某大学のレッスンにて。
シェフチークの重音をやらせていたら、気分が悪くなってうずくまってしまった学生がいた。こちらも気分が良いとは言えないが、うずくまる程ではないというか、重音を聞かずに済んで、気分が良くなったというか…。
これくらいは大したことではない。
他大学のレッスンにて。
1ヵ月経ってもスケールをやってこない1年生がいる。 入学前にスケールというものをやったことがないのだ。
最初できないのはやむを得ない。そこで怒ってはいけない。要領を覚えさせるために、上学年と一緒にスケールを弾かせてきた。
1ヵ月半経った。そろそろ良いだろうということで、一人で弾かせてみた。
まるで弾けない。
大学でなければ「お宅のお子さんは…」と、親に責任を取らせる方法もあるのかもしれないが、大学ではそれはできない。もしそれをやると墓穴を掘る。最近ではモンスター・ペアレンツが大学に怒鳴り込み、一体何をやってるんだ、という例もあるそうだ。これを墓穴とモンスター、ボケモンという。
しかし注意しないのは職務怠慢である。つまり「怒らないで」注意する。
今回は注意もせず、質問を一つ。「どうしてこの大学に来たの?」
すると案の定…
「最初はパティシエの勉強とかしたかったけど、大学行かないのなら、このヴァイオリンを売る、と言われて…」
その後は顔を向こうに向けて、鼻をグスグスし始めた。
このように、自分の意志でなく大学に来てしまうケース、少子化時代、とても増えている。
学校というシステムは、学ぶ意欲があることを前提にしているから、このようなケースには苛酷である。
だから、この先の選択肢は限られる。
・学校を辞める。
・心機一転、勉学に励む。
・私が適当なレッスンをする。
学生の選択肢は最初の二つしかないはずだ。 が、ここはとぼけて「来週まで考えていらっしゃい」と言っておく。
私も、とボケた者、ボケモンになり、レッスン室を去った。来週は意欲満々に「ナルト」いいなあ。