goo blog サービス終了のお知らせ 

福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

一生の不覚 シュタルケルのバッハ無伴奏

2014-08-09 22:18:43 | レコード、オーディオ


いつかは手にしなければ、と思いつつ後回しになっていたレコードをようやく入手。

ヤーノシュ・シュタルケルによるバッハ: 無伴奏チェロ組曲全曲 Speakers Cornerによる復刻盤3LPである。
オリジナルは、MERCURY SR3-9016。

いま、この名演・名録音を聴きながら、激しく胸を痛めている。拙著「バッハをCDで究める」(毎日新聞社 2010) に採り上げなかったからだ。

言い訳はある。
このとき、無伴奏チェロ組曲だけでも、マイナルディ、フルニエ、ナヴァラ、ニッフェネッガー、ペレーニなどの稀少なオリジナルLPを集めるだけで財政的にも精一杯。たまたま、シュタルケルが漏れてしまったわけだが、この頃、復刻盤に興味を持っていたら間違いなく入手していただろう。一生の不覚である。



増補版の出る予定もないが、いずれ新装版の出せるチャンスに恵まれたなら、これまた上梓後に知ったロルフ・ルーザー盤(スイス VDE LY 3007 1)ともども、記事にしたいと思う。

しかし、本当は、棚上げにされている声楽曲・オルガン曲篇に着手するべきなのだが・・。

Blu-ray Audioで聴くベームの「ロマンティック」

2014-08-08 15:56:11 | レコード、オーディオ


ベーム&ウィーン・フィルの「ロマンティック」については、宇野先生が「器だけが立派」と散々に酷評されていたけれど、ボクははじめから好きで、学生時代は国内盤LPでよく聴いたものだ。

なんといっても、ベームの正攻法の音楽づくりとウィーン・フィルの音色や豊穣なサウンドが魅力ではないか。

その後、CD ~ 英オリジナル・アナログと聴き継いできたが、つい先日Blu-ray Audioとなっているのを知って入手。好きな演奏は色々なフォーマットで聴いてみたくなるもの。

第一印象は余り良くなかった。デジタルの冷たさを感じたのだ。しかし、本日、聴き直してみて評価を改めた。当然ながら、音の情報量はCDの比ではない。ある意味、レコードよりも制約のない伸び伸びしたサウンドで、それが天上の神に通ずるブルックナーに相応しいとも言えそうだ。

しかし、配信によるハイレゾ環境が日進月歩のいま、Blu-ray Audioという媒体は今後生き残れるのだろうか? ソフトの少なさが普及を妨げ、普及率の悪さが新譜の企画・販売を躊躇わせる、という悪循環は生じてはいないのだろうか?

容量、音質ともに抜群に優れた、可能性を秘めた媒体ゆえに、認知度の低さが惜しまれる。

フリッツ・ライナー 戦慄のバルトーク

2014-08-08 13:02:49 | レコード、オーディオ

 

Classic Records re-issue RCA Living Stereo,

LSC 1394 Fritz Reiner Bartok: Concerto for Orcestra45 rpm x 4 LPs, 180g

LSC 2374  Fritz Reiner Bartok: Music for Strings, Percussion & Celesta, Hungarian Sketch 45 rpm x 4 LPs, 180g


初出以来、名演・優秀録音として名高いフリッツ・ライナー&シカゴ響によるバルトーク・アルバム2点。

気が付くと、米Classic Records社の45回転復刻盤も、リリースから10余年を経て市場から姿を消す寸前の絶滅危惧種。オークションで見掛けても高騰してお手上げだったところ、根性で定価に近いショップを見探し出して、別々のお店から入手。ネット時代の恩恵だ。

ハンガリー生まれの2人、バルトークのストイックさとライナーの情け容赦のない完全無欠さが一体となった背筋の凍るような名演。

Classic Recordsによる復刻はここでも極上で、それに加えて45回転ならではの空間の大きさ、レンジの広さが際立っている。余りに生々しい音に、1950年代後半の録音ということが俄かに信じられないほど。

ここにきて、ボクの中でのライナーへの評価は、鰻登り。RCA LIVING STEREOでは、かつて人間味の溢れるミュンシュばかりを聴いてきたが、この超絶的な音響で聴くほどに、ライナーの凄みとシカゴ響の能力に圧倒される。

この2つのアルバムは、SACD(ハイブリッド)として1枚に纏められてリリースされている。こちらも、既に品薄の模様なので、興味のある方はお早めに!

バルトーク:
1.管弦楽のための協奏曲 Sz.116
2.弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 Sz.106
3.5つのハンガリー・スケッチ Op.38
(1)村での夕べ 
(2)熊の踊り
(3)メロディ 
(4)ほろ酔い加減 
(5)豚飼いの踊り

シカゴ交響楽団
指揮:フリッツ・ライナー
録音:1955年10月22日(1)、1958年12月28ー29日(2&3)、シカゴ、オーケストラ・ホール
ステレオ録音


マイルスに呼ばれたか?

