教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

数字に強い人(笑)

2015-04-02 00:44:49 | 科学
■ツッコミで「数字に強い人」になる! ――「数学的思考」を学ぶための3冊
→ http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20150323/440241/?mlrb



> 「r>g」
> ――なんかスゴそう!
>  そう思ったあなたはたぶん文系だ。
>
>  ごぞんじピケティ『21世紀の資本』のアレである。アレというのは、なにが「r」で「g」なのか、文系の筆者にはよくわからないからだ。
> 「金持ちはより金持ちになり、庶民がいくら働いたところで絶対に追いつけない」――これならわかる。だが「ふぅーん」って感じだ。
>  ピケティのアレは数式である。ゆえにスゴイ。






これを読んでどう思われるか?

理系の我輩には非常に強い違和感を覚えた。

なぜか?

違和感の根源はいくつもあるが、順番に説明していきたい。



>  ごぞんじピケティ『21世紀の資本』のアレである。アレというのは、なにが「r」で「g」なのか、文系の筆者にはよくわからないからだ。

理系にとっては、「r」は半径、「g」は重力加速度である。
しかしそれでは意味が通じない。

同著作の中では、「r」は資本収益率、「g」は経済成長率である。
このアルファベットでこいつらを表記するという暗黙のルールがあるのかどうなのかは我輩は知らん。
この本を読んだから知っているだけだ。
我輩が理系だから知っているわけではない。
文系だからよくわからないで当然というのは無理がありすぎる。



> 「r>g」

>  ピケティのアレは数式である。ゆえにスゴイ。

ピケティのアレは、いま資本をガッツリ持っているヤツらはみんなが金持ちになるよりも早い速度でさらに金持ちになるということを意味する。
そのつぎにピケティが言いたいことは、だから貧富の差はさらに拡大するんだよってぇことだ。
(この本は資本と資産を混同している部分があるが、まあそれは置いといてだな)

この法則を発見したピケティはすごいかもしれん。
しかしそれを数式で表しただけですごいと思うか?

いや全く思わん。
文章で説明してあることを数式にしただけだ。



そもそも文系は数字に弱くて当然で、理系は数字に強くて当然なのか?

いや待て。
「数字に強い」という言葉は、ほとんどの場合は会計がわかることを意味する。
数学や科学技術についての知識があることを意味しない。

ちなみに理系では会計がほんの少しでもわかるヤツですらめったにいない。
「資本と資産って同じものだよね?」
「キャッシュフローとフリーキャッシュフローって何か違うの?」
というくらい知識が無いのが一般的だ。

これで理系は数字が強いとか言わんでくれwww



もっと根本的な疑問なのだが、なんでこんなことになってしまっているのか?

これはあくまでも推測だが・・・
義務教育課程で算数や数学で辛酸をなめた人は、数式を見るだけですごく嫌な記憶を思いだすというトラウマの刷り込みがなされており、ゆえに脳は精神を保護するために数式があると考えるのを拒否するのではないか。
・・・というのがわたしの仮説だ。

算数や数学に対して脳が思考を拒否するほど嫌いなヤツは理系には来ない。
そういう意味では理系は会計を理解するための最低限の素養は備えている。
だから理系は数字に強いというありもしない幻想を抱いてしまうのはやむを得ないのかもしれないとも思う。

だいたい理系とは計算方法を考えるのが得意な人のことを指すのであって、計算が得意な人を指すのではない。
ソロバンが得意な小学生と、大人になって科学技術関連の研究開発職につく人、この両者には相関は無いだろうとわたしは思っている。
会計士には相関あるかもしれんけどね。

たとえばわたしは英語が嫌いだが、受験生当時のわたしには英文科に進学するという発想は無い。
さらにいえば、だから英文科に進学する人はシュメール語も得意なんでしょ?…と考えるのに等しいほど本件は暴論だと考える。
英単語の知識がある人とシュメール語の知識がある人の間に相関は無いでしょ?

理系だから会計も得意だなんて、そんなバカなwww

日本がイノベーションのジレンマにハマった理由

2015-03-09 23:14:45 | 科学
「日本の技術力は高い」
と言ってくださる人が大勢いる現状には、エンジニアの我輩一同、大変感謝したい。

しかし!

当のエンジニアの我輩はモノによってはとてもじゃないがそうとは思えないような…、というか諸外国に激しく劣っているんじゃないかというところもある。

それは何か?

それはだな。
空気を読まずに強硬する強靭さである。



ある程度会社の規模がデカくなると、自分の部署内だけで設計が完結しないので、どんなに嫌でも関係部署といろいろやることになる。
どこでもそうだと思う。

ところがどっこい、これがクセモノである。
社内で誰かが決めた共通化ルールみたいなのがあって、それをベースに設計しなければいけないような空気になっているときが特にクセモノである。

自分の部署の範囲外のことでおかしなルールが決まってしまっているようなとき、それをひっくり返すのは非常に難しい。
だって自分たちの裁量の範囲外なんだから。

そういうとき我々は
「うっとうしいし不毛からもうそれでいいや」
となる。

これは日本人だけの特徴だとは断言しきれん。
しかし、和をもって尊しとするという日本人は特にそうなりやすいはずだ。


これの弊害はいったい何なのか?

たとえばソニー。

MP3プレーヤーなんてソニーがいちばん先に作るべきだった。
しかし法務部がゴネたおかげで商品化が遅れに遅れた。

iTunesのような音楽配信サービスだって映画/音楽部門をかかえているソニーがいちばん先に作るべきだった。
しかし映画/音楽部門がネット配信することにゴネたおかげで商品化されず、アップルに全市場まるごと食われた。

これはどうするべきだったのか?

エンジニアが法務部と意地でも戦って説き伏せるべきだったのか?
エンジニアが映画/音楽部門と意地でも戦って説き伏せるべきだったのか?

