葦津泰國の、私の「視角」

 私は葦津事務所というささやかな出版社の代表です。日常起こっている様々な出来事に、受け取り方や考え方を探ってみます。

参議院選挙で感じたこと--自民・民主の舌戦の勝敗

2010年06月23日 05時00分41秒 | 私の「時事評論」

 谷垣さんは判定負け。

 鳩山政権が倒れた後、菅内閣がそれを引き継いで、あらゆる面で行き詰ったとみられていた鳩山政権が、ただ無くなっただけのほっとした空気を民主党への人気回復であったかのように利用しようと菅内閣は何をするよりもまず選挙だと参議院選挙に突入した。明らかにやり方は邪道だ。
 このやり方に対して、政策を国会で審議もせずに、人気だけを利用して選挙するのは汚いと、自民党は叫んでいるが、谷垣陣営はそれをつぶすに足る策は打てない。
 そんな中で自民党は、税収もないのに民主党のばらまき政策で、傷ついた国家財政を国家破産の危機から救うには、消費税の増税しかないと10%への引き上げを党の公約に盛り込んで対抗しようとした。
 すると対する菅首相は、民主党のばら撒き税制の国政に及ぼした重大なミスには論究せず、これは(自民党時代から続いた)政治の招いたミスだとして、たとえ野党であっても、まともな立て直し政策は私らも賛成すると、自分らも自民党の政策を参考に同じように消費税を増税すると発表し、これを聞いた自民党は、自分らの党が発表した政策を、勝手に与党が真似をするとはけしからんと大憤慨、こんな騒ぎの中に参議院選挙は行われようとしている。
 正直言って、こんな形だけを見れば、自民党のトップ谷垣氏は、完全に民主党の菅氏に負けているとしか言いようがない。谷垣氏は国会での国民の見る前で議論もせずに、わが党の掲げた公約を横取りするのはけしからんといって怒っている。
 だが、政治はだれのためにあるものなのか。国民のためなのか政党のためなのか。そんなことははっきりしていると言わねばならない。自民党の提唱する政策が、良いものだと評価されて反対党に横取りされたとしても、自民党は国民のために政治をしようとする党ならば、主張が採択されたと喜ばなければ国民のための党としての立場がなくなる。そんなところで、「民主党がわが党の主張を採用してけしからん」と騒ぐのでは、自民党自体が、国民のための党ではなくて、自党及び、それを支持するグループの私欲のためだけの政党だと宣言しているような結果になる。これは明らかに谷垣氏の菅氏に対する戦術上の負けである。
 一方、こんな空気を作りだした民主党の菅氏のほうは、「どんな理由があっても、これ以上の税金を払いたくない」と、税金値上げには理屈抜きで反対する、自らが悪玉にされて孤立することなしに、増税のチャンスを訴えかけ、それに反対する国民には、「自民党だって同じことを言ってるではないか」と逃げを打つ機会をつかんでしまった。

 問題はこの背後にあるのだが
 こんなことを書いたからといって、私は決して民主党を支持しているのではない。自民党も民主党も、どちらも日本の将来のことを考えず、金もないのに国民にばらまき行政を繰り返し、日本の財政を危機におとしいれ、日本経済を危機に追い込めた点に関しては同罪と思っているだけである。これはこの両政党が、決して日本の将来のために国政を運用しようとはせず、ただ、金もないのに人気取りのために、国の資金を無駄遣いして招いた重大な危機であると思っている。
 そんな愚かな政党に政権を託したのは、国民が愚かであったことに他ならない。
 補充する方策のめども立たず、人気だけを維持するためにばらまきを繰り返す日本の政党、それが存在し続ける背景は日本国民大衆の、まじめに事態を考えようとせず、結局はばら撒き資金は自分らの税金か、あるいは将来の自分らの負債として残ることにも気付かない安易な受け止め方にあることに気づかなければならない。
 みなさん、こんな無責任な政党や、同じく将来への配慮もなく、そんな空気をよしとする無責任なマスコミなどに惑わされずに、一人ひとりがもう少し、頭を使って我が国の将来を眺めることの必要性に気づこうではありませんか。、