goo blog サービス終了のお知らせ 

「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

           扇風機へのノスタルジア

2011-06-10 06:01:14 | Weblog
予想される電力不足に備えて節電用に扇風機が今売れているという。わが家でも天井裏から老妻が古い扇風機を引っ張り出してきた。ここ何年使ったことがなく、果たしてモーターが回転するかどうか心配したが、なんとか使えそうだ。しかし、昨夏のような猛暑ではとても扇風機だけではすまされそうもない。熱中症にかかっては大変だ。

戦前、わが家には扇風機はなかった。僕の記憶では、東京でもたいがいの家はなかった気がする。それでも子供だったせいか、あまり暑いとは感じなかった。しかし、母親が道路に打ち水をしたり、来客があると冷たいおしぼりを出したり、団扇を勧めたりする光景が脳裏にあるところを見ると、やはり大人には暑く感じたのであろう。

エアコンがまだ普及していなかった時代、僕はしばしば東南アジアへ旅行したが、南の国では扇風機が必需品であった。旅行者なので、一般家庭は知らないが、ホテルやデパートなどへ行くと、天井にプロペラの羽根のような扇風機が備えてあり、それがゆっくりと回転している情景がいかにも南国らしかった。英国の作家サマーセット・モームはシンガポールのラッフルズ・ホテルに長期滞在して作品を書いているが、彼の短編小説には扇風機がよく登場する。

今回の東日本大震災の変なおかげで、思わぬ昔の道具を目にする、テレビを見ていたら若い女性が、なれぬ手つきで洗濯板を使って洗いものをしていた。原発もそうだが、あまり効率性だけを追求するといけないのかもしれない。その意味では、天はわれわれによい反省の機会を与えてくれたのかも。