業務でこういうことにかかわった経験がある人なら
「うっとうしいし不毛から俺はかかわりたくねぇ・・・」
と誰しも思うはずだ。

だからソニーはイノベーションのジレンマに陥った。

本当はソニーだってイノベイティブなプランは立案されていたはずなんだ。

ソニーの中には
「俺はあのときジョブズと同じことを何年も前に言ってだんだ! なのにあいつときたら…」
と言ってるヤツらは絶対いる。

ソニーの現状がこうなのは、関連部署の顔を立てすぎ、空気を読む能力に特化したスタンド使いの島耕作的な男しかいない世界になったからだ。

これはソニーだけの問題ではない。

わたしだって
「うっとうしいし不毛から俺はかかわりたくねぇ・・・」
と思ってあきらめることは多々ある。

たぶん日本の大手ハイテク企業のほとんどはそうだろう。

しかし、たぶん韓国はそうではない。
あそこは儒教社会で目上の人の言うことには絶対服従であり、和を尊ぶという道徳観が存在しないため、トップダウンで何でも決まる。
だから調子のいいときは業績は急拡大し、調子が悪くなるとあっという間に会社が傾く。



日本にはジョブズのように空気を読まずに強硬する強靭な人間は大変少ない。

中には
「なぜ日本にはジョブズが現れない!」
と言っている経営者がいるが、
「そういう人間をおまえの部下が叩きつぶしてるだけだwww」
と言わざるを得まい。



これはソニーだけの問題ではなく、日本の問題である。
我輩自身の問題でもあるが、自分自身でも解決しがたい。

なかには
「なんてこったい!」
と思って何とかしようと立ち上がってくれる人がいることを願う。

電子回路の経年劣化診断方法

2015-02-14 00:27:08 | 科学
我輩の持っているとある区分所有マンションでエレベーターの点検が行われた。
その結果、静止化電源装置の交換をしたほうがいい旨の結果が出たという。
文面は以下のとおり。

> 経年劣化が見られます。装置自体の整流昨日・電圧制御への影響が懸念されます。

ところがだな。
電子回路というのは故障診断は容易であっても劣化や摩耗の診断はかなり難しいんだよ。
とくにオンサイトでそれを診断できるとはとても思えんのだよ。

わたしはエレベーターについては全くの無知だが、いちおうこれでも我輩は電子回路のエンジニアである。
したがってこれは(当blogのいつもの記事とは異なり)シロウトがてきとうなことを言っているわけではないと言っておく。

もしオンサイトで劣化の診断ができるとしたら、フラッシュメモリみたいに常に誤り訂正やっているようなものであれば、くたばったbitの数やら誤り率に閾値を持たせることで、けっこうカンタンにそれが可能にはなる。
だが、これは静止化電源装置、ようするに電源であり、そういうたぐいのものではない。
もしこれが1億円するシステムならば話は違う。
n個並列運転するところn+1個つけておいて、偶発故障で1個くたばっても一応そのまま動くようにすることで後で交換しといてねとすることは可能である。
だが10万もしないようなものでそう簡単にできるようなものが何かあるとはとても思えん。

でだ。
どうやったのかを電話して聞いてみた。



俺「うちのマンションのエレベーターを点検してくださった件でお伺いしたいことがあります」
奴「何でしょう?」
俺「制御回路で経年劣化が見られるというご診断結果をいただきました。しかし電子回路は劣化や摩耗の診断は非常に難しいと思うのですが、いったいどのような診断をなされたのか教えていただけませんでしょうか?」
奴「ロープの件でしょうか」
俺「違います。ロープは目視確認で劣化や摩耗の程度を確認できそうなことはわかります。制御回路の診断についてです」
奴「静止化電源装置の件でしょうか」
俺「それです」
奴「静止化電源装置は何年使用すると故障率がどれくらいになるというバックデータがございまして、それと照らし合わせて交換時期になったと判断しております」
俺「では診断したというのとはちょっと違うわけですね」
奴「装置が取り付けられてからの期間を確認しましてですね」
俺「つまり日付を見るだけで電気的な診断は特にしていないというので合ってますでしょうか?」
奴「そうなります」



ということでエレベーターの点検って案外大したことしてないらしいということがわかった。
とはいってもロープの点検はちゃんとやってるように見えるけどさ。

ハンダづけのロストテクノロジー化が進む

2014-09-09 23:51:30 | 科学
会社でのことなんだが。
最近なんだか、治具を作るだとか、ちょっとしたアナログICを評価するだとか、その手の仕事が我輩に回ってくる率が高くなっている気がする。

場合によっては小耳にはさんだ時点で
「あっ、これは俺か」
みたいな感じにすらなっている。

べつに嫌じゃないんだよ。
なんだかやたら回ってくるな~って思ってるだけなんだ。

・・・と思っていたところだな。

やたら回ってくる理由が判明した。

その理由はだな・・・。

いつの間にやらはんだ付けが得意なヤツの人口が減っているということだ。
ようするにまあ、治具を作るだとか、ちょっとしたアナログICを評価するだとかいうとき、高確率ではんだ付けして何やらやらかすわけだが、それを作れるヤツが他にあんまりいないってことだ。

我輩が最初に配属された部署ではそうではなかった。
だれでもはんだ付けできるのが当然だった。

いつの間にみんなはんだ付けしなくなったんだよ?

思い当たるフシがないわけではない。

最近は部品がコンパクトになりすぎたおかげで、はんだ付けの難易度が高くなりすぎてしまい、
「とてもじゃないけどこんなののはんだ付けなんて俺には無理だー!」
とはじめっからなってしまうのだ。

だいたい我輩の部署では1/8Wのリード線ついたカーボン抵抗を1個はんだ付けするのでさえ我輩が頼まれることがあるくらいで、
それくらい誰でもできてもよさそうなものなのに、あまりの手際の良さに感心さたこともあるほどなのだ。

我輩は中学時代から電子回路工作やっており、そのときDIPのICのはんだ付けが超難しいと感じたのはよく覚えている。
その中学時代からのキャリア(笑)がなかったとしたら、QFPのICのはんだ付けなんて人間のやることじゃねえくらいに見えるかもしれないとは思う。



上司には
「いつの間にやらはんだ付けが特殊技能化してるんですけど、こんなんでいいんすかwww」
と話したら
「特殊技能持ってるんだし仕事がなくならないから良いことなんじゃね?」
みたいに言われてしまった。

もはやはんだ付けが特殊技能であることは上司公認である。
そしてハンダづけのロストテクノロジー化は進みつづける。

水ぶくれはガーゼで覆ったほうがいいのか?

