「我が祖国」に引き続き、エリシュカ&札幌響のCD3枚が届いた。
ドヴォルザーク#8、 #9「新世界より」とチャイコフスキー「悲愴」。
早速、ドヴォルザーク「8番」を再生してみたけれど、うーん、何かが足りない。否、演奏の善し悪しではなく、音質についてである。ついでに、帯のデザインも、もう少し何とかして欲しいが・・。
何と言おうか、市販の大手レーベルにありがちな精気のない「所謂CDの音」なのだ。少なくともCDというフォーマットの限界ギリギリに挑んだ形跡は感じられない。マスターテープ、マスタリング、或いはプレスのどこに原因があるのだろうか?
その点、手前味噌ではあるけれど、愛知祝祭管とのブルックナー#8のCDは、その限界を極めようという心意気の感じられる録音であり、マスタリングである。
自主製作のかもっくすレーベルではあるが、録音とマスタリングは、優秀録音で知られるWAON RECORDS(ワオンレコード)の小伏和宏氏による。
ワオンレコード:http://waonrecords.jp
演奏会当日、会場に於けるマイクのセッティング、及び撤収時間が各々30~40分ほどしかない、というムチャクチャな条件でお願いしたところ、ワンポイント録音でいきましょう! との運びとなり、それが見事に功を奏して、極めて自然で伸びやかな音質に仕上がった。もちろん、大オーケストラをワンポイントで録るというのは勇気のいることだし、エンジニアに相当のセンスと腕前がなくては不可能だ。それが見事に成功している。
補助マイクのない分、捉えられた音はありのまま。オーケストラの技術の足りない部分への補正はない。
さらに、今回のCD化にあたって、1音たりとも、リハーサルからの差し替えは行わなかった。
本番一発の勝負。しかも長丁場。楽員の諸氏には、不本意な小節も少なからずあろうが、差し替えようにも、当日は通し稽古をしていないし、部分的に行った稽古も本番とのテンションが異なり過ぎるため、繋ぐことは不可能。もう修正なしのありのままに腹を括った。さらには、イコライジングなどの小細工も一切なし。
日本のプロ・オケはもちろん、ベルリン・フィル級のオーケストラ録音でも、製品化にはリハーサルからの編集が当たり前になっている昨今、愛知祝祭管の録音は破天荒と言えるだろう。
そんな意味からも、福島章恭&愛知祝祭管のCDをお楽しみ頂けると幸いだ。