家族の帰国まで母方に身を寄せることになった。
トラックに家財道具をつんで大雨の中を移動した。
道路の赤土が粘土化し車輪がたびたび空回りした。
そのつど男たちは板や枯れ木を車輪の下に敷いてトラックを後押しした。
エンジンが止まると一人が前に回りスロットに専用クランク棒を指し込み柄を回して始動を助けた。
これがまた重労働で女子供の力では1回も回転しなかった。
オラリア(レンガ瓦製造所)は広大な敷地で川に面し、粘土を掘り取る沼沢地、労役馬を飼う放牧場、製造所の施設と雇用者住宅群を擁していた。
高台に大家族用の平屋マンションが建っていた。祖父母、母の弟妹が同居していた。
母には弟妹7人がいた。半分が結婚していた。ほかに日本で養子に行った弟がいたが不運にも戦死した。
わたしの生活環境も広がった。
核家族中心の生活から多重家族の生活へ、移民社会から多人種
社会へ、同年齢の交わりから異年齢集団の中へ。
ほかの子供たち同様相変わらず学校には行かなかったが行動範囲が広がり遊びも多彩になった。
乾燥場にレンガを運ぶ労働にも手を染めた。力がなかったのでこの手伝いは数回で終わった。
マンションの横に祖父、叔父たちが廃材で4室の平屋を建ててくれた。
此処で父母は来るはずもない日本からの迎えの船を待つことになった。
日本人は耳目を閉じていて日本がアメリカの占領下で鎖国状態にあることを考えようとしなかった。
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