またたび

どこかに住んでいる太っちょのオジサンが見るためのブログ

BUTTERFLY-2

2009-02-16 08:04:34 | またたび
 見せ掛けだけの作り物が放つ、赤や黄色の光の流線はクリスマスで彩る街の象徴だ。
 この季節に彼女がいない僕にとっては、ただ早く過ぎ去ってほしいと願うばかりであった。
 今年は去年に増して雪が多いためか、余計寒く感じた。
 クリスマスイヴの日には必ずバイトが入っている。というか、無理にでも入れている。
 イヴの日はバイトがあると言い訳にもなるし、時給もその日だけ高くなる。理由を後付けして、どうにか自分を肯定させていた。
 もちろん出来ることなら仕事はしたくない。
 着替えのロッカーの前でタバコを吸いながら、同じ状況にあるバイト仲間に愚痴をこぼした。
 彼氏、彼女がいない同士で飲みに行かないと誘われたが、結局行かないことにした。
 バイクだったこともあったし、自分の中で何かかが、崩れそうな感じがしたのも、行かない理由の一つだった。
 いつも通りに夜の十時過ぎにバイトが終わり、足早に店を後にした。
 雪が散らつき、クリスマスの幻想によって、暖色の色に変化し、地面に落ちるとすぐに消えていった。
 帰りはアーケードを通らなければならない。
 僕はいつも以上にカップルだらけの人ごみに溢れる道を右へ左へと掻き分けて、駐輪所に向かった。
 屋根のなかったためバイクのシートの色が黒から白へと変わっていた。
 雪を払いのけ、悴む手でキーを取り出した。
 古びたエンジンはなかなか唸り声をあがらない。
 ようやくエンジンがかかり、ゆっくりと走らせた。
 寒さが骨身まで伝わるようだった。
 十二月の風は防寒越しでも寒さを防ぐことは出来ない。
 凍てつく雪が体温と気持ちさえも奪ってしまう。
 信号で捕まり、エンジンの振動が身体を震わせた。