華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

ムル、靖国について適当に喋りまくる

2006-08-25 01:44:08 | ムルのコーナー

 野良猫・ムルと華氏宅の居候のトマシーナが、今夜も公園のベンチで何やら喋っている……(こいつら、いったい何なんだ?と気になる方は……7月30日のエントリ「小泉から安倍へ」で簡単に紹介?しておりまする)。

トマ:ねえ兄貴、ヤスクニって何なんだろね。

ムル:な、何だよいきなり。靖国神社のことかい?

トマ:うん、そう。この間、総理大臣が参拝したっていうんで、気分悪いって言ってる人がたくさんいるみたい。

ムル:けけ。おまえんちの華氏もだろ。

トマ:靖国って、神社なんだよね。すぐそこにも神社があるけどさ、ああいうのとは違うの?

ムル:おまえなあ……。そりゃ神社ってことでは同じだけどよ、氏神サンを祀った、その辺の神社とは違うんだよ。あそこは国家神道の総本山みたいなとこなのッ。

トマ:コッカシントーって……「現人神である天皇を絶対者として崇めて」という感じのやつよね? 

ムル:そう、そういう「感じ」(笑)。山にも川にも台所にもカミサマがいるよっていうんじゃなくて、神は天皇ひとり。

トマ:でもあれって、60年ぐらい前になくなったんじゃないの?

ムル:GHQの指令、とかで解体させられたそうだけどね。制度が変わったり無くなったりしても、それですぐ「ものの考え方」まで消えてなくなるわけじゃない。

トマ:じゃあ、今も「天皇は現人神だ。日本は神国だ」と思っている人達がいるわけ?靖国は、そういう思想の総本山だっていうわけ?

ムル:天皇を現人神だと思っている人間……あるいは現人神にまつりあげたい人間……ねぇ。うーん、いるかも知れない。多分いるだろうさ。麻原ナントカっていうおっさんだって、信者には生き神さんみたいに思われてたわけだし。ただ、「小泉首相の靖国参拝を支持する」っていう連中の多くは、そうは思ってないだろうな。コイズミ自身、そんなことこれっぽっちも考えてないと思うぜ。次期首相候補ナンバーワンの御仁だって同じさ。ただ、国家神道ってのは単に「天皇を神として崇める(変な)宗教」じゃないんだよな。もともと国民をひといろに染めて、「お国大事」の感覚を骨の髄までしみわたらせるための道具だったわけでさ、「一にも二にも、国、国、国」の思想が生きている限り、「国家神道ふう」のものは生き延び続けるだろうよ。

トマ:何か兄貴、話が飛んでるような気がするけど……ま、いいや。要するに靖国神社は「お国大事」の思想の総本山、と考えればいいのかな。

ムル:そんな気がするんだよな……おいらなんぞは。あそこはさぁ、「お国に命を捧げた英霊」を祀る神社、なんだそうだ。綺麗事だよなぁ。国に殺された人達、だとおいらなんざ思うけどね。

トマ:A級戦犯が祀られているからダメ、とかいう人もいるね。

ムル:それはすり替えだっつーの。今も「あの戦争は間違っていなかった」と言い続け、「お国のために死ぬこと」を美化しているというのが靖国の本質で、参拝するのはそれに同意することなんだってば。戦死者の遺族にとってみれば、「犬死にしたとは思いたくない」感情があるのもわからんじゃない。戦死した人達のことを考えると、そりゃ、おいらみたいなご意見無用のヤクザな猫だって言葉が重くなるよ。でもさあ、だからって飾っちゃあいけないと思うんだよな。犬死にだったのだ、だからああいう死は二度と存在させちゃいけないとはっきり言う方が、よっぽど供養になると思うけどなあ。

