"ないてい"には内定と内偵のふたとおりの言葉があって、かな文字は全く同じでも読みは少し違う気がします。
内定は内偵よりも「てい」の発音をはっきりさせないという、ごくわずかの差ですが意味とのかかわりがあるようです。
これは泡のような感覚ですから、確証はありません。
内偵は、ひそかに相手方の状況を探る行為で、「内」と「ひそかに」は意味が通じ合っています。
ところが内定は、「内」という表現でありながら契約の成立であり、内定式という大仰な儀式まで行われているのを見れば、表向きの内という文字の意味とは反対の商慣習に使われる言葉になっています。
口約束程度のもう少し柔らかい結びつきには、「内々定」という、ご念のいった表現も用意されています。
労働市場の売り手が強くなっている状況のもとでは、内定をいくつも持っていると自慢して歩く、人倫から外れかけても気にしない学生が出てきます。
内定を出すとか取るとかいうのも、業界での奇妙な季節用語です。