せつなく朽ちた鉄扉

雑草地帯・日記部門。硬軟色々取り混ぜて、よろず話題の書き捨て場。
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あかつきについて、分からないことを想像すること。

2010-12-30 22:42:17 | 宇宙、航空系
さて、昨日の続き。
オマケとして個人的な予断なぞ。

調査に予断は禁物ですが、外野で眺めている身には予断してナンボというところもありまして。(ぉ
素人なりに、素人ゆえに、色々思うところを書いておこうかと。


【逆止弁について】

「逆止弁の閉塞」って言ってますけど、実は今は開いている可能性が無きにしも。
というのも、2010.12.17配布の方の資料にちょっと気になるデータがありまして。



「あかつき」の金星周回軌道投入失敗の状況について』27ページより。


ありゃ表示が切れちゃうか。記事の下のほうのスクロールバー動かして右端見てください。
特に9660秒後から燃料タンクと加圧圧力が収れんしていくところにご注目。

こういう圧力変化が起きるためには、逆止弁が開いてくれないと有り得ません。つまり、9660秒後に、逆止弁がちょっと動いたんですよ。圧力変化が分オーダーなので、全開ではなさそうですが、開いたのは間違いないでしょう。

JAXAは逆止弁の閉塞理由をいくつか想定しています。

 ・シール部分の不良
 ・しゅう動部の不良(設計不良、製造不良)
 ・部品の破損、脱落、噛み込み(バネ破損、想定外の動作頻度等)

ただ、9660秒後にちょっと動いた事を考えると、やっぱ、固着だと思うんですよ。
何か摩擦が大きい箇所があって、動かなくなった感じかと。

そうなると、思いつく原因は
 ・製造不良
 ・粉体のような異物の噛み込み
 ・想定外の動作頻度
ってところですかね。

「想定外の動作頻度」ってのは、何か圧力変化が脈動したような状況が続くと起こりえる訳でして。ぱっと思いつくのは、燃料タンクのダイヤフラムの振動ですかね? ただ、かなり加圧された環境下でそんなに膜が揺れるかは疑問ではあります。

やはり個人的には、製造不良か、細かいゴミの噛み込みって感じかなと思ってますが、そこから先は想像するにもネタが足らない状態です。

まー正直なところ、この逆止弁は今後の探査機開発には重要な問題ですけど、
当のあかつき本体にとっては、全閉でなければ何とかなると思ってます。はやぶさみたく、遠くから少しずつ、時間をかけて減速すれば良いと思うので。凄く面倒で難しそうですけど。



【逆噴射時の姿勢異常について】
【セラミックスラスタ(=OME)は壊れたか否か】

この2つはセットで。

あかつきを傾けるような強い力が働いて、セーフホールドモードに入った事が今回の失敗の直接の原因ですけど、その強い力ってのは逆止弁の異常だけじゃ解明できないんですよね。
「逆止弁の異常により燃料供給が狂ったことにより、OMEで何かおかしなことが起こって傾いた。」と大まかに推測しているだけで、肝心のこの部分が全く分かっていません。

で、そのOMEで何が起こったかについて、JAXAはD1~D5というナンバリングで5つの可能性を想定しています。

 D1) 熱流束過大によるスラスタノズルの破損
 D2) フィルムクーリング噴射方向異常によるスラスタノズルの破損
 D3) スロート後方後燃え
 D4) 不安定燃焼
 D5) インジェクタ噴射方向異常

個人的な感想ですけど、姿勢異常はともかく、この状況でOMEに何か起きたっていうなら熱による破壊を一番に疑うべきでしょう。というか壊れていて当然という気がします。

熱といえば、最も高熱になるのは燃焼室とスロート(一番細いところ)ですが、この辺りは割と肉厚に作ってあるっぽいです。三菱の技報に試験中のセラミックスラスタの写真がありますが、燃焼室やスロートより温度が低いであろう、スロートよりノズル側の部分が一番強く光ってます。この光っている辺りが、熱に対して相対的に一番薄くなっている箇所と言えるんじゃないでしょうか。

やはり、この一番光っている辺りが熱でやられちゃったんじゃないでしょうか。JAXAの想定でいうところのD1ですね。材質の窒化珪素は高温で分解するので、どんどん内側が削られて、穴が開くとかポッキリとか、そんな感じではないかと。

そもそも、熱の影響、突然の横向きの力、推力の減少と、減少した状態で安定した推力を考えると、D1しか考えられない気がするんですが。D2~D5では、もっと色々と不安定な加速度が測定されると思うので。

壊れ方としては、こんなシーケンスですかね?

 1.熱によりノズル上部の内側がどんどん削られて薄くなる。
 2.ある一箇所に穴が開く。
 3.穴からガスが噴出し、横向きの回転が始まる。
 4.穴はどんどん大きくなり、穴からの噴出量が増える。
     --------------
 5.噴出の衝撃で振動が発生し、穴から薄い部分に沿って亀裂が走る。
 6.亀裂からノズル脱落。

4と5の間に線を入れましたけど、もしかしたら4止まりで、5~6はまで発展しなかった可能性もあるので、線入れてみました。
こればっかりは、あかつきで試してみないと分かりません。もし4止まりだったら、OME噴射でまたくるくる回ってしまうという致命的な事態となってしまいますが。

で、こんなことを考えていてつくづく思うのは、やっぱスラスタを見るカメラが欲しかったなーということ。
なんせセラミックスラスタは初モノですからね。いくら理学系の探査機といっても、工学検証用のカメラ1つくらいあっても良かったんじゃないかなぁ。



【6年後に逆噴射可能か否か】

逆噴射は出来ると思ってます。
セラミックスラスタのノズルがポッキリして脱落している事が条件ですが、それなりに確立は高いと思ってます。

ただ、金星周回軌道に入れるのは難しいなと思ってます。

推力の70%弱しか出せていないので、単純計算で1.4倍の燃料が必要になります。失敗した逆噴射で既に想定の2割を消費しているとすると、当初予定の1.6倍の燃料を食う事になるんですが、それだけの燃料があるのかどうか。
残燃料のデータはありませんが、自分としては、足らないんじゃないかなと考えてます。


いや、今はここまでしか推測できませんけど、何も手が無いわけじゃないはずです。

なんせこれから6年11回も太陽を周るんです。
まだ検討するネタはありそうな気がします。



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