井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

シチェドリン:カルメン組曲

2010-03-15 23:31:35 | 音楽

大学生時代の暑い夏の日,冷房もない部屋の畳に寝っ転がってFM放送を聞きながらウトウトと・・・。

聞き慣れたメロディがステレオから流れてくる。「ああ,カルメンか・・・」

そのまま眠りに入るつもりだったのだが,ある瞬間から安眠を妨害された「なんじゃこりゃ?!」

メロディがあるべきところで消滅し,淡々と伴奏だけが聞こえる。ステレオが故障したか?(寝ぼけていたので変なことを考える。)しばらくすると,メロディは復活したが,今度は順番が違う。すっかり頭が撹乱されてしまった。これは一体,何もの?

というのが,この曲との出会い。FMの紹介では編曲者名しかわからなかったが,その後,「題名のない音楽会」で紹介され,もう少し詳しく知るところとなる。メロディアからロジェストヴェンスキーの録音が発売されていて,LPを手に入れることができた。夫人の名バレリーナ,マヤ・プリセツカヤが踊るために作られたのだそうだ。

とにかく奇想天外,才気煥発な編曲。編成が弦楽器と打楽器だけというところからユニーク,「アルカラの竜騎兵」は3拍子になってしまうし,原曲にない重々しさが加わったり,逆にコミカルになってしまったりと,意表ばかりついてくる。

そう言えば,さらに遡って高校の頃,東フィルの元団員から「シチェドリンの作品は,遊びばっかり」というのを聞いていた。交響曲には第2ヴァイオリンの7プルトの裏(つまりヴァイオリン群の最も後ろに座っている奏者)が「立って」弾く,という指示があるとか・・・。

ようやくそのシチェドリンに辿り着いた,という一種の感慨も手伝って,この曲が大好きになってしまった。
当時録音はこの一種だけだった。その後,メロディアからスピヴァコフ指揮する透明感あふれる小編成の弦楽によるものも出たが,やはりザラザラ感一杯のロジェベン盤が筆者にはピッタリくる。(アンサンブル金沢も録音したはずだが未聴。)

それからシチェドリンには興味を持ち続けた。数曲録音も手に入れた。残念ながら録音では7プルトの裏が立ってもわからない。

いわゆるバブル期にはシチェドリンのミュージカル「森は生きている」(マルシャーク原作)というのも上演され,これにも魅了された。が,これは林光の音楽劇,ならびにオペラも捨て難く劇中歌「十二月の歌」は傑作,林に軍配を上げたい。

となると,やはりシチェドリンでとどめを刺すのはカルメンではなかろうか,と今でも思っている。

シチェドリン:カルメン組曲(ビゼーの歌劇《カルメン》による弦楽と打楽器のための編曲版)/他
価格:¥ 3,059(税込)
発売日:2001-07-25