井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

梅鶯林道・跳弓階段

2010-02-04 21:11:53 | 梅鶯林道

ヴァイオリンの学習方法を考えたり,そのレパートリーを整理したりすると,スピッカートのことを考えざるを得ない。
オーケストラを演奏する時,重音は弾けなくても何とかなる。複数の奏者で手分けして弾けるからだ。でもスピッカートは他の手段で代用し難い。職業オーケストラの場合,スピッカートができなければ入団はできない。

そう,どこかでできるようにならなければならない技術なのである。そのためには,最低数ヵ月,場合によっては数年をかけることになる。
その練習は開放弦でもできるし,練習曲を使うこともできる。

しかし,開放弦で数年間スピッカートの練習は厳しい。
そこで考えた。
レパートリーを一望するとスピッカートやそれに似た技術(スタッカート,リコシェ,ソーディエ等)を使わなければ弾けない曲というのが結構ある。これらを難易度順に並べて,エチュードとして使ってしまうのである。つまり他の楽曲と並行して学習する形をとる。そして,完全にはスピッカート等ができなかったとしても,他が大体できていれば次に進んでしまうのである。これを2年間やれば,大抵弾けるようになるのではないだろうか。

スタートは梅鶯林道2級,楽器のサイズは3/4になってから,を標準と考える。スピッカートはフル・サイズの弓でないと労力ばかりがかかってしまう代物なので,それ以前に練習するのは筆者としては懐疑的である。

題して《跳弓階段》。怪しげなラテン語で「グラドゥス・アド・スピッカートゥス」としようかと思ったが,ここは梅鶯林道なので,やはり日本語がふさわしかろう。

1. キュイ:オリエンタル
(アップのリコシェで,まず慣れる。「演奏会用ヴァイオリン名曲集vol.2」に収録。)

2. クライスラー:「シンコペーション」 または 「道化役者」」
(元で跳ばすことに慣れる。どちらかで良いだろう。「クライスラー ヴァイオリン名曲集1」に収録。)

3. チャイコフスキー:メロディ
(ちょっと息抜き。アップのリコシェ?or スタッカート?がある。「演奏会用ヴァイオリン名曲集vol.5」に収録。)

4. モーツァルト=クライスラー:ロンド ニ長調~ハフナー・セレナードより
(スピッカートができなければデタッシェで弾いても音楽にはなる。)

5. クライスラー:シチリアーノとリゴードン
(同上「クライスラー ヴァイオリン名曲集1」に収録。)

6. パガニーニ:無窮動(常動曲)
(デタッシェで弾くのだが,速く弾けばソーティエになる。アッカルドはクロイツェルの2番等を使う代わりに,これの最初のページを使うことを勧めていた。「クライスラー ヴァイオリン名曲集2」に収録。)

7. クライスラー:前奏曲とアレグロ
(スピッカートに移弦が加わる。このあたりの曲は【1級】のレヴェルと見なして良いだろう。「クライスラー ヴァイオリン名曲集1」に収録。)

8. チャイコフスキー:スケルツォ
(これはデタッシェでは音楽にならない。「演奏会用ヴァイオリン名曲集vol.5」に収録。)

9. ノヴァチェック:無窮動(常動曲)
(スピッカートにしたりデタッシェにしたりして変化をつける。「演奏会用ヴァイオリン名曲集vol.2」に収録。)

10. サラサーテ:序奏とタランテラ
(スピッカートとリコシェのオン・パレード。【初段】になって,跳ねる弓を徹底させるために使うと良い曲。)

以上10曲。ただし,現段階ではまだ「机上の(空)論」,今から実践していって,裏付けをとる「タタキ台」である。早速本日,うちの学生達に課題として提示した。(大学生になっても,スピッカートに関しては,まだ心もとない者もいるのが現実だ。)

ただ指針の一つにはなると思う。眺めているだけで,何だかできるような錯覚さえしてくる。さあ,がんばろう。