2014-09-05 21:51:14 | 科学




やけどしてしまった。

こんなデカい水ぶくれってできるんだ!?
ってほどすげえのができてしまったわwww

写真ではよくわからんのだが、ちなみにこの巨大水ぶくれの勢力圏内に入らない左の部分も、赤く腫れ上がって水ぶくれ気味になっており、明らかに右手より指が太く見えるほどえらいことになっている(笑)。



実はこれ、病院に行っていない。

なぜ行かなかったかというとだな…。
医療関係者に聞いてみたところ、どうも

・水ぶくれは破らないほうが良い
・水ぶくれが破れないように注意して生活するくらいしか治療内容がない
・破れたらバイ菌が入らないように何か手を打つ必要がある

ということなので、病院に行ってもムダぽっぽいのがわかったからだ。

中には、日常生活でそれが破れないようにガーゼをくれた人(医療関係者)もいた。

だけどね。
どうもそのガーゼってないほうがいいんじゃないかという気がしてきた。

これ幸い(?)に我輩が自分の体でいろいろ人体実験してわかったことがあるので以下に記す。





水ぶくれはガーゼで覆わないほうが良い場合がありうる!

医療行為も
「国家資格を持った専門家がやるんだから絶対悪いほうにはならんだろ」
なんて思っていたのだが、実際やってみて
「これやんないほうがいいんじゃね?」
みたいな治療が日常的にありうるのがよくわかった。



追伸:

我輩は医療に関してはズブのド素人なのであまりホンキにしすぎないでね(笑)

試作機ってホントに強いのか?

2014-08-17 20:04:21 | 科学




「アニメやゲームなんかだと、試作機ってのはやたら強い場合があるけどさ、試作機ってホントに強いわけ?」

とはまあ、多くの人が1度は疑問に思うことなんじゃなかろうか。

兵器の話ではないんだが、実際に仕事で試作機ってのをホントに何度か作ったことがある我輩がそのホントのところを話したい。



試作機ってなぜ強いのか?

そう問われるならば、ゲーマーは
「試作機はコスト度外視で高性能なものを作ろうとした結果できたものであり、対して量産機は性能よりコスト優先で作られたものだからだ」
と答えたくなるはずだ。

だがそれは9割がた間違っている。

それが正しい1割の部分についてまず解説する。

試作機というのは試しに作ったらおしまいである。
あたりまえだがちょっとしか作らない。

なので、量産時にはイニシャルコストはかかっても量産コストは安くなる鋳物にする前提で、試作だけはイニシャルコストがかからない切削で作るなんてことはよくある。
また発注数量が100個と100万個だと単価が何桁も変わることもふつうであり、量産時には安くするという約束をとりつけた上で試作用だけは大幅に割高な値段で部品メーカーに発注することもふつうにやる。
だから試作機の制作コストは無視されている部分はたしかにある。

しかし。
「試作機はコスト度外視で高性能なものを作ろうとした結果できたものであり、」
というのは間違いだ。

量産コストの大半はアーキテクチャや設計の段階で決まる。
設計が済んだあとにコストダウンしようとしてもほとんど下げられない。

「試作機はコスト度外視で高性能なものを作っておいて、量産時にコストダウンしよう」
なんていうエンジニアがいたとしたら、そいつはあまり商品開発に従事した経験がないヤツだ。

要求時期が迫ってくると、どうしても発売日最優先でコスト軽視になってしまいがちではあるんだけどさ、まあそれはおいといてだな(笑)。

では!
どういう場合なら試作機というのがありうるのか?

モデルケースを2つほど考えてみた。



[1]
たとえば、ジオン公国第2位の実力者であるキシリア様の大のお気にいりの某大佐の強い要請で作られた、紙装甲でいいから3倍の速さで動くモビルスーツ。

これは非常に発言力の強い特定の顧客へのカスタム対応をあてがった試作機という場合に該当する。
だいたい特定の顧客へのカスタム対応品というのはよその会社にそのまま売れないので、それ専用という扱いにならざるを得ない。
ガンダムだってシャア専用ザクって言ってたじゃあないですか。

こいつはザクの塗装をデフォルトの緑から赤にしろというくらい注文が細かく、エンジニアはさぞめんどくさかったろうと心中お察しいたしまする。



[2]
たとえば、近接戦闘できるモビルアーマー作ったら最強なんじゃね?…ってコンセプトで試作したら、兵器としては使い物にならない駄作ができてしまい、試作のまま永久にお蔵入りするハメになったモビルアーマー。

なんでもそうだと思うが、とりあえず現物を作ってみないことにはわからないものというのはいくらでもある。
近接戦闘できるモビルアーマーは、モビルアーマーであるがゆえに可動部が少なく、それゆえに連邦軍の学生パイロットにまで攻撃が単調すぎるとナメられてしまう有様だった、悲運すぎる運命のザクレロ。
現実世界でたとえていうならパンジャンドラムといったところか。
こういうのを見てしまうと「作る前にそれくらい気がつけよwww」と言うかもしれないが、それはあくまで外野だから言えることなわけさ。

世の中には日の目を見ずにお蔵入りになる開発試作品などいくらでもある。



これだけ読むと
「試作機なんてロクなもんじゃないのか…」
と思うかもしれないが、唯一そうではない点がある。

それは、誰が作るかという点についてである。

試作機を作る意義は、ハード設計のバグ出しみたいなのが強い。
だから試作機だとマトモに動かないことはよくある。

ジオン軍だって、これまでより桁違いに出力を増強したバーニアを搭載したリックドムは試作機の燃焼ノズルの耐久性が低かった…という設計上の不具合が見つかったなんて史実があったとしてもおかしくない。
そういうのを見つけられたことこそ試作機を作った意義があったというものだ。

しかし。
試作機を作るのはエンジニアである。

エンジニアは、何をすればどういう不具合が出るのかをよく理解していて、無意識に製造工程上の不具合がなるべく出ないように試作機をくみ上げる。
なぜ試作機を作るのがエンジニアなのかというとだな。
工場の作業員に作業してもらうためには作業手順書を完備しておかなければならないのだが、
しかしながらその作業手順書は現物がないと書きにくく、
にもかかわらず現物を工場で作ってもらうためにはその作業手順書が必要…
という悪循環があるので、最初の1発目はエンジニアが作らざるを得ないことはよくあるということだ。

工場の作業者が日本人の場合、大変丁寧な作業をしてくれるものの、エンジニアではないので何をすればどういう不具合が出るのかという因果関係についての知識は無い。
その点をついた製造工程上の不具合が多発するケースはよくある。

いや、無いというか、工場側の管理職はそういうことまでいちいち自分たちが踏み込みたくないから設計者がそこらへん全部面倒見ろよというセクショナリズム感を強く感じる役割分担がなされたことによってそうなってしまっている面もある。
まあそれはおいといてだな。

