンがあたかも病原体のようにふるまっているように見えるだけなのだ。
平たく言えば、狂牛病を引き起こしている、真犯人がほかにいる可能性がある。
その辺を書いているのが、福岡伸一著「プリオン説は本当か?~タンパク質病原体説をめぐるミステリー」(ブルーバックス)である。


吉野家、牛丼へのこだわり(3)

2006-02-10 21:39:00 | life
2月2日発売の週刊文春によると、アメリカ産の牛肉が、BSE問題で輸入禁止にされて以降、メキシコを迂回して日本に入ってきているという疑惑があるそうだ。

アメリカ産の牛肉が輸入禁止となったのは2003年の年末。それまでは日本はメキシコからの牛肉の輸入はゼロに近かった。
ところが、米国産牛肉が輸入禁止となったこの二年間を見ると、急激にメキシコからの日本への牛肉の輸入量が増えているというのだ。

一方、メキシコはアメリカから大量の牛肉を輸入している。牛肉輸入国であるメキシコから、日本は牛肉を輸入しているわけで、これはどうにもアメリカ産の牛肉がメキシコを迂回して日本に輸入されている疑惑が浮上する。

記事はさらに、こう続けている。「韓国では2004年7月にメキシコから輸入した牛肉に米国産牛肉が混入していたことがわかり、以後、韓国政府はメキシコ産牛肉の輸入を禁止しているという。」

また、日本とメキシコの貿易について、こうも言っている。「2004年3月、日本はメキシコとFTA(自由貿易協定)に合意したが、この条約内容には不可解な点がある。日本政府は、原産地表示について疑問があった場合、(中略)、日本政府自ら調査や確認などする権限はないのだ。」

さて、吉野家だが、ホームページを見ても、アメリカ産の牛肉へのこだわりを伝え続けている。しかし、現在のメニューを見ても、豚丼があって、牛すき鍋定食があって、なぜ牛丼だけがないのだろう。
うがった言い方をすれば、「アメリカ産牛肉でないとあの牛丼の味を出せない」のではなくて、「アメリカ産牛肉でなくてもあの牛丼の味を出せる」のでなないか。
それを知られたくないために、現在もかたくなに牛丼を復活させないでいるのではないか。

それはともかく、メキシコ産の牛肉が気になりますね。スーパーなどでは見かけませんから。外食で、知らず知らずのうちに口にしている可能性もあるわけですね。

吉野家、牛丼へのこだわり(2)

2006-02-09 20:22:46 | life
2月1日付けの日本版ニューズウィークには、アメリカでの、BSE由来のヤコブ病発症についての疑惑が記事としてのっている。

記事の中では、ニュージャージー州にある競馬場のレストランで88年から92年に食事をしたことのある人々のうち27人がヤコブ病で死亡していたことが報告されている。
しかし同州の保険当局はBSE感染牛との関係性を否定している。米疾病対策センターも、死因については特に不思議な部分がなく、本格的な疫学調査は必要ないとの姿勢を崩していない。

アメリカではニュージャージー州の事例以外にも、ヤコブ病による死亡例の頻発が疑われる地域が現れている。にもかかわらず、いずれの例においても、連邦政府や州当局によって確認がされていない。ヤコブ病は、連邦政府に報告する義務のない病気だからだ。

日本がアメリカの圧力に屈したかたちで再開した米国産牛肉の輸入は、わずか1ヵ月後に特定危険部位混入が明らかになって再停止となった。米国側のずさんな管理体制と、再開決定を決断した日本政府のあさはかさが露呈したかたちである。


吉野家、牛丼へのこだわり(1)

2006-02-07 18:41:59 | life
「牛丼の吉野家」のメニューから牛丼が消えるという異常事態が続いてもう2年がたつ。

なか卯をはじめとする、ほかの系列チェーン店では「牛丼」「牛めし」がすでに復活しているのに対して、吉野家では米国産牛肉が手に入らないとの理由から未だに牛丼をメニューから除いている。

結果として、牛丼にこだわる吉野家が、そのこだわりゆえに牛丼の販売を再開できないという、皮肉な事態となっている。