トマ:A級戦犯といえば、次期首相候補・安倍官房長官のお祖父さんもA級戦犯容疑者だったそうだね。

ムル:うん。死刑にならなかったのは、たまたまアメリカが日本を共産主義に対する防波堤にしようという方針を決めて、容疑者のうち役に立ちそうなメンバーを不起訴にしたからさ。おいらなんざ、なんであの男がA級戦犯じゃなかったのか不思議なぐらいだけどね。昭和天皇が戦犯にならなかったのも、アメリカが「ほうっておいた方が便利」と思ったからだろうさ。ま、そういうわけで、A級戦犯(死刑判決は7人)の選ばれ方が本当に「すべて妥当」であったかどうかは、おいらにはわからんよ。ほんとは国民が裁くべきだったんだろうと思うし、A級戦犯、つまり平和に対する罪を犯した人間は、もっともっと多かった気もするしね。ただ、だからと言って東京裁判をまるごと否定するのはあまりに短絡だよな。

トマ:「死者に鞭打つな」なんて人もいるよね。

ムル:それはちょっと、言葉の使い方が間違ってるような気がするんだよなー。死んだ人間は弁明できないから、一方的に罵倒するな、というのは確かかも知れねぇよ。でもさあ、死んだら罪は消える、その人間がやったことはみんなチャラになる、というわけじゃねえよなあ。死者に鞭打たないのが日本人の美徳、なんていう言い方があるけど、日本史の中で「ワルモノ」呼ばわりされてるのって、たくさんいるじゃん(笑)。『忠臣蔵』の吉良上野介とかさ。まっ、それはどうでもいいけど、「人間が過去に犯した罪」は水に流しちゃあいけないのさ。これは、死者に鞭打つとか打たないとかいうのとは話が違うんだよな。

トマ:中国とか韓国とかが首相の靖国参拝を批判することについて、内政干渉だの、他の国からガタガタ言われる筋合いはない、なんて言う人もいるみたいだね。

ムル:うん、いるみたいだ。死者を神として祀るのは日本の文化であるとか何とか。さっき言ったように靖国は単に死者を神として祀ってるんじゃなくて、お国のために死んだ兵士を讃えている所なんだけどね……。それは別として、「これは日本の文化」とかっていう大声を聞くたびに、おいらは思い出すことがあるんだ。服部剛丈君銃殺事件って、おまえ、知ってる?

トマ:何か、聞いたことがある……アメリカに留学していた日本人の高校生が訪問先を間違えてしまって、その家の人が銃を構えて「フリーズ」と言ったんだけど、それがわからなくて近づいちゃって、撃ち殺されたって話でしょ。僕はまだ生まれてない時の話だけど。

ムル:馬鹿野郎、おいらも生まれてないわい。もう10年以上前、1992年のことだかンね。高校生を銃殺した男は刑事訴訟されたけど、結局、無罪になった。アメリカの憲法では武器の保有と携帯の権利を認めているからね。裁判の最終弁論では、弁護人が「玄関のベルが鳴れば、(アメリカの国民は)誰でも銃を手にしてドアを開ける法的権利がある」と言ったそうだ。この事件があった時さあ、日本では「武器で自衛するのが当然というアメリカの思想」を批判する声が相次いだらしい。服部君の両親も、アメリカの銃規制強化を求める運動とかに参加して活動を続けてるそうだ。

トマ:それが靖国とどう関係あるの?

ムル:おいらも又聞きなんだけどさ、日本で起こった批判に対して、アメリカでは「何で極東のちっぽけな国が、わが国のことに口を出すのだ」と不快感を表明する声がけっこうあったらしい。「自分の身は自分で守る、場合によっては武器も執るというのはアメリカの文化である。他の国にとやかく言われる筋合いはない」とか。

トマ:わかった……。「固有の文化」がアプリオリに正しいわけじゃない、「固有の文化」という言葉を盾にしちゃいけない、ってことだね。

ムル:国、民族、集団……何でもいいけどさ、そのそれぞれの習慣とか価値観とかいったものは、そりゃ尊重しなきゃいけないよな。「腰掛けてウンコするのが正しくて、しゃがんでウンコするのは野蛮」なわけじゃないし。

トマ:兄貴、また話が逸れる……。

ムル:あ、わりぃわりぃ。ともかくだよ、固有のものは尊重しなければいけないけれど、同時に「誰が見てもおかしい」ことはあるんだよなあ。

トマ:そろそろ眠くなっちゃった。続きはまた話そうねっ。おやすみ、兄貴。

(多分、続く)

 

コメント (8)
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