たとえばモビルスーツでいうとだな。

通常ならねじ止め部分の材料と材料のすきまには空気があり、それによって余分に上昇する熱抵抗が決まるのだが、宇宙空間は真空であるためすきまにあった空気がなくなってしまい、地球上(またはコロニー内部)とはけた違いに熱抵抗が上昇する。
だからザクが宇宙空間でオーバーヒートするかどうかは装甲のとりつけかた1つで決まる。

そういうことをよくわかっていない作業者がアサインされてしまうとだな。
コロニー落とし目的でサイド5近海の宇宙空間へザクを投入した瞬間にあっという間に壊れるような不良品が量産されてしまうってぇこった。

これがエンジニアがハンドメイドで組み立てた試作機ならそんな問題は起きないはずだ。
唯一それくらいが試作機のいいところかな。






追伸:

「試作機と量産機とどっちがいい?」
と聞かれたら、
「コレクターズアイテム目的でないなら量産機のほうが絶対いい。さらに言えば、新しもの好きでないならファーストロットではないもののほうが絶対いい。そのほうが壊れにくい」
と、我輩ならそう答える。

絶対の自信をもって試作機をすすめられるのは、綾波レイか惣流アスカラングレーの使用済エントリープラグつき試作機の零号機か弐号機が手に入るときだけ…くらいじゃね?

ホンモノの理系から見た小保方氏

2014-05-23 22:53:56 | 科学
“マインド童貞”は、なぜ小保方さんに恋心を抱いてしまうのか?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140519-00030378-playboyz-soci

> 「いやぁ。あれは衝撃的だった。メシ屋でテレビを見てたらSTAP細胞の発見を自慢げに発表してる小保方ちゃんが出てて。こんなに素直な笑顔を見せられる女性が現世にいたのかと。その瞬間、『俺はこのコが好きだ』とわかったな。普段は学歴の高い女なんか大嫌いなんだけど」

> 「STAP細胞はありますっ!」の涙にやられ、会見中に「もう、いじめるのやめろよ!」と、初めて出会った(知った)とき以上の恋心を抱いてしまったのである。

> STAP細胞発見時には『高学歴の理系女は無愛想』というイメージをいい意味で裏切る満面の笑顔で女性らしさを見せつけ、論文騒動での会見時には『女は感情的で面倒な生き物』という定説を覆(くつがえ)す冷静な対応を見せましたよね。女性への偏見や先入観が強いマインド童貞男子ほど、このようなギャップに心をつかまれてしまうわけです」






論文ねつ造でワイドショーをにぎわす小保方氏。
いや、現時点ではまだ論文ねつ造”疑惑”としておこうか。

ヤツにはかねてより違和感を感じていたが、世間には↑こんな目で見る野郎がいるというのを見て驚愕した。

なぜか?

ホンモノの理系、ホンモノの研究開発職従事者である我輩から見た小保方氏は、とてつもないと形容していいほどのコレジャナイ感がそこにあるからだ。

小保方氏は世間ではリケジョなどともてはやされていた時期がある。
だが理系の女の一般形は小保方氏のようなのとは根本的に異なる。
本来ならばリケジョとは、もっさりしていて野暮ったくリクツっぽいが、しかし話をすればこいつはアタマが切れるなとわかる、そういうものなのだ。

小保方氏は、どっか間違って入って理系の学部に来てしまった専門科目はさっぱりできない場違い感満載の女によくありがちなテンプレそのものだ。
その形容はコレジャナイ感と言うのがふさわしい。
小保方氏のような性格のアナログ電子回路のベテランは日本には1人もいないというほうに賭けてもいいくらいだ。



世間でいうリケジョのテンプレは、おそらくエヴァンゲリオンの赤城リツコが最もふさわしかろう。
ああいうボンテージなタイトスカートをはいて白衣を着こなす冷徹系の女こそが世間でいうリケジョだろう。

わたしから見れば、あれはあれで悪くない。

だが、赤城リツコみたいな女が大嫌いな男、たとえば先の

> 普段は学歴の高い女なんか大嫌いなんだけど」

と語る野郎が好きな女の代表こそが小保方氏なのだろう。

この言葉にはペド野郎のような一抹のキモチの悪さを感じるのはわたしだけだろうか?

リアル研究開発職のわたしとしては、学歴の高い女というのは比較的好印象なほうで、むしろバカ女が嫌いだが。

なにかおかしいクラウド化

2014-05-15 21:43:33 | 科学
うちの会社がoffice365を導入した。
それによってメールサービスがクラウド化した。

でだ。
クラウド化したからにはネットワーク上のどこかに物理的な本体がいるはずなのだが、それはいったいどこにいるのだろうか?

・・・というのを調べてみたところだな。



データセンターをシンガポールや香港に置く理由
http://blogs.technet.com/b/bpj/archive/2012/11/21/reason-why-datacenter-locates-in-singapore-and-hongkong.aspx



↑こんなのを見つけた。

マジか。
これじゃああさ、うちの会社の社員がメールを読むたびに海底ケーブルのトラフィックを使うことになるじゃあないですかい。
ちょっと前にインフラただ乗り論なんて言われてたことがあったけどさ、まさにそれがこれじゃん。

我輩がYouTubeで動画見るのに海底ケーブルのトラフィックを消費したほうがまだ有意義なんじゃないかという気がするのだが?

この技術の使い方おかしくないか??

まあ、カントリーリスクという意味でいえば韓国でないだけナンボかマシだが。

太陽電池によくありがちな誤解

2014-04-20 23:07:16 | 科学
とある金融系の記事で、大真面目に書いてあるにもかかわらず内容はけっこうアレなのを見つけてしまった。
これはおおむね世間で共通する太陽電池によくありがちな誤解のような気がするのでここで書いておきたい。



「Ⅲ-Ⅴ族半導体を使って効率30%以上という結果が得られている。これが実用化すればエネルギー問題は解決する!」

これは前半は正しいが、後半はウソだ。

Ⅲ-Ⅴ族半導体は桁違いに高価なので、人工衛星のような「少々高くてもいいからもっと高性能なものよこせ」という用途にしか使えない。

執筆者はおなじⅢ-Ⅴ族のガリウム砒素を使った半導体デバイスがシリコンデバイスに比べてどれだけ高価なのか知らんのだろう。
一般家庭の屋根の上にⅢ-Ⅴ族の太陽電池がずらりとならぶ未来は絶対来ないし、少し知識があるヤツなら誰でもそう予想するに至るはずだ。

