撮り旅・ヨーロッパ

ハンガリーを拠点にカメラ片手に古い教会を主に写真撮影の旅を楽しみ、そこで拾った生活、文化情報を紹介します。

バラトンをスケッチ(7)

2020-01-08 13:39:39 | 海外生活

 我が家の庭で、一番陽当たりの良い場所なのであろうか、洋菊が10月中旬頃から咲き続けて

おり、12月になると黄色いウンナンローバイが春を待たずに、フライング気味に咲き始めた。

<スケッチ>

   断捨離というよりは、むしろお迎えの時に出来るだけ

   残る物は少なく、後片付けしてくれる人に迷惑の掛からないようにと、日常生活を営む上で

   最小限だけにしておこうなんて思っている昨今である。

   今まで引っ越した先々で物を新しくするので、引っ越し貧乏どころかドンドン物が増えて 

   いってしまった。

   外国で残しても、どうにもならないのが日本語の本であろう。 とにかく重くて、嵩張って、

   おまけに読める人が少ないと来ており、処分に困る代物であることは間違いない。

   定年後はハンガリーで、姿を消して久しい貸本屋でもやろうかと思っていたくらいなので、

   半端ない数に増えてしまった。

   そんな中で1冊だけ、ろくに読むこともなく15年も本棚の片隅に埃を被っていた地方の

   新聞社で、「30年間おんなひとりで新聞づくり」に勤しみ、会社の創業者から引き継いで

   17年間書き続けたコラムをまとめた本だ、ほゞ自費出版であろう分厚い1冊である。

   新聞記者という過酷さから身体を壊し、その地方新聞社を2004年に畳むことになったが、

   その当時にスナックの飲み友達というよしみから戴いた本である。

 

 Nov. 18 2018 .... 洋菊は最盛期であった。

 

 Dec. 02 2019 ..... 初雪に見舞われた。

 

  その本には、2004年8月5日付の朝日新聞の切り抜き記事が挟まれていたので、恐らく彼女

 が大切にしていた残り少ない本であったのかも知れないと今になって思ってしまう。

 そんな大切にしていた本を読まないまま、もし捨ててしまったら、あの世で「どうだった?」

 と聞かれた時に返事に困るので、早く読み上げて、日本に帰った時に返そう思っている。

 読んでくれる可能性のある日本に戻した方が、絶対にいいに決まっているし。

 但し、まだ存命であってくれたらの話だが(今、90歳くらいの筈)

 もし、不幸にも返すことが出来ないとマズイので、読んだ証を残しておこうと.....

 

 Dec. 17 2019 ....  洋菊が衰え始め、ピンク色が増してきた。

        替わりにウンナンローバイが咲き始めた。

 

 Jan. 08 2010 ..... 今日現在

 

<昭和46年から一章を紹介>

「少年の優しさ(page47)」                    May 16 1971 記

  日曜日の朝、八時ごろ家の前で少年が「おばさん」と呼ぶ声に出ていくと、道路沿いに咲く

 我が家の赤いカーネーションを指さして「今日は母の日だけどプレゼント買ったら小遣いが

 なくなっちゃた。 このカーネーション一本だけ欲しいナ」と言う。

 小学校5、6年生くらいの坊やだったが、その明るい素直な態度は気持ちが良かった。 

 「一本といわず、好きなだけ持っていきなさい」というのに「お母ちゃんにあげるのは一本で

 いいヨ」と気に入ったのを一本、大事そうに手にして走っていった。

 たった一本の花を、ちゃんと断って持っていった少年。 母の日に贈ろうとカーネーションを

 探していたのかも知れない。  あいにく前日からの雨に打たれた花は、あまりいい形では

 なかったけれど、少年には、紛れもなく愛と感謝の花に見えたであろう。

 爽やかな朝のひと時だった。

                                                                ....  引用:「社内独語」砂子屋書房

 

  このコラムは愛知県の碧南市内の隅々を自分の足で取材し、昭和世代の西三河地方のまさに

 ローカルなすべての分野における歴史を綴ったもので、「中部新報」紙上に連載されたもの。

 この本には、昭和46年から昭和63年までのコラムを抜粋してあり、実に心がポッコリさせ

 られるものが多い、各年ごとから一件づつ紹介出来たらいいなあと。

 

    これにて、「バラトンをスケッチ(7)」は、お終いです。

    本ブログへのご訪問、有難うございました。