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日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

ベイルートの肝っ玉母さん、ロンドンへ

2005-04-20 15:01:45 | Weblog
 4月4日に「ベイルートの肝っ玉母さん」と題する拙文でご紹介したヴァン・ツユさんこと土田つゆさんと一昨日、電話でお話しする事が出来た。
 つゆさんは30年余のベイルート生活を終え、息子の住む英国に移住していた。電話を通して聞こえる声は、最後にお会いしたのが91年であったから「ひと昔」以上の年月を経ていたことになるが、そのころと少しも変わらず張りのある声であった。大正15年か昭和元年生まれのはずだが、声だけ聞いていれば、私と同世代に思えてしまうほどだ。積年の苦労は全く感じさせない。
 つゆさんによると、長年営んできたレストランは、皮肉なことにレバノンの戦後復興に押しつぶされた格好となった。暗殺されたハリーリ前首相が推し進めた大胆な経済政策から生まれた、商業地域の活性化が命取りになったと言う。
 つゆさんの店は、「おふくろの味」を大切にして、量も多く美味しいが、値段は極力安価にしていた。ところが、新たに作られたショッピングセンターの日本料理店は、欧米の大都市によく見られる「安価」で「早く」食べられる、を前面に押し出して客をもぎ取っていった。これは、日本の商店街でも最近よく見られる現象だ。
 客の入らなくなったレストランの売却を決意したが、売ろうにも買い手はなかなか付かなかった。それでも建物のオーナーが権利を買い取ってくれたとのことで、「カナダに行きたいというラフィ(10代からつゆさんが息子のように可愛がって育て上げてきたmanager)にも退職金が払えたのよ」というハッピーエンドでベイルートを離れる事ができたと言う。
 戦火を生き抜いたつゆさんがようやく安住の地を見つけたと聞いてほっとした。彼女の波乱万丈の人生を目の当たりにしてきただけに、これからもずっと心穏やかに余生を送っていただきたいと切に願う。
 つゆさんを引き取った息子のクリちゃん(クリストファー・ヴァン)は、中学生の頃は取材に訪れる私の姿を見て一時期ジャーナリストを志望していた。それが、老いた父親(英国籍)がベイルートの路上で武装グループに暗殺された時、受けた欧米報道陣の傍若無人な取材攻勢とでたらめな報道に怒り、その夢を捨ててしまった。私にとってはとても悲しい出来事であったが、しかしその後精進して英国文部省に入り、つゆさんの話では、「なんかよく分からないけど、重要なポストに近く就けそうよ」ということだから、却ってそれが良かったのかなと電話で話していて思った。
 「日本大使館の人から『自伝をまとめたら?』と言われているのよ」「彼女と一緒に泊まりに来て」と、もしかしたらそのまとめ役に私を考えているかのような言い方をされたが、残念ながら今私にその余裕がない。しかし、いずれにしても何らかの形で「ヴァン・ツユ物語」は皆さんにお届けしたいと思っている。

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1 コメント

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2005-04-20 23:47:53


初めまして、突然申し訳ありません。



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