もし効率30%以上のものが一般家庭の屋根の上に乗るとすれば、タンデム型か量子ドット型かだと思われるので、もし高効率化に注目されたいならばそちらをご覧あれと言いたい。

ひどいヤツになるとⅢ-Ⅴ族(3-5族)を111-V(111-ブイ族)などと書いているヤツもいる。
これはほんの少しでも半導体物性の知識があれば間違えない。
これはH2O(えいちつーおー)をH20(えいちにじゅう)と間違える化学屋はいないのと同じくらい間違えるはずがない。
そういうアナリストの書いたレポートは注意して読むべしである。



「太陽電池によって石油の需要がなくなる」

わたしはこれはだいぶインチキ臭いと思ってる。

太陽電池で得られるものは電力である。
だが、実は今の世の中では石油ではあまり発電していない。

化石燃料系の発電設備としては天然ガスと石炭がある。
だから天然ガスと石炭は太陽電池と直接競合する。
これは太陽電池の破壊的普及によって需要が大幅に減る可能性はある。

では、石油をエネルギー源として利用しているものは何か?

それは自動車である。

では、車のエネルギー源は太陽電池由来の電気に置き換わるのか?

これは思ったより遅々として進まないぞというのが世間の見方だ。

車の燃料を石油から太陽電池に置き換えるには高性能なバッテリーが必要になってくる。
でないとガソリン車ほど航続距離が伸びないからだ。

だが、そのバッテリーの高性能化があまり進んでいない。
だからそのガソリン車の大半をEV(電気自動車)に置き換えるのはだいぶ先の話になりそうだ。



「太陽電池のコストは待っていればいくらでも下がる」

パネルやパワコンのコストは待っていればいくらでも下がるかもしれない。
だが設置費用がものすごく高く、これがネックになっている。
ちゃんと調べてはいないが、現時点でも半分くらいは設置コストなのではなかろうか。

パネルのコスト削減は材料屋の仕事であり、パワコンのコスト削減は部品屋と回路屋の仕事であるが、設置コスト削減は土建屋の仕事である。
みなさんごぞんじのように土建は技術革新によるコストダウンがそう簡単には起きない世界である。

いくら電気屋ががんばっても、設置コストが全体の8割くらいになってしまった日には、もうそれ以上安くなりそうにはないでしょ?

電気屋が超がんばってコストダウンすればあと25%くらい下げられるかもしれないが、工事費や架台費という泥臭いところがコストダウンできなければそれくらいで打ち止めになる。
これでは日本では補助金なしのグリッドパリティは無理なので土建屋にはがんばってほしいところだ。
まあ、エネルギーの輸入コストが増大したことによって悪い意味でグリッドパリティを達成してしまう可能性は十分あるような気はするが。

エンジニアのリスク回避能力について

2014-04-19 21:05:56 | 科学
上司はわたしのことをリスク回避能力が高いヤツだと思っているようだ。
それほど自覚はないのだが。

話を聞くに、


「実験していたら、この回路どうやらこの条件のとき動かないことが判明しましたw」
「で、どうすんの?」
「こういうときのために余ったところにダミーのロジックを入れておいたので、そっちに迂回させれば多分なんとかなるのではないかと」


「この回路思ったより難物ですねぇ。目標性能出すのけっこう大変かもです…」
「で、どうすんの?」
「少なくとも○○にすれば○○までは性能出ることはあらかじめ確認してあるので、箸にも棒にもかからんようなどーしようもない状況にはなりはしません。まあそれでいいかどうかというのは話は別ですがw」


「こいつをこの条件で測ってみたらこんな特性でしたから大丈夫でしょう」
「じゃあこの条件だとどうなの?」
「この資料にはのっけてはいませんけど、一応ちらっと見た限りにおいてはだいたい同じくらいの特性でしたから、端から端まで全部見たわけではないので断言はできませんけど多分大丈夫です」


とまあ、こんな応対をすぐしてくるところがそうだと言っていた。

別にこれは課長が無能なわけではない。
いちおう個人名を特定できるヤツのために言い訳しておくと、課長の得意分野とわたしの得意分野が全くかぶっていないことによって、それがいい方向に作用した結果であると言っておく。



世間でもリスク回避能力の有無によって致命的な大損害になるかどうかが決まった例は数多くある。

ダメな例でいえば、福島第一原発。
「5重の壁で守ってありますので万一のことなんて起きませんから絶対安心です!」
なんて言ってたくせに、1回のシビアアクシデントで5重の壁がぜんぶやられやがった。

良い例でいえば、はやぶさ。
イオン源がブチ壊れたエンジンと中和器がブチ壊れたエンジンをクロス運転できるようにしたその設計。

これ、東電が音頭とっていたら
「エンジンが全部壊れるなんて想定外です! 想定外の自然災害ですから我々は悪くありません!」
なんて言ってるところだ。



でだ。
この話には先がある。

課長はこのリスク回避能力を課内共有したいと言っているのだが・・・

さてどうやればそんなことができる??

その場では
「こういうのは実際にやってみて痛い目に合って覚えるもんなんじゃないですかねぇ・・・。
体系立てて人に教えられるようなもんじゃないような気がします」
と答えておいた。

そしていま改めて考えてみてもそれを人に教える方法は思いつかないでいる。



世間では失敗事例の共有化を促進したい管理職は大勢いるようだ。
だが失敗事例データベースを作ったとしても全く活用されないという話も聞く。

なぜか?

たとえばだな。

事例:作ってみたら設計値ほど性能が出なかった。
原因:設計時に寄生容量を考慮していなかった。
知見:あらかじめ設計時に寄生容量を考慮する。

なんてのが失敗事例データベースに載っていたとする。

これを見たエンジニアはどう思うか?

「クリティカルなところの寄生容量を考慮せずに設計していたら、そりゃー性能が出ないに決まってるだろ。単にこいつが愚かだっただけなのでは・・・?」
としか思わない。

これでは失敗事例は活用されない。
だが失敗事例のレポートは得てしてこういう記述しかなされていないし、自分が執筆する側になったとしてもこれくらいしか書きようがない。

そういう意味でもリスク回避能力の共有化はとても難しいように思われる。

永遠の命があったとしたらどうなる?

2014-04-09 00:01:34 | 科学
永遠の命。
これは科学の分野における至上命題の1つだ。
そして古代中国の皇帝が最後に欲しがったものだ。

では、永遠の命があったとしたらどうなるのか?

