10月17日(金)「建築労働は大変です。自民党の政治を終わらすために
頑張って下さい」板橋区役所前で仕事に向かう男性がそう声をかけてきた。アメリカ発の金融危機が日本に波及して実体経済に影響が起きてくるなら生活はいっそう苦しくなる。報道によって伝えられる「声」よりもナマの「声」の方が実感として伝わってくる。生身の言葉が眼前で語られるのだから当然のこと。朝日新聞の鳥取支局に配属され、いまは朝日新書の編集長になった岩田一平さんが人脈を活かして出した『詩と死をむすぶもの』の一節にタゴールのこんな言葉がある。
「私は自分の空虚さを恥じています」と言葉が仕事に言った。「私はあなたを見るとき、どんなに自分が貧しいか分かるのです」と仕事が言葉に言った。
鳥取市にあるホスピスの「野の花診療所」所長である徳永進さんの文章に引用されている。仕事と言葉の相互作用。路上で実際に訴えることはその統一の行為だ。徳永さんの書簡に応える谷川俊太郎さんの詩文もまた味わい深い。死を意識した言葉は、そうでないときの言葉とは相当に深みが違うことを知る。祈りのような読書というものがある。まだ読みはじめたばかりだが、こうした小さな書籍がもっともっと広がるといい。板橋での行動を終え、夜、ふと岩田さんに電話をして感想を伝える。帰宅すると「朝日新書」編集長日記がファクスで届いていた。