井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

神との間に成立するシャコンヌ

2009-07-09 08:29:38 | ヴァイオリン

千香士先生と江藤先生、双方から薫陶と祝福を受けたバイオリニスト、工藤真菜さんのリサイタルを聞いた。

確固とした技術、魅力的な音色に支えられ、プログラムの5曲が、あっという間に終わった感がある。

立ち姿も良く、余計な動きの無いところも、演奏の安定感につながった。

工藤さん自身が書かれたプログラムの文章に、また新たな千香士語録が含まれていたので、ちょっと紹介。

〈バッハのシャコンヌは高校の大切な卒業試験曲だというのに、意地になったように一度もレッスンして下さらなかった!「何故だろう?こんな子供が弾いてはいけない曲だからだろうか?」と落ち込みながらも、それなりにもがき、必死に仕上げ…10年後、とある挨拶がてら先生の自宅を訪れた際「10年前のシャコンヌだけど…。僕には入る余地のない曲で…神と君の間にしか成立しない曲であって…つまり、今の君にはそれが分かると思うんだ」と言葉少なに、しかし何と人間味あふれる解答をして下さったことか。〉

その文章を先に読んでから、シャコンヌを聞いたもので、当夜の演奏は工藤さんと神の間に成立したものなのだ、という風にしか聞こえなかった。

卒業試験曲でレッスンが無いのは尋常では無い。何かあったのだろう。そこでこの「至言」である。これまた普通では無い。

様々な解釈が可能だが、それだけに「お見事」という外は無い。

その後、聴衆との間に成立した「序奏とロンド・カプリチオーソ」等々も、鮮やかな技巧を駆使して「お見事」!

聴衆の一部だった学生達も大興奮した一夜であった。