これは想像でしか答えられん問題だが、考えてみるのもおもしろかろう。



まず創作物の設定からいろいろ拾ってみる。

「ダイの大冒険」という作品。
この中ではたしか、魔族は人間の何倍もの寿命があるが、逆に時間はいくらでもあるために人間ほど波乱万丈の人生を送ることができない、というようなことを語る魔族のおっさんがいた。

「アームズ」というマンガに登場する鉱物生命体。
こいつらは億年単位と思われる無限に近い寿命を持ち宇宙空間でも生存できる頑丈極まりない生命体だ。
だが感情や精神が未発達で、それゆえに貧弱極まりない人間が進化で獲得した感情や精神に強い興味があるのではないか…というような解釈がなされている。

「ジョジョの奇妙な冒険」のカーズ。
ヤツは永遠の命を手にいれてほどなくして考えるのをやめた。

「ギガウイング」のシュトック(通称:緑のおっさん)の奥さん。
この人は魔法の力で難病を直してもらい、病気1つしない不老不死の体を手に入れたが、バケモノと化したことが最終ステージで判明する。

・・・ということはどういうことかというと?

1つは、精神と肉体の同時進化は難しいのではないかというのが人類のコンセンサスであるということだ。



肉体と精神ではないが、目と耳と鼻を例にあげる。

目と耳と鼻の3つともが高度に発達している生物はいないと言われている。

人間は目と耳が発達していて鼻はイマイチ、
犬は耳と鼻が発達していて目はイマイチ、
というぐあいだ。

肉体と精神もそれと同じような、進化の方向性としては矛盾する関係にあるのかもしれない。



実際、人間を不老不死化するにあたり最後まで難問になるところはどこだろうか?

それは、脳だ。

なぜか?

脳の劣化をくいとめるのが桁違いに難しいからだ。
臓器は培養して取り替えるなんていうインチキ技が使えるかもしれないが、脳だけは取り替えるわけにはいかないからだ。

・・・いや。

そうではないな。

「人間は脳を取り換えることで不老不死化できる可能性がある」
と表現したほうが正しいことに気がついた。

ということはやはり。
肉体と精神は両立するのがとても難しい関係にある理由がまた1つ増えたということか。



たしか古代ローマ人の誰かさんは
「健全な肉体には健全な精神がやどる」
と言っていたような気はする。

ところがどっこいこれはウソッパチだったということにもなりうる。

人間は肉体か精神かのどちらか1方しか高性能化できないような気がする。

人間は、脳筋やジャイヤンか、ガリ勉やオタクか、そのあいだのどっちつかずか、ほとんどのケースでそのいずれかにしかならいことがそれを証明している。

・・・いや。

そうでもないかもしれん。

「健全な」とは書いてあるが「高性能な」とは書いていない。

たとえば、アームズの鉱物生命体は誰が見ても健全極まりない肉体であり、そしてなおかつ高性能ではないが健全な精神を持っている可能性はある。

デジタル屋さんの今

2014-04-06 20:50:27 | 科学
知り合いのデジタル屋さん(論理設計と論理検証の専門家)が興味深いことを言っていた。

昨今は
「ASICの設計案件が減っている」
という。

それによって
「デジタル屋さんの必要な人数も減っている」
のだとか。



数年前まではこれと全く逆のことが世間でよく言われていたことを思いだす。

そのときは
「論理設計の規模がすごい勢いでどんどん複雑になっていっており、その速さはEDAツールの進化では追いつかず、設計工数がうなぎのぼりになっている」
と言っていた。
ここでいう”設計工数がうなぎのぼり”というのは”デジタル屋さんがたくさんいる”というニュアンスを多分に含む。

ところがどっこい、今はそうではないというのだ。

なぜか?

うちの会社の個別事情を書いてもしかたがないのでそこは書かないが、一般論としては・・・
「1個の設計案件に必要な人材の物量の増加よりも、設計案件の減少数のほうが多かった」
・・・というものなのかもしれない。

だいたい日本の携帯電話が世界を席巻していたころはプロセッサを各社で設計していたが、今はQualcommかNVIDIAから買ってきて載せるだけだ。
仮に自社設計するにしても、chip全体としては当時より遥かに複雑になるが、プロセッサコアなんてTSMCの特定のプロセス用に物理設計まで済んだARMのコアを買ってきて載せるだけだろうし、そうなると自社設計するところは多くてもシステムレベルとペリフェラルしかなくなる。
しかも、もしそれをやるならQualcommかNVIDIAから買ってきて載せるだけより競争力のあるものを作らなければならないときた。

うぅむ、困ったもんだ・・・。

先のデジタル屋さんはもはや論理設計と論理検証の世界には見切りをつけており、しばらくは仕事のありそうなべつの分野に転業するようだ。
氏が早めに脱走したことにより構造的失業のあおりを受けなくてすむというメリットを享受できると言えるのかどうなのかについての判断にはしばらく時間を要する。



かつて電気機器が高成長業種だったころ、とにかく人が足りなくて、中の上くらいの人材がとにかくたくさん必要で、エンジニアをたくさん囲って人海戦術のごとく新製品を開発していたようなフシもある。
だが、もはやそういう時代は歴史の1ページとなった過去のものだということなのかもしれない。

着眼点の全く違う2人のしごとのしかた

2014-04-05 23:34:56 | 科学
上司から言われてはじめて自覚したのだが、わたしの仕事の仕方はボトムアップアプローチらしい。

ボトムアップアプローチとは?

直訳ぎみに簡潔に説明すると、ものごとを下の階層から上へあがる方向へ分析を進める手法のことである。

つまりどういうことかというとだな。

ある問題があり、その解決方法は現時点では全くわからないとする。
これを解決するためにわたしが仕事の上でよくやる手順としては・・・



全くわからない状況ではとっかかりがないので、とりあえず手あたり次第に条件をふって測定してみる。
 ↓
あれこれやってみてみたあと、設定値と測定結果とをじっくり眺めると、だんだんと何がしかの法則性があることがわかってくる。
 ↓
その法則性を発生させる設定値と測定結果との間にある因果関係の理屈をあれこれ考えてみる。
 ↓
理屈がわかりさえすれば大概は何とかなるもんで、あるパラメータだけを変更して良くなる場合と悪くなる場合を発生させ、その理屈とツジツマが合うことを実験的に確認する。
 ↓
ツジツマが合っていることが確かめられれば理論はともかく正しいはずで、それを数式化なり条件化なりしてみる。
 ↓
それを数値解析やシミュレータに放り込んで現物と同じ挙動を示すことを確認し、理論化が完成する。

・・・とまあ、こんな感じだ。



わたしの上司はトップダウンアプローチが得意であり、そういう人からするとわたしのやりかたにはとても驚くらしい。

なぜかというと・・・

説明を聞けばたしかにそうかもしれないとは納得するが、何でその実験結果群からその根本原因を推論できるのかがとても不思議だ・・・。
理論的な裏付けが乏しいのにちゃんとそれを記述できているモノができあがってしまうのは何故なんだ?
でも腰を据えてじっくり考えてみるとたしかにその数式で合っているのは確認できたのだが、なんでその過程をすっとばして答えだけが先に出てきたんだ?