2014-08-06 21:56:17 | レコード、オーディオ


今日はジャズづいてるのかな?
長岡混声のマタイ受難曲レッスンを終えて馴染みの珈琲屋に向かったところ、なんと臨時休業。

お向かいのジャズカフェに入ると、なかなか良い雰囲気。
マイルスに呼ばれたのかな?



BGMの曲名、演奏者も何にも知らないけれど、オーディオの音もスペシャルとは言えないものの、なかなか。



熱いレッスンのクールダウンには打ってつけであった。

ヤンソンス&オスロ・フィルのチャイコフスキー交響曲全集

2014-08-03 00:36:38 | レコード、オーディオ


いまや巨匠と呼んでも差し支えのないマリス・ヤンソンスの若き日の録音。
オスロ・フィルとのチャイコフスキー交響曲全集、マンフレッド交響曲付。英シャンドスの7枚組LP。

80年代前半のリリースということは、30余年昔、ムラヴィンスキーの代役として、レニングラード・フィルの来日公演を振った頃か?

ここのところ、45回転によるアナログ録音の超弩級の復刻盤を聞き続けた我が耳に、未だスペックの低かった頃の初期デジタルの音は、正直、薄手に聴こえなくもないのだが、それでもアナログ盤ならではの優位はある。

凄みや外連とは無縁。
ヤンソンスらしい誠実な音楽性によって共感を呼ぶ演奏だ。

これから、1枚ずつ聴くのが楽しみである。

アンセルメ / ロイヤル・バレエ・ガラ・パフォーマンス 45RPM BOX SET

2014-07-29 15:46:42 | レコード、オーディオ







稀代のレコーディング・エンジニア、ケネス・ウィルキンソンによる数ある録音の中でも最高峰の呼び声の高いアンセルメ指揮のロイヤル・バレエ・ガラ・パフォーマンス。

中古市場に於けるオリジナル盤の相場が3,000ドルを軽く超えることからも、その評価の高さを伺うことが出来るが、おいそれと入手できるものでもない。

そこで、何とか調達することのできたのが、米CLASSIC RECORDS社による45回転復刻レコードである。
例によって、片面のみのシングル・サイド・プレスで、なんと9枚組。

オリジナル盤が2LP=4面だったことを思えば、贅沢なカッティング。高音質に賭けるCLASSIC RECORDS社の意気込みが伝わってくるようだ。

これとて、安い買い物ではない。が、この類ばかりはタイミングを逃すと二度と巡り合えないこともあるから、無茶を承知で思い切るより仕方ないのだ。





ここに繰り広げられるパフォーマンス、超優秀な録音については、簡単に文字にならない。

感動を超えて畏怖の念すら湧き起こる。

オーケストラは、英国コヴィントガーデン王立歌劇場管。艶やかな厚みのある弦セクションによって、手兵スイス・ロマンド管では成し得なかった、アンセルメの究極の美学が音に具現化されている。



半透明の白いビニール盤が何とも美しく、ブランク面に記されたCLASSIC RRECORSのロゴが、反転の透かし文字となって映るのもお洒落だよなぁ。

収録曲

・チャイコフスキー:『くるみ割り人形』より
 March
 Dance of the Sugar Plum Fairy
 Arabian Dance (Coffee)
 Chinese Dance (Tea)
 Dance of the Mirlitons
 Waltz of the Flowers

・ロッシーニ/レスピーギ編:『風変わりな店』より
 Tarantella
 Andantino mosso
 Can-Can

・ドリーブ:『コッペリア』より
 Prelude - Mazurka
 Introduction and Waltz
 Czardas (Danse hongroise)
 Valse de la poupee

・アダン:『ジゼル』より
 Introduction and Waltz
 Pas de deux and Variation

・チャイコフスキー:『白鳥の湖』より
 Scene (moderato)
 Danse des petits cygnes (moderato)
 Pas de deux
 Valse

・シューマン/グラズノフ、R.=コルサコフ編:『謝肉祭』より
 Pierrot
 Reconnaissance
 Pantalon et Colombine
 Aveu

・チャイコフスキー:『眠りの森の美女』より
 Introduction: Prologue - The Lilac Fairy
 Rose Adagio
 Valse

・ショパン/ダグラス編:『レ・シルフィード』より
 Prelude
 Mazurka
 Valse

 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団
 エルネスト・アンセルメ(指揮)

 録音:1959年1月、ロンドン、キングズウェイ・ホール(ステレオ)

 


クナッパーツブッシュのマイスタージンガー

2014-07-29 14:17:52 | レコード、オーディオ


クナッパーツブッシュ&ウィーン・フィルによるワーグナー : 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」全曲

英DECCAのオリジナル盤(オレンジ・ゴールド・レーベル)7枚、即ち、第1&2幕各2枚、第3幕3枚のほぼ完璧なコンディションのセットが手に入ったので、これまで愛聴してきた6枚組(オレンジ・シルバー・レーベル)を手放すべく、惜別の針を降ろしたつもりが、困ったことになった。

どっちが優れている、というより個性がまったく異なるのだ。下戸のわたしの語るのも妙な話だが、前者を芳醇な味わいを湛えた古酒とするなら後者は口当たりの爽やかな新酒とでもいえようか。
これでは、どちらか一方を手放すことなど出来ない。まるで、花ちゃんとキクちゃんのどちらかを選び切れず、結局両者と結婚することにした風大左衛門のような心境だ(笑)。

ここのところ嵩んでいる資料代への出費の穴埋めに、と目論んでいたのだが、それが叶わなくなってしまった。



写真右が6枚組の箱。
大きさも厚みも、左より若干小ぶりになっている。

カルミニョーラのヴィヴァルディ「四季」のDIVOX録音 アナログ45回転盤を発見!

