聞いた話によると、イラストレーターのなかにはマンガなぞすぐ描けると思っている人がいるらしい。
プロのイラストレーターからすれば、多くの週刊誌の絵などヘタすぎて見るに値しないとでも思っているかもしれない。実際、わたしもイラストレーターの画力をもってして描いたマンガは素晴らしいものがあると感じる。
そういった人の場合、ストーリーを紡ぎだすのに苦戦したり、マンガ特有の構図で描く必要があるのに気付かなかったりと、実際に描いてみて速攻挫折する人もいるらしい。
あくまでも聞いた話ではあるが。
そこでイラストレーターはどうするかというと、恐らくマンガの手法を研究してマンガらしく組みあがるようマネるところから始めるのだろう。
しかしそうすると、ある意味でマンガらしい、マンガとして生産性の高い話と絵で構成されてしまうことはよくある。
極端に悪く言ってしまうと、表紙は大変素晴らしく中身は凡百、売り上げも芳しくなくかといって好事家にも見向きもされない、世の中にはそんなマンガもあるのは御存知のとおり。そしてジャケ買いして後悔するのも御存知のとおり。
しかし!
そんな風潮を真っ向から否定し、マンガ的手法をモノマネすることなく、あくまでもイラストレーターとしてマンガを完成させた素晴らしい作品もある。
田口順子の聖譚曲(※1)だ。
白黒ではあるが、すべてのページがマンガとしてはありえないような画力で執筆されているし、水墨画を連想させるようなタッチはマンガとして読むには衝撃的ですらある。
多くのマンガは(現代的というかハリウッド的というか何と言ったらいいのかわからないが)ストーリー展開はかなりこなれた王道的な描き方をほとんど無意識のうちに採用している。
しかし、聖譚曲に関してはそのマンガの王道的な描き方は完全否定され、ある意味で神話的で情熱的な、読者に読ませるのではなく聞かせるようなオリジナルの描き方で構成している。このマンガは読みにくい。しかしそれに慣れてしまうと、妙にその世界観が心地よくなっている自分にハッと気付く。
マトリクスにまでパクられるほど高い完成度を誇る日本のマンガの描き方を完全否定してもマンガを描けるのだから、もはやこれは驚くべきことだ。
別の例もあげよう。
椎名優の中華的幻想見聞録。(※2)
これはマンガではない。小説でもない。イラスト集でもない。しかしそのどれにも近い。
1ページに1枚のイラストが描かれ、それに小説となる活字が付随する。その本によるとこの形態をイラストストーリーと呼んでいる。う~ん、しいて言えば絵本(笑)。
これはマンガではないが、イラストレーターがマンガのようにストーリーを紡ぎ出すという事に対して到達した解の1つだ。ひょっとしたら、こんな解があったのかと思う人もいるかもしれない。
作者はあくまでもマンガを描くのではなく自らの能力をフルに発揮できる土俵で戦ったのだから、きっとマンガで表現していたより素晴らしいに違いない。実際にイかした本だ。
じつは何だかよくわからんまま勢いで発注してしまったのだが、届くまでに何ヶ月も待たねばならずどんなものが来るのか気になってもいたが、届いてから買って良かったと安心したものだ。
わたしはあまりイラスト集は買わないが、イラストレーターの書くマンガも好きなものはたくさんある。
これからもイラストレーターの画力をフルに発揮した凡百を超えるマンガを読みたい。
【※1 聖譚曲】
田口順子
聖譚曲(オラトリオ)
ISBN4-12-003511-5
http://www.amazon.co.jp/%E8%81%96%E8%AD%9A%E6%9B%B2-%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AA-%E2%80%95%E7%A9%BA%E6%83%B3%E6%88%AF%E7%94%BB0000-CNC-comics/dp/4120035115/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=books&qid=1235569116&sr=1-3
【※2 中華的幻想見聞録】
椎名優
中華的幻想見聞録
電撃hpで連載されていたものを収録したものらしい。
通販による受注生産の限定販売のみでISBNコードなし。
プロのイラストレーターからすれば、多くの週刊誌の絵などヘタすぎて見るに値しないとでも思っているかもしれない。実際、わたしもイラストレーターの画力をもってして描いたマンガは素晴らしいものがあると感じる。
そういった人の場合、ストーリーを紡ぎだすのに苦戦したり、マンガ特有の構図で描く必要があるのに気付かなかったりと、実際に描いてみて速攻挫折する人もいるらしい。
あくまでも聞いた話ではあるが。
そこでイラストレーターはどうするかというと、恐らくマンガの手法を研究してマンガらしく組みあがるようマネるところから始めるのだろう。
しかしそうすると、ある意味でマンガらしい、マンガとして生産性の高い話と絵で構成されてしまうことはよくある。
極端に悪く言ってしまうと、表紙は大変素晴らしく中身は凡百、売り上げも芳しくなくかといって好事家にも見向きもされない、世の中にはそんなマンガもあるのは御存知のとおり。そしてジャケ買いして後悔するのも御存知のとおり。
しかし!