・・・という感覚のようだ。

わたしにとってはそれほど変な気はしないのだが(笑)。



で、上司はどうなのかというとだな。

まずいちばんシンプルなところから数学的にモデル化する。
 ↓
それから少しづつ現状の問題が起きている複雑な状態にまでモデルを拡張していく。
 ↓
全体を説明できる数式モデルができあがったら数値解析してみる。
 ↓
モデル化が正しいことが確認できたら、望ましい結果が得られる設定値を導き出せるように式を変形できれば理論化が完成する。

・・・とまあ、こんな感じだ。



なんでこの方法論の違いが出るのかというと、お互いの出自に原因があるような気がする。

わたしは大学時代に真空管アンプを作って遊ぶのが好きで、バイト代何か月分というような額の部品をそろえて動かないと泣きそうになりながらトラブルを解決してきたし、それが転じてエンジニアにもなった。

上司はもともと論文を投稿して学会発表してくることを生業としていたし、大学の先生のような理論肌の持ち主にとても近い。

それぞれの世界ではアプローチのしかたが逆だと問題に対処できなかったはずだ。



これはどっちが正しいというものでもない。

ボトムアップアプローチでは、必ずしも理論的に正しい解決方法にはならず、やる前よりは明らかに良くなったからこれでいいでしょ?みたいな、臭いモノに蓋というか、その場しのぎの解決方法になりやすい。
だからイノベーションを起こすという意味では不利だと感じるし、トップダウンアプローチで問題を解決できるヤツらのアタマの切れ味には時に感服する。

トップダウンアプローチでは、たしかに数学的には正しいのだが、それをそのまま回路で実現するのは無理かな・・・という提案になりやすいし、作ってみたはいいが動かんというときにはとても困惑する。
だからそれを作ってみせるときに、回路設計ができてなおかつ現物の回路の上ででも問題なく動くように元の理論にまで戻って修正を加えられるヤツが別に必要になる。

実はこのボトムアップアプローチでは苦手なところはトップダウンアプローチのヤツが得意とするところで、逆にップダウンアプローチではうまくいかないところはトボトムアップアプローチのヤツが得意とするところだ。

なんとこの両者は補完関係にある。
ある意味で我々はいいコンビなのかもしれんという気もする。

最近のアナログ屋さんのお仕事

2014-03-21 22:02:39 | 科学
最近やっちまったお仕事上のトラブルのことを書きたい。
読めばアナログ電子回路のエンジニアのお仕事がどんなもんかが少しおわかりいただけるかもしれない。






とある機能をもったボードを作ることになった。

こいつはアナログのパワーアンプとADCとDACとマイコンを使ってその機能を実現することにした。
ところがどっこいデジタル屋さんやソフト屋さんは引っぱってこれそうになかったし、たいした規模でもないので、アナログ屋さんの我輩がそれ全部を担当することになった。

まずパワーアンプ。
こいつは精度は悪くていいから高速に動作して、定電流出力で、なおかつ大電流を出力できる必要がある。
だがそんなものが世の中にない。
だからディスクリート部品を使って自分で作ることになった。

こういうのはアナログ屋さんの腕のふるいどころである。
しょうがねえなぁ…とでも言いながら設計に取り掛かるわけだ。

たまたまアナログICの世界で大手の某社がエンジニア連れてやって来ており、
「なんか困ってることないですか?」
と言うものだからさっきのパワーアンプの仕様を説明したところ
「うーん…、そういうのは当社に限らず世の中にないですねぇ…」
と、想定どおりの返事となり、
「やっぱりそうですよね~」
「で、どうされるんです?」
「しょうがないからディスクリート部品つかって自分で作りますよ」
「ご自身でですか?」
「そりゃー世の中にないんだから自分で作るしかないでしょw」
という話をしていた。

このパワーアンプだが、実験してみると、とある条件で途中の段の回路の電圧が振り切れてしまい、それはそれでかまわんのだが、そこからリカバリするのに時間がかかりすぎるという問題があるのがわかった。
この問題は手持ちで持っていたダイオードを追加することで片づけた。
(これがあとで痛い目に合う原因となるのだった…)

ADCとDACとマイコンをつなげてそれっぽく動作していることを確認し、バラックは完了。

ボードを設計する段階になって、実はさきほどつけたダイオードが既に製造中止になっていて社内で使用規制がかかっていることが判明。
それをゴリ押しするのは社内事情的にとてもめんどいので、ダイオードなんてどれも大して変りはしねえだろうという適当すぎる理由で社内に在庫があるやつの中でいちばん安いのに交換してボード設計した。

ボードが上がってきて見てみると、だいたい動いてはいるものの、どうも挙動がおかしい。
調べてみると、どうもダイオードの逆バイアスでのリーク電流が流れ、パワーアンプが発熱することでそれがどんどん大きくなっていって挙動不審になっていることがわかった。
系の中にデジタル系が入ってるので、パワーアンプの特性がそのまま1対1で出てくるわけでもなかったのでよけいわかりにくかった。

「バラックではちゃんと動いてたはずだよな…?」
と思いつつデータシートを調べてみると、実験で使ったダイオードより2桁以上デカかった。
「なんてこったいwww これぞ安物買いの銭失いというところかwww」
などと言いつつ、データシートを見ながらマジメにダイオードを選定して交換した。
リーク電流はバラック実験で使ったヤツより1桁以上良いものにしておいた。

これでちゃんと動くはず…なのだったが。
どうもまだ別方向に挙動がおかしい。
全体で見ればだいたい動いているのだが、デジタルの設定値に大きなオーバーシュートが起きている。