2014-07-29 02:21:33 | レコード、オーディオ

文春新書「クラシックCDの名盤」(宇野功芳・中野雄 共著)のほぼ巻頭でボクが大絶賛したカルミニョーラのヴィヴァルディ「四季」が45回転アナログ盤になっていたとは!

eBayで45回転盤を検索していて出会ってしまった。

カルミニョーラの「四季」は断然、この旧録音(DIVOX)が良い。

旧録音は遊びと芸術の境を行き来するギリギリの名演なのに対し、ソニーの新盤は単なる曲芸になってしまったというか・・・。

そのよろしくない印象は、いつだったか、トッパンホールで聴いた実演でも変わらず。会場にいらした、故菅野浩和先生など、憮然とした表情でアンコールを聴かずに席を立たれたほど。

しかし、一度は失望させられたカルミニョーラも、ボクの中では、アバドとのブランデンブルク協奏曲の映像では復権している!

さて、このレコード。2枚組4面、ということは、1面にひとつの季節の割り当て。

盤を裏返すと春から夏、取り替えると夏から秋・・・。
移ろう季節、なんか良い感じ。

しかし、eBay出品者の値付けは高い!
これをクリックしてはいけませんよ。
ボクは、約3分の1で売っているお店を探し出した!

http://www.ebay.com/itm/VIVALDI-LE-QUATTRO-STAGIONI-THE-FOUR-SEASONS-G-CARMIGNOLA-AUDIOPHILE-180-G-2-LP-/331249996618?pt=Music_on_Vinyl&hash=item4d2009d34a


不滅の名盤 ワルターのブラームス4番

2014-07-22 11:07:00 | レコード、オーディオ


今朝は、ワルター&コロムビア響によるブラームスの交響曲第4番を聴いている。たったいま、封を切ったばかりの米CLASSIC RECORDS社による45回転復刻盤(ジングル・サイド 4LP)にて。

この名盤は、学生時代より国内盤アナログ・レコード ~ CD数種 ~ 米コロムビア・オリジナル・アナログ盤 ~ SACDと聴き継いできたが、これがひとつの頂点のような気がする。

LPレコードの片面にひとつの楽章、裏面なしのピュアビニール重量盤という贅沢な仕様によって、ワルターやオーケストラの息遣い、録音会場の空気感などが、まるで、たった今、録音されたのではないか? というような新鮮さで迫ってくる。
そう、いま、目の前のスタジオの扉を開けたら、ワルターが指揮者椅子に腰掛けて微笑んでいるのではないか? と思えるほど。

この録音をはじめてCDで聴いた頃、音の薄さから、「ああ、コロムビア響とは、所詮、編成の小さな寄せ集めなんだなぁ」という印象を与えられたものだが、それが大きな誤解であったことを、改めて思い知らされた。

モントゥーを録ったカルショーも凄いが、ワルターを録ったマックルーアも凄い!

ジャケット裏をみると、この復刻盤のリリースは1995年とある。ということは、私がアナログ蒐集を始めたときには既に存在していたことになる。いやぁ、知らなかった、こんな世界があったなんて。









追悼 ロリン・マゼール

2014-07-14 15:50:50 | レコード、オーディオ


そうか、マゼールも死ぬのか・・。

マゼール逝去の報を知ったときに、最初に心に浮かんだのは、この言葉であった。

昨年、サントリーホールで聴いたミュンヘン・フィルとのブルックナーの第3番とアンコールで演奏された「マイスタージンガー」前奏曲の完璧さ、その度肝を抜く音楽的仕掛けには、心底驚愕し、感動したものだ。

それまで、レコードやCDから受けていた、頭はキレるけど温かみが足りない、といった表面的な印象を粉々に打ち砕く名演、快演だったのである。

齢80を越して、枯れた味わいといった要素は皆無。その精力絶倫の指揮振りは、鉄人のそれであり、マゼール不死身を印象づけた。しかし、そこに、大いなる包容力と優しさのあったことは見逃せない。専制君主としての振る舞いはなく、楽員を信頼する謙虚な姿勢に貫かれていた。
あの素晴らしい演奏会から、わずか1年と3か月余りで、亡くなってしまうなんて、とても想像つかなかった。

今年のボストン響とのマーラー5番、来日公演。代役のデュトワはとても立派だったけれど、やっぱりマゼールで聴きたかったな。

というわけで、いま、マゼールとウィーン・フィルによるマーラー3番の第1楽章を聴くことを、わが追悼の行事とした。

心よりご冥福を祈りながら。