有田芳生の『酔醒漫録』

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ボー・グエン・ザップ将軍の後ろ姿

2013-10-07 10:57:49 | 参議院
 10月7日(月)4日に102歳で亡くなったボー・グエン・ザップ将軍の国葬が12日、13日にハノイで行われると朝日が書いている。フランスとアメリカを破った将軍の戦争指揮は芸術的でさえあった。アメリカの歴史で唯一敗北したのがベトナム戦争である。吉野原三郎さんは、人類史のなかで、フランス革命やアメリカ独立戦争に匹敵するものとしてベトナム革命を位置付けている。

朝日の記事で興味深いのは、将軍の読書方法だ。目次で重要と思った章から精読し、残りは概要だけ読み取り、読後は要点を整理して、重要部分に再び眼を通したという。私がボー・グエン・ザップ将軍にインタビューしたのは1990年4月だった。ハノイに入ったものの新聞局との行き違いで1週間待機させられた。何しろ時間がある。ハノイのホテルにあった共同通信に出入りして、支局長だった辺見庸さんと、夜な夜な酒を飲んだものだった。

ようやく実現した取材で出会った将軍は、ベトナム戦争の指導者というよりも、学者のようなたたずまいだった。それまで日本の百科事典では生年月日がまちまちだったので、正確な日にちを聞くことからインタビューをはじめた。トンキン湾事件の真相、テト攻勢の秘話などを聞き、取材内容は「朝日ジャーナル」に2回掲載され、国際配信もされた。あのとき通訳をしてくれたグエン・クイ・クイさんは、ずっと前に亡くなっている。そしてボー・グエン・ザップ将軍も歴史から去っていった。会見室からゆっくりと出ていった将軍の後ろ姿がいまでも印象に残っている。