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名作漫画「荒野の少年イサム」復刻!

2013年12月18日 | 漫画
「週刊少年ジャンプ」の草創期を支えた西部劇マンガの名作『荒野の少年イサム』が復刻されている。

原作は「少年ケニア」「ノックアウトQ」で知られる山川惣治先生とは知ってたが

川崎のぼる先生が1971~73年にかけてジャンプに連載された「イサム」は、
山川惣治先生の絵物語「荒野の少年」を元に創作を加え、膨らみを持たせた物だったのね。

毎週、山川先生が原作を書いてそれを劇画化していたと思っていたけど、実質は「原案」だったのね。



さてさて、その『荒野の少年イサム』。

長年コミックス化は進んでいなかったが
ジャンプの創刊45周年を記念し、ついに集英社が復刻版の刊行を始めた。

作画の川崎のぼるさん(72才)にとっては、梶原一騎さんと組んだ『巨人の星』直後の連載作。
「(自分の)円熟期の作品が、今の子どもたちにどう受け止めてもらえるのか」と期待を寄せているそうです。

主人公は
西部開拓時代に渡米した日本の侍と、先住民女性の間に生まれた渡勇=イサム。
母とは死別、父とも はぐれてしまい、親の顔を知らずに荒くれ者の中で育ったイサムだが
正義の心を持つ天才ガンマンとして成長していく・・・。

少年時代、川崎先生が映画館で親しんだ西部劇。
連載前には西部劇は受けないと言われたが、「あえて挑戦した」そうな。



ガン・アクションの素晴らしさ、イサムの成長物語の感動もあって、人気は沸騰。
73年にテレビアニメ化もされた
※これが、まんまアニメ版「巨人の星」の絵柄・・・。

25年ぶりとなる復刻版は12月までに全5冊を刊行。
伝説の西部劇マンガが遂に甦る。

ただ、これまで再単行本化されなかったのが気になる。
一部では「当時の表現は現在では残酷に映る」として自主的に復刻されなかった・・・などという噂もある。

たしかに、イサムを攫ったアウトロー=ウインゲート一家の悪行は壮絶で
開拓民の一族が幸せな結婚式を挙げている所に通りがかり、
「いい標的が見つかったぜ」と一斉に銃撃。
父親1名、息子2名で誰が何人ヤッたかを競い、コインの遣り取りする様は鬼畜の所業。
新郎新婦から老人、子供、幼子まで皆殺し・・・。

その有様を克明に描く川崎先生。
こういうシーンがあればこそ、「悪党を成敗する時のカタルシスが増す」と理解できるのだが、それにしても惨い・・・。

ただ、イサムが関わった「命のやりとり」は、イサムが初めて人を殺めるシーンで丁寧に描かれてるのよね。

街にアウトローぶって粋がる若造あり。親も「あのバカ息子、いつか殺されるよ。その方がイイわ」と言い放つ程の所業。
銃を構え、イサムに絡んできた若造。

「どうした?抜けよ」

身を守るために相手を撃つイサムだが、若造の親を知っている為、急所を外して腕を狙う。

それでも引き金を引こうとする相手に、またしてもイサムの弾丸が・・・。
しかし、やはり腕、足と急所を外す心優しきイサム・・・。

ただし、結果としては残酷な事になった。
急所を外されても撃たれた当人は「火が出るように熱い!」「焼けるように苦しい!」と、のた打ち回る。

「いっそ殺してくれ!」

親も泣きながらイサムに懇願する、「どうせ助からないんだから、これ以上苦しまないよう、とどめを刺してやってくれ!」と。

やはり泣きながら心臓めがけて引き金を引くイサム。
若造は絶命し、親は若造にすがりながら号泣する。

立ち尽くし、やはり涙するイサム。

銃を相手に向ける事、相手を撃つ事、人の命を奪う事・・・それがどういう事か。
川崎のぼる先生は丁寧な筆致で描かれた。

この点は、単に「残酷なマンガ」とは言えないと思います。

黒澤明監督が「赤ひげ」で描いた「神聖なる絶命の瞬間」に通じる命のシーンだったと思います。
※三船敏郎演じる医師「赤ひげ」が、加山雄三演じる若い医師に
 「この世で最も崇高なのは人が死ぬ瞬間だ」と言って、老人の
 臨終に立ち会わせるシーン・・・。登場人物全員の名演で
 素晴らしい光景になった。



ペンタッチが「巨人の星」と同じですから、「古い」と言われた「イサム」ですが。
そんなの関係ない、名作は名作ですよ。

ビッグストーンとの一騎打ち「ゴーストタウンの決闘」も名場面に次ぐ名場面です。
※限られたスペースでの一騎打ちの名場面としては、
 ガラスで囲われた植物園で主人公・飛葉が戦った「ワイルド7」の
 「地獄の神話」も有名ですが。「イサムvsビッグストーン」も
 決して引けを取りません!



劇的な対決、凶悪な敵、主人公を囲んだ人情、敵を殲滅するカタルシス・・・。
それが一作に収まったとき、そのアクション作品は傑作になる。

「イサム」も、そういう傑作だったと思います。


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