そんな風潮を真っ向から否定し、マンガ的手法をモノマネすることなく、あくまでもイラストレーターとしてマンガを完成させた素晴らしい作品もある。
田口順子の聖譚曲(※1)だ。
白黒ではあるが、すべてのページがマンガとしてはありえないような画力で執筆されているし、水墨画を連想させるようなタッチはマンガとして読むには衝撃的ですらある。
多くのマンガは(現代的というかハリウッド的というか何と言ったらいいのかわからないが)ストーリー展開はかなりこなれた王道的な描き方をほとんど無意識のうちに採用している。
しかし、聖譚曲に関してはそのマンガの王道的な描き方は完全否定され、ある意味で神話的で情熱的な、読者に読ませるのではなく聞かせるようなオリジナルの描き方で構成している。このマンガは読みにくい。しかしそれに慣れてしまうと、妙にその世界観が心地よくなっている自分にハッと気付く。
マトリクスにまでパクられるほど高い完成度を誇る日本のマンガの描き方を完全否定してもマンガを描けるのだから、もはやこれは驚くべきことだ。
別の例もあげよう。
椎名優の中華的幻想見聞録。(※2)
これはマンガではない。小説でもない。イラスト集でもない。しかしそのどれにも近い。
1ページに1枚のイラストが描かれ、それに小説となる活字が付随する。その本によるとこの形態をイラストストーリーと呼んでいる。う~ん、しいて言えば絵本(笑)。
これはマンガではないが、イラストレーターがマンガのようにストーリーを紡ぎ出すという事に対して到達した解の1つだ。ひょっとしたら、こんな解があったのかと思う人もいるかもしれない。
作者はあくまでもマンガを描くのではなく自らの能力をフルに発揮できる土俵で戦ったのだから、きっとマンガで表現していたより素晴らしいに違いない。実際にイかした本だ。
じつは何だかよくわからんまま勢いで発注してしまったのだが、届くまでに何ヶ月も待たねばならずどんなものが来るのか気になってもいたが、届いてから買って良かったと安心したものだ。
わたしはあまりイラスト集は買わないが、イラストレーターの書くマンガも好きなものはたくさんある。
これからもイラストレーターの画力をフルに発揮した凡百を超えるマンガを読みたい。
【※1 聖譚曲】
田口順子
聖譚曲(オラトリオ)
ISBN4-12-003511-5
http://www.amazon.co.jp/%E8%81%96%E8%AD%9A%E6%9B%B2-%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AA-%E2%80%95%E7%A9%BA%E6%83%B3%E6%88%AF%E7%94%BB0000-CNC-comics/dp/4120035115/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=books&qid=1235569116&sr=1-3
【※2 中華的幻想見聞録】
椎名優
中華的幻想見聞録
電撃hpで連載されていたものを収録したものらしい。
通販による受注生産の限定販売のみでISBNコードなし。
「聖譚曲」については読んでみようかな、と考えています。
だれも知らない良作を引き当てたときの喜びはひとしおです。