この場合「トップ」とはオーケストラの首席奏者(コンサートマスターを含む)で、「トップサイド」とはその隣に座る奏者のことを指す。あまり話題になることはないと思うけれど、気にしている人は気にしているんだな、ということが最近わかった。
これを気にしているのは、もちろんアマチュア・オーケストラの方々であろう。トップサイドどころか、コンマスやセカンドトップも何をしていいかわからない、という質問も来る。
まず、トップをやってみるとわかるのだが、自分がよく知っている曲と、そうでない曲では、かなり結果に違いが出てしまう。知っている曲だと、自分のパートがどのくらいの音量で、どのタイミングで弾けば良いか、かなり見当がつく。知らないとつかない。だから、本来は事前に知っておく、というのが建前になる。
これも経験を積んでいくと、知らない曲でも、大体このあたりか、という見当はついてくる。これがベテランの領域である。もちろん限界はあるけれど。
それで、トップサイドだが、やはり知っていれば対応の余裕がある状態になるから、基本的にはトップ同様である。その上で、トップのやり方に合わせる、ということになる。
そこで、問題の音量。トップの人よりやや弱くなるとトップと同化はしやすい。しかし、通常トップサイドは舞台の奥に位置するから、客席から聞けば常にトップより弱い音になる。よって、意図的に弱くするのは疑問が生じる。
私の個人的見解では、トップサイドの人にはガンガン弾いてもらいたいと思っている。あくまでも全体の流れに沿って弾いてくれているならば、という条件つきではあるが。コンサートマスター、トップとも合図を出す等、他の仕事があるので、時には音を出すより、そちらを優先させることがある。それに合わせてトップサイドの音量が減ってしまうようでは、安心して他の仕事ができない。
先日、久しぶりに弦楽器の先輩達と会って話した時のこと、ある先輩曰く、
「千香士さんのコンマスとして優れていたのは、後ろの人に充分弾かせることができたことだよね。」
一方、千香士先生が生前おっしゃっていたこと。
「いいオケは後ろから鳴ってくるんだよ。」
これらの話を総合すると、トップサイドの問題はコンサートマスターにも左右される、という考え方が浮かび上がる。トップサイドを悩ませるようなトップではいけない、という言い方もできるかもしれない。なかなか難しいポイントも含んでいるが、それを乗り越えてこそ、いい音楽が誕生するということだろう。