厳しい今年の冬
北朝鮮にも猛烈な寒波が押し寄せているという。共同通信の伝えるところによると、昨年末から本年正月下旬までの約一月の平均気温は氷点下4・9度という猛烈な寒さ、最低平均気温は-15・6度になり、これは1945年の独立いらい最低の温度だという。
私は中国と北朝鮮の関係を、国内にあふれた政府やマスコミ好みの情報ではなく、世界に通用する客観的なものが欲しいと思ってささやかに調べているのだが、そんな中でのデータでは、北朝鮮の石油確保量は、原油で年間80万トンにも満たないだろうと推測されている。このうち中国から輸入しているものが年間50万トン、ロシアからのものが20万トン、これ以外にはほとんど石油が入ってこない。
ただ総計が80万トンといっても、これだけではどの程度の量だか見当がつかないだろうが、日本の成田空港だけで年間使用する燃料の量が150万トンだということ。一国の輸入量が一つの空港だけの三分の一に過ぎないことと比べてみてほしい。
寒い北朝鮮の地で暮らす北朝鮮の国民に、石油がいきわたる量などはほとんどゼロに等しい。この国の暖房は薪などくべるオンドルだが、石油はボイラーや車の燃料のほか、肥料や工業の原料にもなる。それがなくなってこの国の農業は壊滅状態になり、折から、北朝鮮では家畜の口蹄疫が蔓延しており、厳しい資源のくになので、感染した家畜もそのまま食用に供されていると聞くが、伝染防止のため消毒する材料もないという。
寒さと飢えに打ちひしがれた2400万の民は、食料不足でもう400万から500人も死んだという。ぬくぬくと毎日を暮らし、有り余る食料を費消している我が国では考えられない姿である。
軍にも燃料がない
いまの世界は、石油が国の命のような構造になっている。こんな総額80万トンの石油量の中で、軍が使用している石油が、年間30万トンと推定されている。これは日本の自衛隊の使っている年間石油燃料の5分の1である。石油の量が足りなくなって軍用飛行機や戦車は持っているのだが、燃料がなくて休業状態にある部隊が続出しているという。演習などが行える状態にはなく、昨秋の北朝鮮の突然の韓国砲撃事件の後、それ以上放火を交えるだけの力は北朝鮮には無かったので、有り余る燃料を使いまくって米韓両軍が近海で演習を実施して挑発したのにも燃料がない、黙ってみている以外、実は方法がなかったのだというような情報もある。
私はあの米韓演習の時、この挑発に、別の理由から北朝鮮軍は乗らないだろうという観測を書いた。だがその背後には、ここに並べたような北朝鮮軍の厳しい資源不足の実情もあった。北朝鮮は、その資源をほとんどといってよいくらい依存している中国の承諾なしに、独自に軍事行動などを起こすだけの力がない。時局展望をするときにはこのことも、念頭に置いておきたい大切な要素と思う。
北朝鮮は中国の支配のもとの国なのだ
北朝鮮に対する拉致家族返還の交渉、あるいは核拡散防止の働きかけ、その他で日本は厳しい交渉を続けている。交渉の経過においては、北朝鮮の説得のため、応援してくれと中国に協力を申し入れ、
「中国も北朝鮮の非常識な対応には手を焼いている気配である」
などという観測がニュースなどでは大真面目で語られている。
だが私はそれには大きな疑問を持っている。北朝鮮は、中国があの地域に中国の息のかかった属国として存在することを、国際的に有利と考えているからこそ、世界の潮流に反抗し、いうことを聞かない独立国としての存在を認めているに過ぎない国だと判断して眺めることにしている国だと思うからだ。
中国とその他の国々との間には、人権問題にしろ領土問題にしろ経済問題にしろ摩擦が多い。そんな摩擦を受けながらも最近は急速に中国は世界の大国へとまっしぐらに進もうとしている。そんな潮流の中で、外から見ると中国以上に極端な国、誰もこんな国になどは外国から住みつきたいなどとは思えない国が北朝鮮である。
こんな国が存在することで、世界の中国に対する厳しい批判をかわしたり、この国に対して説得役を受けて立ち、
「中国もなかなか説得できないで困っているのだ」
などと国際道義にのっとったポーズをとるために存在させているのが北朝鮮なのではないだろうか。
中国にとって、北朝鮮を自国領に併合することも韓国と併合させることも実に簡単なことだと見える。中国からの石油供給を止めてしまえば、それだけで北朝鮮は生きていけない。そんな点から見れば、北朝鮮の核武装などは、中国の間接的な承認がなければ考えられないことなのだ。六か国協議での中国と北朝鮮の芝居に乗せられては何の解決にもならないのではないか。
昨秋の南北朝鮮の緊張状態も、そんな点から見れば観測は簡単である。もっともこの手の合理的観測は、自爆テロのような破れかぶれの作戦には往々にして煮え湯を飲まされることがあるのだが。
激しい鎖国政策と圧政の中で
食べるものもない、自由もない。国民には生きる権利も無いように見える。そんな中にある北朝鮮では、最近公開処刑が盛んに行われているという。加えて脱北者に対する無条件射殺命令なども出され、国内で人を集めて公開処刑にされるものも前年に比して3倍にも増加しているという。
「金正恩氏による後継体制を定着させるため」
だとされているが、北朝鮮の国民に世界を見せない、世界の国情を知らせないという監視体制はいよいよ厳しくなってきているようだ。
しかし、いくら厳しい体制を固めようとしても、自立する能力のない組織はいずれ破たんする。ただその破たんが、従来のように、影の宗主国中国の方針によるものか、あるいは自然現象として暴発するものか、二通りあることもそろそろ両者を加えて検討しなければならなくなったというべきだろうか。
写真は冬の北朝鮮(WEBより)
