トランペットとコーラングレがソリストとしてフューチャーされる管弦楽曲、元々は映画音楽である。
1980年代後半、まだコープランド存命中、演奏したことがある。
正直言って、何が面白いのか、さっぱりわからなかった。
それが変わったのは、それから何十年も経った時である。何かのテレビ番組で、朝の人通りの少ないニューヨークの映像のBGMで使われていた。
これが見事にぴったり!コンクリートの建物が並ぶ街並みの無機質ながらも透明感があり、それなりの美しさが表出している映像なのだが、それを音楽が共に演出を強めていたのだ。
トランペットもコーラングレも弦楽器も別々に扱われることが多く、それが都会の寂寥感のようなものを巧みに表現している。急にこの曲が好きになったのであった。
さて、現在緊急事態宣言が出された日本で、人通りが激減した街並みを見ると、この曲をふと思い出した。
街並みが別の顔を見せて、それなりの美しさが感じられたし、コープランドの音楽がぴったりの光景ではあった。
コープランドの偉大さに触れた思いがした。
この風景、個人的に嫌いなものではない。
だけど、人通りの復活は切に願うところである。雑踏はアジアの原風景だ。失われてはならない。