Chef's Note

『シェフの落書きノート』

初めてのバイト体験記

2005-11-23 | 自由 気ままな独り言
高校1年生の夏休み。
「ねぇ…一緒にバイト行かない?」
…と友達に誘われた。

「えっ!バイト?…なにするの?」
とオイラは聞き返した。

「レストランの皿洗い。募集してるんだ…
一緒に行こうよ!」
と友達。

「皿洗い?…えー…違うのないの?」
とオイラ…。

「なんで?皿洗いは、嫌なの?」

「んん…。嫌だな…。皿洗いって…女のする仕事じゃないの?」
とオイラ。

「そんなことないよ。行こうよ!レストランに面接しに…」
と友達。

そうだった…皿洗いの仕事って女性がする仕事だと、その頃のオイラは、真剣に思っていた。

オイラの育った環境は…男は、台所に立ってはならぬ…的な考え方を教えられていた。

信じられないですよね…。
オイラの両親…それから、しばらくして、ずいぶん変わりましたが…。

その友達。
気乗りしないオイラを半ば…おだてながら、そして強引に連れて行ったのでした。

皿洗いのバイトを始めたオイラ。
湘南、逗子の有名な大きなレストラン。
今でも、そのお店は名前は変えたけど…ちゃんとある。

その頃、コックさんは10人以上いたかな…。

忙しくて…まさに戦場だった。

忙しい最中…コックさん同士が喧嘩を始める。
そんな事は、日常茶飯事!

いきなりフライパンが飛んでったり…
「表へでろ!」
なんてのもよくあった。

忙しいのに…ふたりでつかみあって店の外に出て行ったふたり…。
しばらくすると…肩を組んで戻ってくる。

殴りあった後…そのふたりは、親友のように仲が良かった。

また、何日か経つと…また、殴りあう。
その繰り返し…。

オイラ、そのバイトを始めて気がついた。
「これは…男の仕事だな!」
って。

「洗い場は、キツイからふたりで交替でやりなさい」
と言われ…
友達とオイラで一日づつ交替制でやることになったのだが…

一緒に行った友達…。
二日目ではずされた…。

オイラ…ひとりで洗い場をやるはめになった。

その頃、洗浄機なんてものはない!
すべての皿を手洗いなのだから…。

ちょっと目を離すと…
皿が山のようになってしまう。

熱いお湯の中に汚れた皿をつっこみ
洗剤をいれて次々と洗い…すすぎ槽のシンクへ入れていく。

すすぎが終わると…
ステンレスで出来た網に皿を並べて
煮沸消毒をする。

そして、各ポジションへ洗い終わった皿をセッティングしていく。

忙しい…とにかく忙しい。
誰が喧嘩してようが…気にしてる場合ではない。

フライパンや鍋が飛んでこようが…
関係ない…。
目を離せば…皿が山のようになってしまう。

ランチが終わると…
仕込みの時間。

洗い場のシンクに玉葱を入れて皮をむくのが日課。

普通で、2ケース(40キロ)の玉葱の皮をむく。

多い時で3ケース。

お湯と洗剤で手荒れはひどかった。

そこに…玉葱の皮むき…
沢山の玉葱の皮をむくと…
手の色が、真っ黄色になった。

手が荒れて、手の皮がむける。
黄色に着色した所とむけた所の色が違う。

オイラ…その頃、女の子の前で手をかくした。
恥かしかった。

オイラの手…ボロボロだった!

とても、ミュージシャンを目指しているような繊細な手ではなかった。

付き合っていた彼女の前でも…手をかくした。

その頃、彼女に会っても…彼女に触れる事が出来なかった。

玉葱の皮むきが終わると…
ハンバーグの仕込み。
10キロの合挽きの挽肉を玉葱のソテーやケチャップ、パン粉などを混ぜてこねる。

手が凍りそうに冷たかった。

「これ位でいいですか?」
と聞くと…。

「んー。まだちょっと甘いな…。もうちょっとネリが出るまで…」
と言われて…ひたすらこねた。

本当に…手が凍りそうになる位、冷たかった。

でも…なんか充実してた。
自分で何かやってるという充実感があった。

調理場のコックさん皆が可愛がってくれた。

夜、仕事が終わって着替えると…
シェフの机の上にデミグラス・ソースがたっぷりかかったハンバーグ
サラダ、そしてライスが置いてあった。

「ごくろうさん…疲れたろ? 頑張ったな…それ食べて帰りな…」

いつも…そう言われた。

嬉しかった。



初めてのバイト体験記 #2 へ続く

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