今施工中の現場なんですが、これからの日本における課題を感じたので少し。
こちらのお住まいはご高齢の御夫婦が住んでいます。
お子さんは立身し、居を構えているためこちらには戻らないとのこと。
道路から48段の階段を登らないと到着できない立地なので、家の手入れを依頼することがどうしても億劫だったと言います。
その為、今回のご相談もギリギリもギリギリまで粘っての事だったようです。
今回の修繕依頼に関しても
「応急処置で構わないので」
「とにかく簡単に直してもらえれば」
というような要望がありましたが、現地調査の時点で内外装共に腐食が著しく、簡単という訳にはいかないように思っていました。
もしかすると、今まで修繕の依頼を請けた方も同じように依頼を請け、簡単な処置のみで終わりにしていたのかもしれないです。
あまりひどい部分はお見せ出来ないですが、解体を始めると床下は湿気ていて、土台や柱の根、根太に至るまで腐っていたりシロアリの痕があったり
傷んでいる部分を直すこと自体は、特に問題ではないんです。
家主さんに「直してください」と依頼されれば・・・。
ここで先述の問題に繋がります。
ご高齢の家主さんの多くは「自分たちが死ぬまで持ってくれればいいから、そんなに費用はかけたくない」と仰います。
年金などをうまくやりくりしていく中で、自分たちの住まいに割ける費用も多くはないという事は容易に想像できます。
でも人生100年時代と言われている昨今、何歳まで生きるかなんてわからないですよね?
例えば、80歳を迎える御夫婦が居たとして。
30歳で建てた家でも50年経過している我が家。
最後に大きく手を入れたのは定年間近の64歳のころ。
そこから更に15年経過し、万全に手入れしたつもりがまたあちこち不具合が出てくる始末。
とは言え80歳で数百万の改修も掛ける余裕がない・・・。
となれば、「家が朽ちるのが先か、自分が逝くのが先か、割り切って何もしないというのも手」という考えに至る方が出てくるのも無理はないと思います。
私が悩んでしまうのは、限られた予算で工事をスタートし、解体を進めた時点で想定外の損傷を見つけてしまったときの対処法なんです。
多少の不測の事態であれば、取り寄せた材料にゆとりがあれば工事範囲を超えて直すことは大した問題ではないので、費用に関係なく手を入れてしまいます。
ところが損傷個所があまりに広範囲で、改めて資材を取り寄せ大幅に工事の内容が変わる場合は、家主様との相談になります。
つまり追加工事が発生してしまうということ。
とは言え、初めから掛けられる予算は最初から決まっている・・・となると
日本人の平均寿命はどんどん延びていきますが、健常且つ労働することができ、収入も得ることができる年齢には限りがあります。
高齢化していく中で自分たちの住処を維持する事は、年を追うごとに難しくなります。
しかも住環境が乱れていくという事は、足腰に不安を抱えている方にとっては、家での生活そのものが成り立たなくなることすら出てくると思うんです。
人体であれば、おなかを開いて病巣を見つけたとして「お金が無いのでそのまま閉じてください」というような展開はないと思いますが、家となると考え方は人それぞれですからねぇ。
この先、核家族で家を維持していくことは難しくなるかもしれないです。
管理された物件を生きている限り賃貸していく。
同じ境遇の方とシェアして住まう。
維持に極力費用を掛けないミニマムな家を作る。
10年後、20年後、展開次第では面白い建築業界になっているかもしれないですね
この先の展開をこの目で見る為、まずは今の状況を打破し建築屋さんとして生き残っていかなくては。
マルチな大工が求められそうだな~