北朝鮮にも猛烈な寒波が押し寄せているという。共同通信の伝えるところによると、昨年末から本年正月下旬までの約一月の平均気温は氷点下4・9度という猛烈な寒さ、最低平均気温は-15・6度になり、これは1945年の独立いらい最低の温度だという。
私は中国と北朝鮮の関係を、国内にあふれた政府やマスコミ好みの情報ではなく、世界に通用する客観的なものが欲しいと思ってささやかに調べているのだが、そんな中でのデータでは、北朝鮮の石油確保量は、原油で年間80万トンにも満たないだろうと推測されている。このうち中国から輸入しているものが年間50万トン、ロシアからのものが20万トン、これ以外にはほとんど石油が入ってこない。
ただ総計が80万トンといっても、これだけではどの程度の量だか見当がつかないだろうが、日本の成田空港だけで年間使用する燃料の量が150万トンだということ。一国の輸入量が一つの空港だけの三分の一に過ぎないことと比べてみてほしい。
寒い北朝鮮の地で暮らす北朝鮮の国民に、石油がいきわたる量などはほとんどゼロに等しい。この国の暖房は薪などくべるオンドルだが、石油はボイラーや車の燃料のほか、肥料や工業の原料にもなる。それがなくなってこの国の農業は壊滅状態になり、折から、北朝鮮では家畜の口蹄疫が蔓延しており、厳しい資源のくになので、感染した家畜もそのまま食用に供されていると聞くが、伝染防止のため消毒する材料もないという。
寒さと飢えに打ちひしがれた2400万の民は、食料不足でもう400万から500人も死んだという。ぬくぬくと毎日を暮らし、有り余る食料を費消している我が国では考えられない姿である。
軍にも燃料がない
いまの世界は、石油が国の命のような構造になっている。こんな総額80万トンの石油量の中で、軍が使用している石油が、年間30万トンと推定されている。これは日本の自衛隊の使っている年間石油燃料の5分の1である。石油の量が足りなくなって軍用飛行機や戦車は持っているのだが、燃料がなくて休業状態にある部隊が続出しているという。演習などが行える状態にはなく、昨秋の北朝鮮の突然の韓国砲撃事件の後、それ以上放火を交えるだけの力は北朝鮮には無かったので、有り余る燃料を使いまくって米韓両軍が近海で演習を実施して挑発したのにも燃料がない、黙ってみている以外、実は方法がなかったのだというような情報もある。
私はあの米韓演習の時、この挑発に、別の理由から北朝鮮軍は乗らないだろうという観測を書いた。だがその背後には、ここに並べたような北朝鮮軍の厳しい資源不足の実情もあった。北朝鮮は、その資源をほとんどといってよいくらい依存している中国の承諾なしに、独自に軍事行動などを起こすだけの力がない。時局展望をするときにはこのことも、念頭に置いておきたい大切な要素と思う。
北朝鮮は中国の支配のもとの国なのだ
北朝鮮に対する拉致家族返還の交渉、あるいは核拡散防止の働きかけ、その他で日本は厳しい交渉を続けている。交渉の経過においては、北朝鮮の説得のため、応援してくれと中国に協力を申し入れ、
「中国も北朝鮮の非常識な対応には手を焼いている気配である」
などという観測がニュースなどでは大真面目で語られている。
だが私はそれには大きな疑問を持っている。北朝鮮は、中国があの地域に中国の息のかかった属国として存在することを、国際的に有利と考えているからこそ、世界の潮流に反抗し、いうことを聞かない独立国としての存在を認めているに過ぎない国だと判断して眺めることにしている国だと思うからだ。
中国とその他の国々との間には、人権問題にしろ領土問題にしろ経済問題にしろ摩擦が多い。そんな摩擦を受けながらも最近は急速に中国は世界の大国へとまっしぐらに進もうとしている。そんな潮流の中で、外から見ると中国以上に極端な国、誰もこんな国になどは外国から住みつきたいなどとは思えない国が北朝鮮である。
こんな国が存在することで、世界の中国に対する厳しい批判をかわしたり、この国に対して説得役を受けて立ち、
「中国もなかなか説得できないで困っているのだ」
などと国際道義にのっとったポーズをとるために存在させているのが北朝鮮なのではないだろうか。
中国にとって、北朝鮮を自国領に併合することも韓国と併合させることも実に簡単なことだと見える。中国からの石油供給を止めてしまえば、それだけで北朝鮮は生きていけない。そんな点から見れば、北朝鮮の核武装などは、中国の間接的な承認がなければ考えられないことなのだ。六か国協議での中国と北朝鮮の芝居に乗せられては何の解決にもならないのではないか。
昨秋の南北朝鮮の緊張状態も、そんな点から見れば観測は簡単である。もっともこの手の合理的観測は、自爆テロのような破れかぶれの作戦には往々にして煮え湯を飲まされることがあるのだが。
激しい鎖国政策と圧政の中で
食べるものもない、自由もない。国民には生きる権利も無いように見える。そんな中にある北朝鮮では、最近公開処刑が盛んに行われているという。加えて脱北者に対する無条件射殺命令なども出され、国内で人を集めて公開処刑にされるものも前年に比して3倍にも増加しているという。
「金正恩氏による後継体制を定着させるため」
だとされているが、北朝鮮の国民に世界を見せない、世界の国情を知らせないという監視体制はいよいよ厳しくなってきているようだ。
しかし、いくら厳しい体制を固めようとしても、自立する能力のない組織はいずれ破たんする。ただその破たんが、従来のように、影の宗主国中国の方針によるものか、あるいは自然現象として暴発するものか、二通りあることもそろそろ両者を加えて検討しなければならなくなったというべきだろうか。
写真は冬の北朝鮮(WEBより)