「バラックではちゃんと動いてたはずだよな…?」
と思いつつ、マイコンの演算途中の値を吐き出すようにプログラムを改造し、演算結果を見てみたが、いちおう想定どおりには動いているように見える。
パワーアンプだけ見てもマトモに動いているように見える。
ナゾだ…。

値がおかしくなっているところから逆算的に原因を追っかけていると、どうやらデジタルとアナログのループ内で位相余裕が減りすぎているのではないかという推論に至った。
これだとパワーアンプ単体やプログラム単体を見ても原因はわからない。

さらに調べてみる。
パワーアンプがバラックのときより性能が良くなっている。
目標性能以上に良くなっているのなら問題ないと見過ごしてしまっていた点だ。
だが、パワーアンプがより高速に応答することで位相余裕が減る方向にいってしまい、結果としてオーバーシュート発生につながってしまったようだ。

なんでパワーアンプがより高速に応答したのかというと、交換したダイオードの性能がすばらしすぎて寄生容量が減ったためだった。
バラックで何もしなくてもちゃんと動いたのは、絶妙なバランスによるたまたま起きた結果だったようだ。

で、対策方法。
やりかたとしては、ダイオードの両端にコンデンサをくっつけて、バラックで使ったダイオードくらい悪くするという手もあるのだが、わざわざ悪化させるというのも方法論としてはスマートではない。
なのでアナログの側はいじらずに、プログラムの側で3次のFIRフィルタを追加して位相補償して解決した。

…とまあ、アナログ屋さんはこんなことをよくやっている。






でだ。
こういうことを繰り返しているうちに薄々気がついたことがある。

それは…
アナログ屋さんがアナログ電子回路の設計ができるというのは当然だが、そうじゃなくてアナログ回路を制御するほうの仕事のほうがどんどん増えているということだ。



これは機械屋さんに例えればわかりやすいことに気がついた。
機械屋さんが応力計算できるのは当然だが、それができたからといって競争力がつくわけでもない。
機械を制御するほうのウェイトのほうが重要になってきている。

たとえば車でいうと、設計荷重に耐えられる厚みを計算したとしても車としては競争力がつくわけでもない。
そうじゃなくて、コーナリング時のブレーキ配分や衝突防止の制御アルゴリズムのほうが車としての競争力になるだ。

仕様ができているアルゴリズムをマイコンに実装する腕前でいえば、機械屋さんよりソフト屋さんのほうが向いているのは間違いない。
だが運動方程式から理論を構築できるヤツでないとそのアルゴリズムは仕様化できない。



今回の我輩の件でいうとだな。
もしアナログ屋さんの我輩がパワーアンプの設計だけやってデジタル部は丸投げだったとしよう。
そうすると、

「パワーアンプ単体ではちゃんと動いているっぽいんだけど、全体で動かすとなんか挙動がおかしいんだけど…」
「プログラムは仕様どおりには作りましたし、そのとおりに動いていることも確認しましたよ」
「じゃあなんで挙動がおかしいんだろうね…」
「いやそれを私に言われても困るんですが…」
「困ったな…」
「マイコンのオペレータとして実機デバッグには付き合いますけど、トラブルシュートの方法はあなたに一任します」

…なんてことにしかならん気がする。
これだといつまでたってもトラブルは解決できない。

これはソフト屋さんが悪いわけではない。
多少なりともアナログ電子回路と自動制御理論の知識があるソフト屋さんをアサインしてくれなんて要求するのは無茶ぶりだからだ。
アナログ電子回路と自動制御理論の知識がある人がマイコンのプログラムを多少書けるようになるほうが解決策に近い。

そういう意味で、アナログ屋さんは純粋にアナログ電子回路だけやっているわけにもいかなくなっていて、むしろアナログの回路ができるのは所与のものであって、それを制御するところまでのほうがアナログ屋さんのメインの要求スキルになりつつあるということだ。

A-D/D-A変換ICの実用技術 [レビュー]

2014-03-16 23:41:47 | 科学

http://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/42/42891.htm

A-D/D-A変換ICの実用技術
アナログ・デバイセズ 著
黒田 徹 訳
B5判 640ページ
定価9,240円(税込)
JAN9784789842891



↑これ読んだ。

まずひとこと。

高い!
1万円近くしやがる!
というのが初対面の印象だったがね(笑)。
読後の今では、まあ大判で620ページもあるし、内容からすればそんなもんかなという気もしてきた。

この本のタイトルは「A-D/D-A変換ICの実用技術」とはなっている。
だが実はA-D/D-A変換ICの設計方法は記されていない。
アナデバからADCやDACを買ってきてそれを使いこなせるようになるための周辺技術を書いた本という立ち位置だ。

ぶっちゃければ
「うちのICは中身を○○という具合に作ってある。
こいつは○○のように使わないと性能を発揮できない。
だからこれを使うときは○○に気をつけて回路設計しろよ、わかったな?」
というような本だ。

だからIC設計者が買うとガッカリするかもしれんが、回路屋が買うぶんには悪くはない。

この本は総体的には悪くない。
日本語の技術書は、初心者むけすぎてヌルすぎる本か、大学教授の書いた数式ですべてを語る読みにくい本かしかないことが多いが、その間を埋めるポジションにある本だ。



この本はあまりケチをつけるところはない良い本だが、2か所ほどケチをつけたくなるところがある。

1つは電源レイアウトのところ。

この本に書いてあることは原理原則的には間違ってはいない。
いやそれどころか知識のない人に原理原則を叩きこむにはこの本のように説明するのが正しい。

しかしわたしはそのように設計しないことがよくある。
たとえば、アナログ回路用の電源にDC-DCコンバータを使わざるを得ないとき、配線のドロップで少し損失が増えることには目をつぶってでもノイズをなるべく落としたいというような設計のとき、この本の説明のようにありとあらゆるところをグラウンドプレーンに最短で接続するというようにはしない場合がある。

そういうとき、
「この本には○○って書いてあるんですが、なんで先輩はその原則をガン無視してるんですか? ひょっとしてそんなことも知らないんですか?」
なんて言わないように(笑)。



もう1つは伝送路のところ。

ホントは伝送線路理論で説明しないとちゃんとは説明できないところを、あえて伝送線路理論をガン無視して無理やり集中定数(抵抗とコンデンサとコイル)で説明しようとしている。

とはいっても伝送線路理論から説明しはじめるとそれだけでかなり物量を使いそうだし、そこまで深入りしないほうがわかりやすいので、これはやむを得ない。

でも、間違ってはいないけど、なんかなー・・・、と思わなくもない記述が少々。